1巡指名のリスク

 さてGAORAのドラフト中継でも言われていた「1巡指名としてハズレがないのはOT」という説は正しいのか。気になったのでちょっと調べてみた。Approximate Valueが算出されている1960年から2010年までのドラフト対象について、最初の5年間のAVをポジション別に出してみた。左からポジション、指名された人数、平均値、中央値、そして標準偏差となる。

QB  110 28.6 27.0 19.8
RB  210 29.1 26.5 18.7
WR  167 28.9 28.0 16.7
TE  67 20.9 22.0 11.5
T  156 29.9 31.0 13.3
G  107 28.6 27.0 12.5
C   26 26.2 26.5 12.8
DT  150 27.9 26.0 15.5
DE  217 26.6 25.0 13.1
ILB  73 32.9 29.0 15.3
OLB 123 31.5 29.0 13.2
CB  137 28.5 28.0 12.9
S   88 27.9 27.5 11.9

 見て明白に分かることが1つ。1巡でTEを指名するのはまずい。平均値でも中央値でも、ここまで他のポジションと比べて明白に低いのはTEくらいだ。もしかしたらTEはAVというシステムだと低めに数字が出やすいポジションかもしれないので断言まではできないが、平均値に比べて標準偏差が高めなことまで踏まえるなら、安全な指名とは言いがたいだろう。
 QBは平均値でも中央値でもちょうど真ん中辺りであり、それ自体が悪い指名だとは思えない。QBの最大の問題は標準偏差の大きさだ。平均値に対する標準偏差の比率は7割近くでRBを上回り最も高い。つまり当たりとハズレの差がそれだけでかいポジションである。それでも当たりを引くメリットを考えれば指名権を投資する価値はあると個人的には思うが、リスクを避ける指名をしたいのならそりゃ避けて通るべきだろう。
 OTがリスクの少ない指名であることも事実だ。平均値に対する標準偏差の比率は44.4%。平均値そのものは高い方から数えて3番目であり、中央値で見れば唯一の30超を記録してトップだ。期待値自体が高いうえにブレが少ないのだから、リスクを避ける指名をしたいのならタックルに行く、という判断は間違いではない。だが指名順位の高い(つまり弱い)チームがリスクを避けるとしたら、それは間違いではないだろうか。もともとドラフト1巡上位は普通にやっていればコストパフォーマンスが悪い。ならばリスクを取ってでも高いAVが期待できる選手を狙いに行く方がいいだろう。元から成績が悪いのだから、失敗しても状況はあまり変わらないのだし。
 さらに、OTと負けず劣らず安全な指名ポジションもある。1つはOLB。平均値と中央値で全体2位の高いAVを記録しているうえ、標準偏差は最も低い。もう1つはILBで、こちらは平均値が1位、中央値が2位タイときわめて高い。標準偏差は真ん中あたりとそんなに安定しているわけではないが、指名数自体の少なさを考えるなら悪い数字ではない。TEが最も指名してはいけないポジションなら、LBは逆に1巡で指名すべきポジションとなる。

 面白いのは、全体としてディフェンスの方が平均値、中央値が高く、逆に標準偏差が低いことだ。平均値はディフェンス29.2に対しオフェンス27.4、中央値はディフェンス27.4、オフェンス26.9、そして標準偏差はディフェンス平均46.9%、オフェンス平均54.7%。つまり1巡ではディフェンス選手を指名した方が報われる可能性が高い。
 一方、こちら"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/54451988.html"で調べたように勝利との相関係数を見ると全体としてオフェンスの方がディフェンスよりも高い。ゲームにおいてはオフェンスの方が大切だが、ドラフト1巡においてはディフェンスの方が選びやすいわけで、これもまたなかなかに興味深い結果だ。1巡指名権をどう使うか、それがどうチームの勝利に貢献するか。GMとしては頭の悩ませどころだろう。

 なお今年のドラフトにおけるトレード"http://www.footballperspective.com/analyzing-the-trades-from-rounds-1-3-of-the-2015-nfl-draft/"を見る限り、大半のトレードは基本的にJJのValue Chartに従って実行されている。今でもあのチャートは重要なメルクマールになっているわけだ。この状態はトレードダウン好きなチームにとっては極めて望ましい。New Englandが強豪であり続けるわけだ。Copycat Leagueと呼ばれる割に、GMには保守的な人が多いようにも見える。
 そうではなく、もしかしたらCopycatになったかもしれないと思えるチームもある。代表例がWashington。2002年以降、彼らは1年平均の指名数が7.1人とリーグ平均(8.0人)を大きく下回っていたが、今年はトレードダウンを通じて2桁の10人を指名。10年までは6.2人ともっと低かったが、11年以降は数での勝負に切り替えていっている。12年には例のGriffinドラフトでかなり指名権を消耗したように見えるが、それからまたここまで盛り返したのだから大したものだ。
 同じく指名権を増やしているのがClevelandで、今年は12人と全チーム中で最多となった。1年平均の指名数が7.5人だったから、今年は頑張ったといえるだろう。他にもMinnesota(平均7.8人)が10人を指名するなど、数の勝負に向かっていると見られるチームが複数ある。中にはJets(平均6.8人)のように過去の指名が少ないのに6人しか取っていないところもあるが、ここは昨年12人と大量指名しているのでトータルとして見れば悪いわけではない。もちろん、New England(平均8.7人)は相変わらず11人の大量指名だ。
 ドラフトにおける指名数の大切さは私が言うまでもなくあちこちで指摘されている。当然プロであるNFL各チームのGMたちが、その話を知らないわけがないだろう。指名数が少なくても過去に上手く指名してきたチーム(例えばNew Orleans)などはともかく、失敗したと感じているチームの中では新しい方法を試みる流れが出ているのかもしれない。
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