Air Yards と勝敗

 しばらく前の話だが、Football Perspectiveにこんな記事"http://www.footballperspective.com/guest-post-are-interceptions-overrated/"が載っていた。インターセプトのリスクを冒してもアグレッシブなパスを投げるQBの方が勝率は高い、という主張だ。Int%+が110以上だがNY/A+が90以下のQBを慎重なGame Manager、NY/A+が110以上、Int%+が90以下のQBをアグレッシブなGunslingerとして調べたところ、前者の成績が339-446-4だったのに対し、後者は363-229-2となったという主張だ。
 だが、コメント欄にもあるようにこの比較には疑問がある。まずインターセプト率とNY/Aとを並べるのが本当に正しいかどうかが問題だ。例えばNY/Aが同じ6ヤードのQBが1人いるとしても、1人は成功率50%、Y/Cが12ヤード、サック0であり、他方は成功率75%、Y/C8ヤード、サック0だとしたら、この2人を同じカテゴリーに入れるのはいくら何でもおかしい。調べるのならコメント欄でも言われているようにY/C、あるいはAir Yardsを見るべきだろう。
 というわけで調べてみた。基本的にPro-Football-Reference"http://www.pro-football-reference.com/"のデータを使いつつ、Air Yardsについてはこちら"http://www.sportingcharts.com/nfl/stats/quarterback-air-yards/2014/"のデータを利用。後者のデータは1992シーズンまでしか遡れないため、同シーズンから2014シーズンまでの23シーズンで規定試投数に達した延べ735人のQBが対象だ。
 まずインターセプト率とNY/Aの相関係数を見ると-0.308と逆相関になった。つまりインターセプト率が上がるとNY/Aは低下する傾向が見られるわけで、この1点を見ても両者を並べた比較が拙いことが分かるだろう。インターセプトのリスクを冒すほどNY/Aが上がるのであれば、上の記事で指摘するGunslingerタイプのQBも成り立ちうるが、実態は逆で、インターセプトの多いQBは一般にNY/Aが低いのである。
 NY/Aに比べれば上で指摘しているY/Cの方がマシなのだが、それでも相関係数は-0.030と逆相関、というかほぼ無相関である。Air Yardsをパス成功数で割ったAirY/Cだと+0.105とようやく正の相関になるが、これも極めて相関度が低いことに間違いはない。正直、Gunslingerという切り口でQBのタイプ分けをすること自体に無理があるのではないだろうか。
 インターセプト率と正の相関が高いのはパスヤードに占めるAir Yardsの割合(+0.172)と、後はサック率(+0.144)くらいである。それにしても弱い相関とされる0.2未満なのだからどうしようもない。以前から指摘している通りインターセプト率は非常に偶然性の高い指標であり、他の指標との相関はどうしても低くなる。むしろ逆相関の高いものを探した方がマシなくらいだ。NY/Aも逆相関度が高いが、何と言ってもパス成功率(-0.373)だろう。

 以上、GunslingerとGame Managerなるカテゴリー自体が無意味という結論になった、で終わってもいいんだが、念のためQBの勝率との相関も調べておこう。インターセプトと勝率との相関は-0.312と、当然ながら逆相関だ。年のため年ごとに標準偏差を使って平均(あくまで規定試投数に達したQBの)との差を産出し、それをもとにした相関係数も調べてみたが、こちらの数値も-0.337とそれほど大きな違いはなかった。
 この係数の絶対値より大きな相関係数になる指標は、勝敗に与える影響がインターセプト率より大きいものだと考えられる。例えばANY/Aは+0.602(偏差値化すると+0.618)となり、そこそこの相関がある。弱い相関のインターセプト率より、ANY/Aの方が勝敗に大きい影響を及ぼすことが分かるだろう。NY/Aも+0.569(+0.576)となっており、やはり重要な指標である。Football Perspectiveの別の記事"http://www.footballperspective.com/correlating-passing-stats-with-wins/"ではインターセプト率と勝率との相関は-0.31、NY/Aは+0.50という数字を挙げている。
 タッチダウン率は+0.537(+0.535)となっており、QB単位で見ると勝敗との相関はかなり高い重要な指標だ。それに次ぐのがパス成功率の+0.432(+0.456)、その次がインターセプト率で、以下Y/Cの+0.302(+0.303)、サック率の-0.283(-0.283)となる。インターセプトのリスクを冒しながらY/Cを高めるという戦術が合理的でないことが分かる。
 ではAir Yardsはどうか。AirY/Cと勝率との相関は+0.174(+0.181)しかなく、サックよりさらに影響度は少ない。インターセプトを増やしてでもAir Yardsを伸ばそうとする取り組みは、むしろ敗北への近道と考えるべきだろう。GuslingerとGame Managerというカテゴリーを無理やり使うのなら、Game Managerこそが勝利をもたらすQBだということになる。インターセプトのもたらす悪影響は、決して過大評価などされてはいない。
 かろうじてGunslingerが評価される局面があるとしたら、上の記事で紹介されているシチュエーションの中でも唯一「プレイオフのアンダードッグ」という条件が当てはまる時だけだろう。分の悪い賭けであることは間違いないが、普通にやっても不利なら敢えて紛れを増やす方法はある。

 歴史的な流れを見てもそれは明白だ。インターセプト率は上下動を繰り返しながらも1992シーズンの3.65%から2014シーズンの2.44%へと、ほぼ3分の2まで減った。一方、インターセプト率との逆相関度が高いパス成功率は58.3%から63.2%へとほぼ5%も上昇。リーグ全体でこういう傾向が見られるってことは、それが勝利への近道だという認識が広まり共有されたからだろう。
 この間、AirY/Cは7.17から5.93へと急激に減少し、逆にYAC/Cが4.89から5.55へと上昇している。パスヤード全体に占めるAir Yardsの比率は92シーズンの59.5%から14シーズンには51.6%まで下がっており、ロングパスを投げるQBがいよいよ減少している様子も分かる。Gunslingerはリスクに見合うだけのリターンを得られない、それより短いパスをつなぐGame Managerの方が勝ちにつながりやすい。ヤードを稼ぐ仕事はQBの肩ではなくレシーバーの足にやらせるべき。そんな流れが窺えるデータだ。
 例えばPeyton。パスTDで当時のNFL記録を打ち立てた04シーズン、PeytonのAirY/Cは8.43に達していた。だがそれを上回るパスTD数をたたき出した13シーズン、彼のAirY/Cは6.21しかなかった。一方、YAC/Cは04シーズンの5.13から13シーズンには5.96へと大きく伸びている。パス成功率は67.0%から68.3%へ上がり、インターセプト率は逆に2.01%から1.52%へ下がるなど、彼の成績の変化がリーグ全体における変化と歩調を合わせていることが分かる。
 前にも書いた"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/53897314.html"通り、NFLはリーグ全体がウエストコーストオフェンス化しているのである。だから今更Gunslingerをもてはやそうとしても、それは時代遅れの郷愁に過ぎない。そもそもそれでは勝てないのだから。

 あと同じFootball PerspectiveでGreatest QB of all time"http://www.footballperspective.com/greatest-quarterback-of-all-time-wisdom-of-crowds-recap/"をまとめている。TopからPeyton、Montana、Brady、Unitasという並びだ。あくまで大勢の投票結果をまとめたものであり、客観的なデータに基づくものではないが、一般的な感覚を表現しているという点では面白いものだろう。Peytonがトップに来るのに異論はない。
 だが逆にデータのみで見ても面白いランキングができるかもしれない。という訳で歴代1120試投以上(5年分の規定数)を記録した選手をAY/A+(古い時代にはサックの記録がないため)の順番で並べてみたところ、Arnie Herber"http://www.profootballhof.com/hof/member.aspx?PLAYER_ID=95"がAY/A+148というトンデモな数字でTopに出てきた。古い時代は全体のパス成績が極めて低いため、比較的マシなQBの成績がインフレを起こしてしまうためだ。
 他にも2位にOtto Graham、6位にSid Luckman、7位タイにSammy Baughが顔を出すなどオールドQBたちのオンパレード。Montanaは7位タイ、Peytonは10位タイ、Bradyは14位タイで、Unitasに至っては24位タイとかなり落ちる。代わりにKen Anderson(18位タイ)やTrent Green(21位タイ)といった殿堂入りもしていないQBが入っている。中でも驚愕なのは18位タイのBob Berry"http://www.pro-football-reference.com/players/B/BerrBo00.htm"。正直全く知らないQBだが、結構いい成績を残していたのにはびっくりした。探せばいろいろあるもんだ。
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