ドラフトの呪い

 Advanced Football Analyticsに面白い記事"http://www.advancedfootballanalytics.com/index.php/home/research/draft/244-what-s-the-real-value-of-a-draft-pick"が載っていた。以前、こちら"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55243777.html"で紹介した「昔は2巡目ドラフト選手が投資効率がよかったけど新人との契約ルール変更で状況が変わった」説"http://skepticalsports.com/dont-play-baseball-with-bill-belichick/"について、それが本当がどうか調べたものだ。
 上のサイトでは「理論的にはドラフト上位ほど価値が高まる」と指摘している。もちろん理論と現実は別であることは指摘しているし、実際にはこれほど平坦にはなっていないだろうとも書いている。ただこの記事が書かれた2012年5月時点は、新しい労使協定が採用された翌年だったため、まだ選手たちのパフォーマンスを推定できる状況にはなかった。従って理論に基づく可能性について論じるにとどまっていたようだ。
 今回のAdvanced Football Analyticsの記事は、新協定から4年が経過したところで改めてデータを集め直したところに特徴がある。そしてその結果はかなり意外であった。元の分析を行ったMassey-Thalerの論文"http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=697121"に比べて選手の価値がフラットになることはなく、相も変わらず2巡が高いという結果になったのだ。それもグラフの角度はむしろ急峻になっており、ドラフト上位がキャップヒットで見て余剰価値100万ドル以下(順位によっては50万ドル以下)にとどまっているのに対し、2巡選手は200万ドル以上に達している。
 どうしてこうなったのか。筆者はMassey-Thalerの分析が「Stafford-Bradford years」を含んでいないことが理由ではないかと推測している。確かに昔からドラフト上位選手の契約額は大きかったが、特にMatthew StaffordやSam Bradfordがドラフトされた2009-10年はトップ契約額が一段と爆発した。たとえばStaffordの契約"http://www.spotrac.com/nfl/detroit-lions/matthew-stafford/"は6年間で7200万ドル、Bradford"http://www.spotrac.com/nfl/philadelphia-eagles/sam-bradford/"は同じく6年間で7800万ドル強だ。
 これは新しい労使協定以後に契約したCam Newton"http://www.spotrac.com/nfl/carolina-panthers/cam-newton/"の4年2200万ドル強、Andrew Luck"http://www.spotrac.com/nfl/indianapolis-colts/andrew-luck/"の4年2210万ドルはもとより、Stafford以前の契約であるJaMarcus Russell"http://www.spotrac.com/nfl/oakland-raiders/jamarcus-russell/"の6年6100万ドルより2割前後も多い。この時期にMassey-Thalerの曲線は、特にドラフト上位で一段と激しく落ち込んだのではないか、という訳だ。
 新しい協定により、極端にコストパフォーマンス下がっていたドラフト上位の契約に修正がほどこされ、結果としてStafford-Bradford yearsよりも前の水準、つまりMassey-Thalerの分析と似たような曲線に戻った。以上が今回の分析に関する説明だ。もちろんこれが本当に正しいのかを知るうえでは、もう少し長く期間を取り、新協定後のドラフト選手たちのパフォーマンスをより正確に想定する必要があるだろう。だが、未だに2巡の方が有利な状況が続いているとしたら、Massey-Thalerの指摘する「敗者の呪い」は解消されていないことになる。
 そもそもドラフト制度は勢力均衡化のために導入された。前年成績の悪い順番に指名できるのもそのためだ。しかしサラリーキャップが導入されて以降、ドラフトを通じた勢力均衡への取り組みという効果はかなり失われているのが実情だろう。いやむしろ敗者が高いコストで新人を指名し、サンクコストに溺れてさらに敗北を積み重ねる流れが強まっているのだとしたら、ドラフトは逆に「勢力不均衡化」のための仕組みとなり果てているとすら考えられる。
 いっそドラフトをなくし、新人は全員FAにしてしまう方が、よほど勢力均衡には役立つのではないだろうか。少なくとも代理人がドラフト上位指名だからという理由でふっかけることは難しくなる。ベテランFAと同様に自由市場化してマーケットで値段をつけさせる方が、結果的には勢力均衡に資するような気もする。
 でも興行として考えるなら、ドラフトをなくすのは間違いなく悪手だ。ドラフトがあるからこそオフシーズンが盛り上がるのだし、こんな映画"http://ameblo.jp/pixerotto-movie/entry-11983736599.html"が作られたり、遠い日本ですらこんなイベント"http://liondo.blog20.fc2.com/blog-entry-897.html"が行われたりする。NFLとしてはドラフト自体を残す方が合理的なはずである。あちらを立てればこちらが立たず。毎年のように書いている気もするが、ドラフトの位置づけはなかなか難しい。
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