勝利への(複数の)道

 NFLにおいて勝利に貢献するファクターを分析したことがある"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/54451988.html"。重要度ではパスが最も高く、後はターンオーバー、ペナルティなどが続き、最も低いのがランになるという結論だ。つまりそうした分野で強いチームほど勝率が高くなる、という理屈が成り立つ。
 もちろん理屈と現実は必ずしも一致しない。例えば現在の32チーム体制になった2002シーズンから直近までの期間(プレイオフ含む)についてみると勝率が最も高いのはもちろんNew Englandなのだが、彼らのY/A differencialは+0.34とリーグ全体で9位に過ぎない。NY/A diffで見るともう少し良くなり、+0.56の6位になるが、それでも勝率でぶっちぎり1位のチームとして見るとかなり低い。
 では一体、何が彼らの勝率トップに寄与したのか。インターセプトだ。彼らの1試合あたりのインターセプト数の差を見ると+0.48となり、2位のBaltimore(+0.35)を大きく引き離しての1位となる。わけてもNew Englandオフェンスのインターセプト数は1試合平均0.74と平均より2.3標準偏差も少ない。次に少ないKansas Cityが1.2標準偏差にとどまっているところを見ても、New Englandの、というかBradyの被インターセプトがいかに少ないかが良く分かる。逆にインターセプトを奪う方でもBaltimore、Green Bayに次ぐ3位となっており、この分野での強みがNew Englandの勝率に貢献していることは明確だろう。
 ちなみにファンブルの差でいくとNew EnglandはIndianapolisに次ぐ2位。この両分野で上位にいるのは彼らくらいなので、ターンオーバー全体の差になるとNew Englandは+0.68となり2位のGreen Bay(+0.28)を大きく引き離したトップだ。以前、New Englandのdefensive schemesを紹介した際"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/55224974.html"に、彼らのphilosophyが「曲がるが折れない」であることを指摘した。ターンオーバーがらみの数値はその取り組みが上手く行っていることを示す一つの事例だろう。New Englandの異様に高い勝率を支えてきた最大の要因がターンオーバー争奪戦にあったことは確かだ。
 ちなみにペナルティの差についてもNew Englandは1試合当たり+0.56の3位と高い位置にあるが、最も高いAtlanta(+1.06)に比べれば大したことはない。一方Yards per Carryの差は-0.11の21位と下位にとどまっており、このチームがオフェンスでもディフェンスにおいてもランにあまり力を入れていないことも分かる。

 New Englandのやり方が効果を挙げているのは確かだが、それ以外の方法もある。分かりやすいのがPittsburghで、こちらが最も優れているのはパス効率である。Y/A diffは+1.17と2位のGreen Bay(+0.66)の倍近い数字だし、NY/A diffでもやはりトップにいる。特にディフェンスのNY/Aはリーグでも屈指。そもそも曲がらないディフェンスを基礎において勝利を掴んできた格好だ。
 Green Bayはターンオーバーレシオでリーグ2位、NY/A diffでリーグ3位と、両者のバランスを取りながら上位に君臨してきた。IndianapolisはNY/A diffとペナルティの差でいずれも2位に顔を出しており、こちらもバランス型で勝率を高めてきたことが分かる。
 一方、Yards per Carryのようなラン関連の成績がいいところは必ずしも勝率が高くない。PhiladelphiaやBaltimoreは6割近い勝率を上げているが、MinnesotaやSan Franciscoは5割未満だ。Indianapolisなどはリーグ最低のラン数字にもかかわらず3分の2以上のゲームに勝利している。やはり現代NFLにおいてランに資源を投資するのは無駄への近道、という結論になりそうだ。
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