いよいよNFLのプレイオフが始まる。ということで予想をしてみよう。もちろん、各種のデータを使った予想を行う(それだけが取り得のblogなので)。まずはFootball Outsiders"http://www.footballoutsiders.com/"が算出しているDVOA及びweighted DVOAを使ったプレイオフ予想だ。
FOが算出しているデータは1997年までしか遡れないので、過去9年分のプレイオフの試合(計99試合)についてレギュラーシーズンのDVOA、w-DVOA(シーズン終盤の比重を高めたDVOA)通りに決まったものと、それとは逆の結果になったもの、及びシーズンのトップDVOAチームが何回スーパーボウルチャンプになれたかを調べてみた。その結果が以下の数字である。
DVOA 64-35 .646 5-4
w-DVOA 57-42 .576 1-8
見て分かる通り、w-DVOAはプレイオフの予想をする上ではあまり役に立たない指標である。シーズン終盤に勢いに乗ったチームがプレイオフを勝ち上がることが多いようなイメージがあるが、実際にはむしろシーズン全体の成績の方がプレイオフを占ううえでは役に立つ。最終的に優勝したチームについても、w-DVOAトップチームは9年で1回しかチャンプになっていないのに対し、DVOAトップのチームは5回チャンプになっているのだ。
ただ、そのDVOAも的中率を見ると.646で、あまりいい数字には見えない。単にレギュラーシーズン中の勝率や、総得点を総失点で割った数値などに基づいて予想しても同じくらいの成績は残せそうだ。という訳で勝率(W-L)と「総得点÷総失点」(point)について調べてみた。W-Lの同じチームが対戦した場合は引き分けとし、NFL方式(引き分けは0.5勝0.5敗)で的中率を出している。
W-L 56-25-18 .657 2-7
point 66-33 .667 6-3
驚いたことに単なる勝率の方が、複雑な計算によって算出されるDVOAよりもプレイオフ予想としては優れていることが判明してしまった。まあ最多勝率チームが優勝した回数は9年で2回だけなので、この点ではDVOAの方が優れている。しかし、最もいいプレイオフの予想方法は、総得点÷総失点の数値を活用することだ。全試合の3分の2はこれで的中するし、9年中6回は「総得点÷総失点」が最も高いチームがチャンプになっている。
これに基づいて今年のプレイオフを予想するとどうなるだろうか。今年の各データのトップチームは以下のようになる。
DVOA Baltimore
w-DVOA Baltimore
W-L San Diego
point Baltimore
結論。Baltimoreが優勝する。I guarant...
と言いたいところだがちょっと待った。実は以上の分析をした後になって、Football Outsidersにまた面白い分析"http://www.footballoutsiders.com/2007/01/04/ramblings/stat-analysis/4785/"が載ったのである。それについて検討してからでも結論を出すのは遅くない。
上サイトの著者はプレイオフの勝敗に影響を与える要因を分析するべく、以下のような「プレイオフ成功度」を計算している。(1)プレイオフのホームで勝つと2点(2)アウェイで勝つと3点(3)スーパーボウルの勝利は5点。1997年以降のプレイオフに出た全108チームにこうやって点数をつけ、それを各種のDVOAやw-DVOAと比較し、どれが最も相関性が高いかを調査しているのだ。
まず、ただのDVOAの方がw-DVOAより相関性が高いことが指摘されている。これは私が上で指摘したのと同じ結論だ。面白いのはその先。オフェンスとディフェンスで見ると、全体にディフェンスの方がプレイオフ成功度との相関性が高いのである。ディフェンスの相関性も数値自体は0.2前後だからあまり高いとはいえないが、それでも0.1を下回っているオフェンスよりは影響が大きいと見るべきだろう。
実はDVOA以外の指標でも同じことが言える。プレイオフ成功度とシーズン総得点及び総失点との相関性を調べると、総得点が0.140だったのに対し総失点は-0.264となった。総得点とプレイオフ成功度との間にある正の相関関係より、総失点との間にある負の相関関係の方が強いのだ。つまり、総失点の少ないチームほどプレイオフで成功しやすいことになる。2006シーズンで最も総失点が少なかったのはBaltimoreの201点(2番手はNew Englandの237点)。というわけでやはりBaltimoreが優勝することに...
焦るな焦るな。上のサイトはさらにディフェンスのうち何が最も相関性が高いかまで調べている。トップは1st downのパスディフェンスDVOA(-0.293)、以下1st downのディフェンスDVOA、ロードゲームでのディフェンスDVOA、ゲーム後半で1TD差内の時点でのディフェンスDVOA、9点以上リードしている時のディフェンスDVOA、レッドゾーンディフェンスDVOA、第10-17週のランディフェンスDVOAなどのデータが並んでいる。中でも著者が重要だとしているのが1st down及びレッドゾーンでの守備だ。レッドゾーンは分かるが、1st downというのは少し一般通念とは異なる(普通は3rd downの方が重視されるだろう)。おそらくドライブを続けるうえでは、1st downで効果的に前進することの方が、3rd downを更新するより重要なのだろう。
以上を踏まえ、著者がまずダメ出ししているのがオフェンス主体のIndy、New Orleans、Jets、Seattle、そしてDallasだ。逆に勿体つけて高い評価を与えているのがNew England。上にあげたディフェンスの7分野について、NEはリーグでそれぞれ1位、2位、7位、4位、8位、3位、19位と最後の一つ(10-17週のランDVOA)を除いていずれもリーグ上位に顔を出しているのだ。もしかしたらこれはNEが結構有利ということだろうか。
そうではない。著者の示した表をもう一度よく見てみよう。Baltimoreが8位、3位、2位、2位、1位、1位、3位とこちらは7つの指標全てでリーグ上位を占めている。トータルで見ればこのデータであってもNew EnglandよりBaltimoreの方が優れているのは間違いない。
要するにどう考えても今年のスーパーボウル最有力候補はBaltimoreということ。さすがにguaranteeまではできないが、Billickのチームが2000年代に入って二度目のロンバルディ・トロフィーを手に入れる可能性は高そうだ。
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