ドラフトの質と量

 ドラフトではトレードアップしてピンポイントで選手を狙うより、トレードダウンして「くじを引く」回数を増やした方がいい。そういう見解は果たして事実なのだろうか。32チームになった2002年以降のドラフトを対象に調べてみた。
 ある年にチームがドラフトした選手が、5年目までにそのチームでどの程度のApproximate Value"http://www.sports-reference.com/blog/approximate-value/"を積み上げたのかを調べる。ドラフト全選手の合計AVが、言わばその年のドラフトの成功度になるわけだ。5年目で切ったのは、それ以降は新しい契約対象になる可能性が高いため。ちなみに5年分の成績が必要になるので、分析対象は2010年ドラフト選手までである。
 この9年間のドラフト成功度を各チームごとに並べると以下のようになる。左からチーム名、成功度合計、指名したドラフト選手数、そして2002-14シーズンの勝率だ。

GB  973 78 .627
NE  859 81 .764
Ten 859 88 .486
Jax 856 73 .409
SD  846 68 .582
Hou 824 77 .423
SF  820 77 .483
Ind 818 76 .692
Pit 812 72 .637
Phi 804 82 .594
Atl 801 71 .531
Bal 787 75 .587
Car 776 75 .507
Chi 772 78 .505
Dal 768 72 .548
Cin 767 78 .495
NO  766 60 .553
NYG 760 68 .529
Ari 756 63 .438
Sea 753 72 .563
Buf 734 73 .413
Min 733 62 .478
NYJ 707 56 .471
Den 702 73 .596
KC  697 70 .462
Det 686 72 .332
Mia 643 68 .447
Cle 633 67 .346
Oak 632 73 .322
StL 592 81 .368
TB  591 76 .418
Was 491 56 .394

 成功度と勝率の相関係数は+0.633とそこそこの数値。ドラフトでの成功がチームの成功に一定の貢献をしていることは確かだろう。ではその際にドラフト数を増やすという手法は適切なのだろうか。
 成功度とドラフト選手数の相関係数は+0.425だ。ドラフトする選手数が多い方が確かに成功度は高くなる。しかし、ドラフト指名選手1人当たりのAVと成功度との相関係数はより高い+0.671。この数字だけ見ると、下手な鉄砲戦術よりも狙いを定めて指名するやり方の方がいいように思える。問題は本当に「狙いを定めた」結果としてAVが高くなっているのかどうかだ。
 各チームの年ごとの成功度についてn年とn+1年の相関係数を調べると、-0.004という結果になる。要するにほぼ無相関だ。こちらの記事"http://www.theatlantic.com/entertainment/archive/2012/04/the-nfl-draft-is-still-a-crapshoot/256464/"にもあるようにドラフトは結局crapshootに過ぎないと言われるのは、こういうデータが存在するからだろう。同様の主張はこちら"http://www.footballperspective.com/are-certain-teams-better-at-drafting-than-others/"にもあるし、こちら"http://grantland.com/the-triangle/bill-belichick-nfl-draft-new-england-patriots/"でも同じ指摘をしている。
 実際、1人当たりAVが最も高いNew Orleansは、ドラフト数自体が少ないためこの期間に積み上げた成功度はリーグ全体の中位にとどまっている。一方、New Englandの1人当たりAVはリーグ平均(10.4)とほぼ同じ10.6だが、ドラフト選手数が多かったおかげでトータルの成功度はリーグ2位となっている。指名選手数が70人未満の9チームのうち8チームはリーグ下半分に位置しており、逆に77人以上の9チームのうち8チームはリーグ上半分だ。「質より量」がモノを言っているのは確かだろう。

 後はトリヴィアとして、この期間中に「最も成功したドラフト」と「最も失敗したドラフト」を選出しておこう。前者は2005年のDallas。DeMarcus Wareが5年間で63AVを積み上げたほか、Marion Barber(39)、Jay Ratliff(37)、Marcus Spears(31)、Chris Canty(23)が充分な活躍を見せ、他にもKevin BurnettとRob Petittiがそれぞれ7のAVをプラスした。彼らが活躍した05-09シーズンのDallasの勝率は0.638でリーグ4位。05年ドラフト選手たちも屋台骨を支えていたのだろう。
 一方、最低のドラフトを記録したのもこれまたDallas。2009年に彼らが指名した12選手のうち、最もマシなVictor Butlerが積み上げたAVはたったの6。あとはDavid Buehler、Stephen McGee、John Phillipsがそれぞれ2、Michael Hamlinが1のAVを記録しただけだ。このうちPhillipsは驚いたことに20試合も先発している。他に投入できるTEがいなかったのだろうか。
 年ごとの成功度の標準偏差を見ても最も大きいのはDallasの53.9で、次がAtlantaの52.8だ。彼らが当たり外れの大きなドラフトをしてきたことが分かる。逆に安定度の高いのはOaklandの7.7で、その次がWashingtonの16.2。問題はどちらも成功度は下から数えた方が早いことだ。もしかしたら他よりドラフトの上手いチームはなくても、他よりコンスタントにドラフトが下手なチームは存在するのかもしれない。
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