前回も書いたが、Football Perspectiveは32試合でQBの能力を見定めるのが適当ではないかと指摘している"
http://www.footballperspective.com/how-long-does-it-take-great-quarterbacks-to-break-out/"。しかしながらNFLの中には適当なタイミングを過ぎても延々とQBにこだわるチームもある。特にドラフト上位のQBにその傾向が強い。前回紹介したTannehillもそうだが、他にもPonder(Minnesotaで3年間に35試合先発しANY/A+は85)、Bradford(St.Louisで4年間49試合の92)、Sanchez(Jetsで4年間62試合の87)など、最近似たような失敗をしているチームが複数ある。
ただし、いつもいつもチームの判断が遅くなるわけでもない。Gabbertは3年間27試合の先発で切られたし、Weedenに至っては2年20試合でチームから放出されている。単なるドラフト1巡だけでなく全体1位だと切りにくいとの見方もあろうが、OaklandがRussellを3年25試合で諦めている例もあり、あくまでケースバイケースのようだ。
ドラフト上位QBを見切る早さは時代によって変わるのだろうか。過去にドラフト1巡で指名されたQBのうち、32試合以上の先発を経験しないまま去っていったQBの割合を年代ごとに調べてみた。ドラフトしたチーム以外の先発も含まれているので厳密な数字ではないが、リーグ全体として先発失格と烙印を押されるまでにかかる時間を見る点では問題ないと思う。
NFLがドラフトを始めたのは1936年からなので、30年代はデータから除く。というかそもそも30年代に1巡でドラフトされたQBは3人しかいないので参考にならない。また2010年代にドラフトされたQBについてはまだ判断できるだけのキャリアを積んでいないので対象外。他の年代について、1巡ドラフトされたQB数と、そのうち32試合未満の先発しか経験しなかったQBの数、及びその比率をまとめると以下のようになる。
1940 15 9 60.0%
1950 20 12 60.0%
1960 21 7 33.3%
1970 17 5 29.4%
1980 25 9 36.0%
1990 21 9 42.9%
2000 26 4 15.4%
古い時期は試合数そのものが少なかったこともあり、あまり参考にはならないが、1巡QBでも見捨てる時期は早かったことがうかがえる。AFLがスタートした60年代以降では30~40%の範囲で推移しており、1巡指名でも3~4割程度のQBは使えないとの判断が下されていたようだ。問題は2000年代であり、この数字が急激に低下している。どうも00年代はQBを見捨てる判断が遅かったように思える。
00年代に32試合未満で切り捨てられた1巡QBはRamsey、Leinart、Quinn、Russellの4人。だが他にもHarringtonやCarr、Boller、Losman、Sanchezなど、もっと早く切り捨ててもよかったQBたちがいた。00年代のNFLは、特にQBを見捨てる点において従来よりも判断が遅かったのではなかろうか。実際ANY/A+が95未満なのに32試合以上の先発を経験したドラフト1巡QBを見ると00年代が8人で最多。次が90年代の5人、そして80年代の3人と続く。チャンスを与えられ過ぎているQBは、むしろ最近の方が多い。
もしかしたらFAとサラリーキャップという現在の仕組み構築が、却ってダメQBを長く引っ張る要因になっているのかもしれない。普通に考えればFAで自由にQBが取れるのだからダメQBは早々に見捨ててもいいようなものだが、数字が示すのは逆。1巡QB、AY/A+が95未満、先発32試合以上の条件を満たす18人(10年代以降のドラフトは除く)のうち、現代FAが始まった1993年以降に現役だった選手は実に14人を占めている。いつでも替えられるはずなのに、なぜかこだわってしまうチームが多いのだ。
その理由は、サラリーキャップの時代に合わせて1巡新人のサラリーが膨れあがったことにあると思われる。まさにサンクコストにしがみつくという人間の性向が表れたわけだ。そうではなく別の要因があるのだとしたら、その場合は10年代になってもダメQBを引っ張るという傾向が続くはず。だがこれまでのところ、新人サラリー契約が安くなって以降にドラフトされたGabbertやWeeden、Tebowなどが早めに見切られており、00年代のまでとは違う流れになっている。新人の大型契約を修正したことは、かつてのようにダメな若手選手を早めに切り捨てる動きを促しているようだ。
さてそうこうしているうちにいよいよ開幕戦だ。新たなシーズンを楽しむとしよう。
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