ディフェンスのスキーム

 New EnglandのOffensive SchemeがErhardt-Perkinsと呼ばれていることは分かった。ではDefensive Schemeは? 実はこちらにもきちんと呼び名がある。即ちFairbanks-Bullough 3-4 Defense"http://patspropaganda.com/post/5677696779/new-england-patriots-fairbanks-bullough-3-4"だ。そのPhilosophyは"bend but do not break"、進まれても点を取られない点にあるという。
 実際、New Englandのディフェンスは「進まれる割に失点が少ない」点に特徴がある。2014シーズンのディフェンス成績で1点取るのに何ヤード進まれていたかを調べてみると、New Englandは17.6ヤードでリーグ全体でも5番目に数値が大きい。最も簡単に点を取られていたOakland(12.7ヤード)に比べると1点取るのに5ヤード近くも余計に進む必要があった格好だ。
 たまたま14シーズンの成績が良かったわけではない。リーグが32チーム制となった2002シーズンからの累計で見ても、New Englandは17.7ヤードでリーグトップの成績を残している。2番手のBaltimore(16.5ヤード)とは1.2ヤードの差がついているのだが、Baltimoreと1.2ヤード差をつけられているのはリーグ16位のTampa Bay。いかにNew Englandのこの成績が突出しているかがよく分かる。
 どのようにしてこの「曲がるが折れない」ディフェンスを成立させているのか。一つはもちろんターンオーバーだ。02-14シーズンのTakeawayはChicagoの410に次いで多い407を記録。さらにDownsで終わらせた数を見ると128となりこちらはリーグトップだ(Chicagoは93)。結果として、相手に許したヤードではリーグ20位にとどまっているにもかかわらず、失点合計はリーグ3位の少なさだ。1位のPittsburgh、2位のBaltimoreがヤードでも1、2位なのに比べるとNew Englandの失点の少なさが目立つ。
 そして対照的にオフェンスでは少ないヤードで点を取る能力が優れている。1点取るのに必要なヤードは13.2で、次に効率的なSan Diego(13.9ヤード)を引き離している。これもまたTurnoversが少ないことが理由であり、New Englandの260とうい数値はIndianapolis(293)からまたまたかけ離れたトップとなっている。特にインターセプト数は147で2位のKansas City(177)を引き離しており、Bradyの能力とターンオーバーを避けるプレイコールの上手さがよく分かる。
 Downsにも特徴がある。この期間、Downsでドライブが終わった回数は77回と(少ない方から数えて)リーグ8位タイだったのだが、そのドライブにおける平均得失点差を見ると他の31チームが全てリードされている局面でgo for itをしていたのに対し、New Englandは唯一リードしながらgo for itをしていたのである。リードしていれば無理せずパントをするチームが多いと思うが、New EnglandはDownsのリスクがあっても攻撃権を保持するメリットの方が大きいと判断していたことが分かる。ちなみにリード時のconversion率もリーグトップの69.8%だ。
 conversion率が高いのは、FDが取れる可能性の高いときにgo for itをしているからだ。FDに必要な残りヤードの平均を見るとNew Englandは3.40でリーグ最小。次に小さいのはIndianapolisの3.84であり、逆に多い方になるとBuffaloなどは5.67にも達する。New Englandは1~5ヤードの時はリーグ平均より高い割合でgo for itを試みるが、6ヤード以上の距離が残されている場合はリーグ平均より低いgo for itしかしていない。他のgo for it割合が高いチーム(Jacksonville、New Orleans、St. Louis)などが6ヤード以上でもリーグ平均並みかそれ以上の割合でやっているのに比べ、New Englandは無理をしていないのだ。
 「曲がるが折れない」ディフェンスと、「効率よく休みなく点を取る」オフェンス。この組み合わせが高い勝率につながっているのだろう。結果として02-14シーズンのターンオーバーレシオは+147となり、2位のGreen Bay(+66)の倍以上というとんでもない数字を叩き出している。ターンオーバーレシオと勝率との相関係数は+0.764。ターンオーバーを巡る争いに勝利すればゲームの勝利もついてくる様子が窺える。
 もちろん、基礎的な力の差があることは間違いない。ANY/A diffを見るとNew Englandは+1.54となっており、やはりGreen Bay(+1.49)を上回って全体1位。ANY/A diffと勝率との相関はターンオーバーレシオより圧倒的に高い+0.938もあり、母数が増えるほどANY/Aと勝率の相関が高まることも分かる。パス効率を高め、相手のパスを防ぐ。ターンオーバーを奪い、こちらはボールを奪われないようにする。そうした取り組みを最も効果的にやっているからこそ、02-14シーズンで0.764もの高い勝率を達成できたのだろう。
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