Super Bowl XLIX

 昔話をしよう。1992年、NFLではBuffaloがAFCの覇権を握り、DallasとSan FranciscoがNFCのトップを争っていた。その一方で下を見れば2勝14敗とドアマット化したチームが2つ。当然ながら彼らは翌年のドラフトで1、2位指名権を獲得し、それぞれ真っ先にQBを取ってチームの再建に取り組み始めた。それから22年後、彼らはいずれもSuper Bowlに進出して優勝を巡って戦うことになった。New England PatriotsとSeattle Seahawksである。
 22年といえばかなりのものだ。Super Bowlでも何回かプレイしたNew Englandの新人OL、Cameron Fleming"http://www.patriots.com/team/roster/Cameron-Fleming/3d0269c6-bedc-46ec-8b6b-58a0e3768cf9"の生まれた年がまさに1992年だったわけで、1回り近い世代が経過している格好。もちろん、当時それぞれのチームでプレイしていた選手はもう残っていないが、再建を誓った両チームがここまでたどり着いたのは感慨深いものがある。
 単に再建しただけではない。両チームとも立派な強豪となった。New Englandは1993年からの勝率がリーグトップの.665に達し、その間に7回のSuper Bowlに出場し4回優勝した。それに比べるとSeattleの立ち上がりは遅れたが、1999年にHolmgrenがHCになってからは本格的に力を付け、それ以降の勝率は.551でリーグ上位、プレイオフ出場10回、Super Bowlにも3回出場し、最近は2年連続でNFCを制している。変われば変わるものだ。

 若手QBを先頭に連覇を目指すディフェンディングチャンピオンの前に、37歳ベテランQB率いる強豪が立ちはだかる。1997シーズンにも同じことがあった。Favreが率いるGreen Bayは前年に続いてのSuper Bowl出場。一方、Elway擁するDenverはワイルドカードから勝ち上がる格好でサンディエゴへとやってきた。試合は終盤までもつれたが、第4Qの残り2分前後という場面でDenverがリードを奪い、Green Bayの反撃をディフェンスが断ち切って勝利を得た。今回のSuper Bowlと似た展開だ。
 もちろん違いもある。1997シーズンのSuper Bowlには両カンファレンスの第1シード(San FranciscoとKansas City)は登場していない。逆にDVOA"http://www.footballoutsiders.com/stats/teameff"で見ると97シーズンが1位と2位の対決だったのに対し、今回は1位と4位だ。またElwayはそれまでSuper Bowlで勝ったことはなかったが、Bradyは既に3つのリングを手に入れている。むしろ今回の対戦は「00年代のダイナスティ」対「10年代のダイナスティ候補」という色彩が強かった。

 今のRussell Wilsonに若い頃のBradyを重ねる向きもある"http://bleacherreport.com/articles/2347166-super-bowl-2015-mike-taniers-preview-and-prediction-for-seahawks-patriots"。強力なディフェンスと安定したランというチーム全体の努力にも支えられながら若い頃から成功を収めているところは、確かにBradyと似ている。彼は2001シーズンのデビューから4年間に3回Super Bowlに出た。Wilsonはドラフトされた2012シーズンから3年連続でプレイオフに出てうち2回Super Bowlに届いている。
 今回敗れたとはいえ、現時点でWilson率いるSeattleが10年代のダイナスティに最も近いことは否定できないだろう。New EnglandやDenverはQBが高齢化しすぎている。次に近いのはGreen Bayだと思うが、過去のダイナスティは主力QBが20代のうちに少なくとも2回はSuper Bowlを制しているのに、Rodgersは2つ目のリングを取れないまま既に31歳。残り時間が限られているため条件はWilsonより厳しい。Flaccoも今年30歳になっており、やはり賞味期限がやばい。
 正直言って10年代はもう半分が過ぎているというのに、いまだに複数のリングを持っているチームが現れていない。リーグが合併した1970年代以降で見ると、半分が過ぎた時点でダイナスティが複数優勝していなかったのは70年代のみ。連覇するチームも00年代前半のNew England以降は登場しておらず、Super Bowlの歴史でも最も長期にわたって連覇のない時期が続いている。まだ焦る時間ではないが、果たして10年代のダイナスティはきちんと生まれるのだろうか。

 引退間近のWilsonとも言うべきBradyは、この試合も含めてまた多くの記録を打ち立てた。Super Bowlの累積パスTDは過去最多で、この試合のパス成功数もしかり。Montanaと並ぶ3回目のSuper Bowl MVPにも選ばれ、史上最高のQBか否かといった議論も起きている。プレイオフトータルで見てもBradyは勝利数21、パス試投1085、パス成功683、獲得ヤード7354、TD53など、様々な記録で史上最多を達成しているわけで、彼のキャリアが栄光に満ちたものであることは誰にも否定できないだろう。
 中でも興味深いのは、第4Qに勝利を決めるドライブを行ったGame Winning Drive数だ。今回のSuper Bowlでも第4Qに逆転しているので、その分を合わせるとBradyはプレイオフ29試合の内9試合でGWDを決めている。Wilsonも大したもので8試合のうち3試合がGWD。最後のインターセプトがTDになっていれば、半分の試合でGWDを達成した極めて勝負強いQBということになっていたのに。だが現時点でこのスタッツはBradyのものである。何しろBradyの次に多いElwayは、Bradyの3分の2、つまり6回しかプレイオフでGWDを行っていない。
 レギュラーシーズンを含めるとPeytonが52試合で最多(2位はMarinoの51回)なんだが、彼はプレイオフになると1回しかGWDを決めていない。彼がプレイした全試合(280)に占めるプレイオフの割合は9%弱(24試合)でしかないのだが、この1割にも満たない試合結果によって彼の評価が下がってしまうのはいかにも残念だ。正直、私自身は史上最高のQBはMontanaでもBradyでもなくPeyton Manningだと思っている。

 試合そのものについてはあちこちで言及されているのでここで述べる必要はあまりなさそうだ。例のプレイコールについてはこちら"http://www.advancedfootballanalytics.com/index.php/home/analysis/game-analysis/228-should-sea-have-run-on-2nd-down"で論じられているし、それ以外も含めたこんな記事"http://www.footballoutsiders.com/clutch-encounters/2015/clutch-encounters-super-bowl-xlix"もある。「撃ち方始め」"http://www.footballperspective.com/open-thread-post-your-super-bowl-xlix-reactions-here/"といって好きに議論をさせているところもある。
 ただこの試合のスタッツがかなり珍しいものだったことは指摘していいだろう。勝った側のANY/Aが6.08だったのに対し、負けた側は実に9.54。過去のSuper Bowlで勝った側のANY/Aが負けた側をこれだけ下回っていた事例は存在しない。またターンオーバーレシオがマイナスのチームが勝った事例も過去に5試合しか存在しない。効率のよいパスオフェンスを展開しながら負けた事例としては2012シーズンのSan Franciscoを凌駕するものだった。一方でオフェンスのプレイ回数が53回以下だったチームが勝った事例は過去9試合のうち2試合しかなく、この点で見ればSeattleの敗北は珍しくなかったことになる。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック