QBASE

 Football OutsidersによるドラフトQBの将来予想、今シーズンから名称がQBASEに変わったようだ。こちら"http://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2015/introducing-qbase"によるとQBASEは大学時代の成績に、チームメイトの質や対戦相手の厳しさなどを加えて計算するようになったそうで、出てくる結果は3~5年目の予想DYARと、「bustになる確率」から「エリートになる確率」までの数値だ。では早速ドラフトで指名されたQBたちについて見てみよう。

 まずはTampa Bayが全体1位で指名したJameis Winston"http://www.sports-reference.com/cfb/players/jameis-winston-1.html"について。QBASEは予想DYARが378、bustの確率61.3%、「一流」または「エリート」の率12.8%と手厳しい予想を出している。1996年以降、全体1位で指名された13人のQBのうち、WinstonよりQBASEが低かったのはDavid CarrとMichael Vickの2人のみと、歴史的に見てもよろしくない数値だ。
 QBASEでWinstonが失敗すると評価される理由は、Tim Couch及びCarrと同様、大学でたった2シーズンしか先発せず、最後の年に偉大とまでは言えない成績を残し、Adjusted Yards per Attemptsがパス成功率ほどいい数字ではなかったからだそうだ。これに加えてWinstonにはオフフィールドでのトラブルが色々と伝えられている(例"http://www.afnjapan.com/nfl/44835/")。なかなか大変そうだ。
 逆に評価が高いのが、Tennesseeが2番手で指名したMarcus Mariota"http://www.sports-reference.com/cfb/players/marcus-mariota-1.html"。1995年以降、彼よりQBASEの良かったQBはRivers、Palmer、McNabb、Wilson、Griffin及びPeytonだそうで、怪我で苦労しているGriffinを除けば確かに3~5年目には充分に活躍を見せている選手たちだ。特に大学最後の年のAY/Aは高いようで、またパス成功率についても評価されている。予想DYARは1275、bust率22.8%、一流以上の率は36.7%だ。
 ハイズマン受賞者のワンツーフィニッシュは今年が初めてだが、QBの全体1位2位指名はAFLとNFLが一緒にドラフトをするようになって以来、6例目だ"http://www.footballperspective.com/quarterback-trivia-going-1-2-in-the-nfl-draft/"。そして過去においては1人が成功する一方、もう1人は失敗するのが通例という。QBASEの予想が当たれば、今年も同じ結果が待っていることになる。

 3巡では2人のQBが指名された。New OrleansがGarrett Grayson"http://www.sports-reference.com/cfb/players/garrett-grayson-1.html"を選んだのは、既に30代半ばとなっているBrees"http://www.pro-football-reference.com/players/B/BreeDr00.htm"の後継者候補であろう。ただしQBASEによれば予想DYARは-427、bust率82.9%と、控えQB以下の評価にとどまっている。一流以上になる確率は4.9%しかなく、果たしてこれで大丈夫なのかは不明だ。
 もう1人はSt. Louisが指名したSean Mannion"http://www.sports-reference.com/cfb/players/sean-mannion-1.html"。こちらはFoles"http://www.pro-football-reference.com/players/F/FoleNi00.htm"と先発争いをさせるつもりだろうか。ただしこちらもQBASEは予想DYARが-103、bust率73.0%とやはり控え以下の評価でしかない。一流以上も8.7%と低く、一応20AVの実績を重ねているFolesと比べると正直言って格落ちの印象だ。
 最終日にはまずJetsが4巡でBryce Petty"http://www.sports-reference.com/cfb/players/bryce-petty-1.html"を指名したが、これまたQBASEの評価は低い。予想DYARが-292、bust率80.2%でGraysonの次くらいに酷い数字。一流以上の率は6.1%にとどまっており、Geno Smithの対抗馬としても力不足にしか見えない数字だ。Jetsは素直にFitzpatrickを先発させるのが一番妥当だと思う。
 最後にQBASEが分析しているもう1人のQB、Brett Hundley"http://www.sports-reference.com/cfb/players/brett-hundley-1.html"は5巡でGreen Bayが手に入れた。実はMariota以外で最も評価が高いのがこのHundleyである。予想DYARは1080、bust率は30.3%に対して一流以上の率は30.5と、微妙ながら後者の方が上。彼はNCAAで3番目に厳しいスケジュールを乗り切ったうえで評価に値する成績を残したそうであり、またチームメイトの能力はMariotaやWinstonより低かった。一方で彼は(大学のスタッツには出てこない)サックが極めて多いようで、ここは懸念材料だそうだ。
 だが残念ながらHundleyがドラフトされたのは、よりによって現時点で現役最強のQB"http://www.pro-football-reference.com/players/R/RodgAa00.htm"がいるチーム。年齢もまだ30代前半であり、Hundleyの新人契約期間中に先発の座を奪い取ることはほぼ不可能だろう。せいぜい怪我した時のバックアップにしかならない。もしQBASEの予想が正しいのだとしたら実にもったいない話だ。せめてどこかのタイミングでQB不足のチームにトレードでもされればと思う。
 今年のドラフトで指名されたQBはもう1人いる。7巡でDenverが指名したTrevor Siemian"http://www.sports-reference.com/cfb/players/trevor-siemian-1.html"だ。残念ながら彼についてはQBASEのデータがない。ただ7巡指名なのでチームからはせいぜいスカウティングチームのQB役くらいしか期待されていないと見るべきだろう。Osweiler"http://www.pro-football-reference.com/players/O/OsweBr00.htm"の新人契約が今年で終わることを考えるなら、Denverはそろそろ次の「Peyton後継者」も探すべきなのだが、それは来年でいいということかもしれない。

 もちろんQBASEの予想が絶対的中するわけではない。過去の例でもQBASEは高かったが実績は低かったJohn BeckやCade McNown、Danny Wuerffel、Matt Leinartといった選手がいたし、逆にQBASEよりいい成績を残したMatt RyanやBrian Griese、そして控え以下の実績しかないがQBASEの予想自体は大きく上回ったJosh McCownのようなQBもいた。結局のところドラフトの当たり外れは後になってみないと分からないのだ。
 それに、どうやらQBASEの数字は指名される順位によっても変わってくるようだ("http://www.footballoutsiders.com/audibles/2015/audibles-2015-nfl-draft-day-two"参照)。Graysonの予想はPettyよりは上になるし、Hundleyの数字はもっと低くなるのだとか。ドラフト前の予想とドラフト後の予想が変化するとなると、事前予想だけでは不十分ということにもなる。
 結局QBASEなどから分かるのは、あくまで「確率的な予想」でしかないのだろう。個々の選手が期待に応えてくれるかどうかはギャンブルだ。いみじくもPatriotsの担当者が述べているように「この世にドラフトのエキスパートはいない」"http://blog.masslive.com/patriots/2015/04/nick_caserio_talks_nfl_draft_m.html"。ドラフトはあくまでinexact scienceであり、大雑把な予想以上のことはできない。その事実を忘れないことが、ドラフトで成功するための第一歩なんだろう。
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