怪我人2014

 Football Outsidersが2014シーズンのAdjusted Games Lost"http://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2015/2014-adjusted-games-lost"を発表した。Giantsが2年連続で最も怪我に泣かされたチームになったほか、Cが5人も出場することになったSan Diegoが2番目に悪い結果に。逆に最も怪我の影響が少なかったのはDenver。他にもプレイオフチームでは3位にGreen Bay、4位にPittsburghが顔を出している。
 いつも怪我の多いNew Englandは、今回は12位と比較的ましな結果だった。ユニット別に見るとRBとDLでは怪我人が多かったが、OLとDBは少ない方。DBがこれだけ健康だったNew Englandを見るのは、果たしていつ以来だろうか。Superbowlの最後のインターセプトにおいて、Seattleは怪我人の多いDLを突くランではなく元気いっぱいのDBを狙った格好となったわけで、そうなるとあのプレイコールに疑問を抱く人がいるのも理解はできる。

 だが本当に怪我人が多い方が不利なのだろうか。普通に考えれば先発メンバーが怪我をして控えが出てくれば弱くなるのは当然なのだが、それは統計的に裏付けられた事実なのか。AGLのデータはネット上で2007シーズンまで遡ることが可能なので、そのデータと2007-14シーズンの勝率とを比べてみよう。
 まずAGLだが、各チームの8年間の平均値は以下のようになる。

TEN 39.8 
MIN 40.2 
NYJ 41.2 
SF 48.9 
PHI 49.1 
MIA 49.5 
KC 49.5 
NO 50.7 
BAL 51.2 
CHI 51.9 
HOU 52.7 
ATL 53.8 
DEN 54.8 
DAL 55.6 
ARI 56.8 
PIT 57.1 
TB 61.3 
CAR 62.2 
DET 62.4 
SD 62.5 
SEA 63.0 
OAK 63.1 
BUF 63.5 
GB 63.5 
CIN 64.4 
JAC 65.8 
WAS 67.7 
STL 68.7 
CLE 69.5 
NE 70.1 
NYG 77.3 
IND 88.0 

 New Englandの怪我人がいつも多いということはこれまでも指摘してきたが、それ以上に怪我に悩まされているのがまずはIndianapolisだ。何しろAGLが70を下回ったことは1度もなく(New Englandは3回ある)、直近2年間は100超だ。次に多いGiantsだが、2010シーズンまではむしろ怪我は少ない方だった。足元で急増した結果、平均値もこの数値になってしまったようだ。
 逆に怪我の少ないTennesseeは40未満が8年間のうち6回を占めている。Minnesotaも60台以上になったことはなく、Jetsも1回だけ70超になったことがあるがそれ以外は50未満にとどまるなど安定して怪我の少ないパフォーマンスを続けている。しかしこのトップ3チームの中で07-14シーズン累計で勝ち越しているところは1つもない。逆に怪我人の多いトップ3は全部勝ち越しだ。全体の相関係数は+0.042となっており、ほぼ無相関。怪我人とチームの成績とは、長い目で見ればあまり関係ないという結果になる。
 ただし、これは7年分を全部足し合わせた結果。足し合わせた結果として特徴が相殺されている可能性がある。実際、累計ではなくシーズンごとの成績とAGLの相関係数を出すと-0.246となり、弱い逆相関になる。怪我人が多いほどAGLは大きくなるので、怪我が少ないチームの方がシーズン勝率が高めに出る傾向が分かる。AGLをシーズンごとに標準化した後で相関係数を調べると-0.266とさらに強めの相関が出てくる。
 勝率に影響を及ぼすという意味では、パス成績(たとえばAdjusted Net Yards per Attempt Differencial)やターンオーバーレシオに比べれば大したことはないと言える。それでも怪我人が増えればそれだけ勝利の確率が下がることは否定できないようだ。New EnglandやIndianapolisのように怪我の山を乗り越えて高い勝率を得られるところもあるが、全体としては怪我人は少ないにこしたことはない。
 では怪我人ができるだけ出ないようにすることは可能なのか。おそらく可能だ。n年とn+1年の標準化AGLとの相関係数を調べると+0.274となり、弱い相関だがプラスの数字が出ている。怪我の多いチームは翌年も怪我が多めで、少ないところは少なめになる。もちろん弱い相関でしかなく、偶然の要素の方が強いのは否定できないが、それでも怪我を減らす努力は可能だろう。
 問題はNew EnglandやGiants、Indianapolisのように怪我が多い一方で強いチームが、実は怪我とのトレードオフで強さを手に入れている可能性があるかどうかだ。怪我が増えるようなプレイ選択や戦術採用によって勝率を高めようとしているのだとしたら、彼らは覚悟のうえで怪我人量産に目を瞑っていることになる。果たしてそういった「悪魔の選択」に手を染めているチームはあるのだろうか。
 Indianapolisはこの間にコーチングスタッフが大きく入れ替わっており、戦術が変化していると見られる。Giantsはコーチは変わっていないが怪我人の多い時期と少ない時期の落差が大きい。いずれもAGLの高さは単なる偶然の結果と見た方が辻褄が合う。問題はNew Englandで、コーチが変わっていないため同じ戦術が使われている可能性が高い。ただこちらも8年のうち3年はリーグ平均より低いAGLを記録しており、常に怪我人が続出している状態とまでは言えない。単に運が悪いか努力が足りない可能性の方が高いだろう。
 むしろ個別チームではなくリーグ全体でAGLの平均値が上昇傾向にある方が問題かもしれない。もちろん、各ポジションで複数選手をローテーションする戦術が広まり、先発扱いされる選手数が増えているといった背景もあるため、AGLの増加がすなわち怪我人の増加と言い切れるかどうかは不明だ。それでも07シーズンに平均45.0だったAGLが14シーズンに74.3まで伸びているのはかなりのもの。NFLが様々な怪我人対策を打っていながらこうなっているのだから、もしかしたらまだ対策は甘いのかもしれない。
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