山岳事故

 昔、登山をやっていたので、山岳事故の話はやはり気になる。前にトムラウシの遭難について何度か触れた("http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/49056358.html"と"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/49081728.html"と"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/50684812.html")こともある。で、今回は御嶽山だ。正直、全く予想しない山岳事故であった。
 山登りをやる人間のうち、火山の危険性を考えて対処している者はほとんどいないと思う。もちろん阿蘇山や浅間山のように危険が分かっているところならそうでもないだろうが、いくら活火山とはいえ御嶽山について噴火の可能性も踏まえた準備をする登山者は、どれほどのベテランであってもほとんどいないだろう。ましてハイキング気分で登っている人にそれを求めるのは無理がある。
 通常のコースを通る場合、まず注意すべきなのは天候である。トムラウシもそうだったし、そのための装備を準備することが重要な対策にある。他にクライミングをする人なら滑落対策を、冬山に行くなら雪崩への対処を求められることもある。でも今回は違う。9月の3000メートル峰とはいえ、七合目までは車やロープウェイで登れる山だ。私だって、天候対策さえしておけばあとは大丈夫と思ってしまっただろう。火山に備えてヘルメットを用意する、なんてことは全く思いつかなかったはずだ。それに今回のケースでは用意してもダメだったかもしれない。
 登山計画書の提出が少なかったことについても、正直責められない。実際に歩く距離を考えれば基本的に日帰りの山でしかないし、しかも登山客は多い。わざわざ計画書を出して、万が一迷った際に助けてもらうための備えをする必要性もおそらく感じないだろう。一応、自身としては義務的に出すことがあるとしても、他の人が出さないことを批判する気にはならない。
 
 だがその山で山岳事故が起きてしまった。それも死者・行方不明者合わせて60人超という、とんでもない大規模な災害だ。平成"http://seesaawiki.jp/book-wiki/d/%BC%E7%A4%CA%BB%B3%B3%D9%C1%F8%C6%F1%BB%F6%B8%CE%B0%EC%CD%F7%A1%A1%A2%A8%CA%BF%C0%AE"や昭和"http://seesaawiki.jp/book-wiki/d/%bc%e7%a4%ca%bb%b3%b3%d9%c1%f8%c6%f1%bb%f6%b8%ce%b0%ec%cd%f7%a1%a1%a2%a8%be%bc%cf%c2"の山岳事故を見ても、これほど大規模な山岳遭難はない。おそらく国内では八甲田山での第五連隊遭難"http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/844357"に次ぐ大規模山岳事故だろう。
 そもそも火山災害としても戦後最大で、火山泥流によって144人が死亡・行方不明となった十勝岳の噴火以来の被害規模である"http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/volcano_disaster.htm"。ただ過去の火山災害は登山者ではなく近隣住民が主な被害者となっている。登山者だけでこれだけの被害が出た例というのも、またこれまでにない出来事だろう。
 避ける手立てはなかったのか。気象庁が出している週間火山概況の9月5~11日分"http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/weekly_report/2014/2014w37/2014w37.htm"には、御嶽山で起きている火山性地震の発生が増えたことが記されている。もしこれに気づいていれば、もしかしたら慎重を期して登山を諦めるか、あるいは登っても火口には近づかないように判断することができたかもしれない。つまり、登山を計画している山が火山である場合は、この概況にも目を通すようにしておくという方法があるわけだ。
 しかし、これだけで本当に登山をやめられるかどうかは疑問だ。そもそも火山性地震が起きたといってもその後で必ず噴火が起きるわけではない。起きたとしても、自分が山頂にいる限られた時間に合わせて噴火する可能性はかなり低い。そんなピンポイントのリスクを気にして山行をやめる登山者は、果たしてどれほどいるだろうか。今回だって、時間帯がずれていれば、あるいは日付が平日だったなら、犠牲者数はかなり違っていたはずだ。
 Nate Silverがシグナル&ノイズ"http://www.amazon.co.jp/dp/4822249808"で書いているように、地震に代表される発生頻度の低すぎる事象に関する予測は困難を極める。火山の噴火もそうだろう。100%に極めて近い確率で何も起こらないと思われる時に、それでもリスクを避けて山頂に登らずにいられるような人間なら、そもそも山に行こうとすら思うまい。今回の災害は理屈の上ではともかく、現実には回避不能としか思えないものだった。
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