ジョミニ著作書評2

 彼らしい仕事であるナポレオンのセント=ヘレナでの口述は、歴史上の事件に関する単なる断片的な議論に過ぎず、構想は大掛かりだが実行は不完全だった。経験豊富な将軍にとっては価値ある研究だが、軍事について学ぶ生徒にとっては簡単には理解できず、一般の読者には単なる死んだ文章だ。ナポレオンはジョミニの著作を批評する中で、彼について高い称賛の言葉で言及し、そしてジョミニは、ナポレオンについて書く際に、常に彼を偉大なる軍事指導者の模範として持ち上げている。軍事科学の問題に関して彼らは完全に一致している。ジョミニが軍事的問題について科学的な言葉で説明する一方、ナポレオンはそれを実務的な経験から解決する。
 ジョミニの初期の著作が最初に登場して以来、極めて多数の軍事に関する著作が出版された。いくつかは専門家教育のための技術的な本で、他のものは歴史に関するものだ。
 第一級のものとしてはジーランダー、ワグナー=デッカー、ホイヤー、ヴァレンティーニ、カール大公、ミュラー、ビスマルク、バターリン、オクニェフ、クラウゼヴィッツ、ミュフリンク、ロニャ、ゲイ=ド=ヴェルノン、ジャキノー=ド=プレル、ロカンクール、テルネイ、デュフール、オゴヤ、バルダン、シャンブレー、ビュジョー、ラルマン、バール=デュパルク、ファロー、ペイアン、シャサループ、ジャコビ、ピオベール、シャルンホルスト、ティルー、シュマラ、ビラゴ、ブマール、カルノー、ダグラス、エイロー、キャリオン=ニサ、ラヴィキオ=ド=ペレツドルフ、マコーリー、ノワゼ、ジェブ、レーネ、ツァストロフ、マハン、サン=ポール、マンジン、モーリス=ド=セロンなどがあげられる。
 第二級のものにはデュマ、スールト、スーシェ、サン=シール、ボーヴェ、ペレ、コッホ、ヴォードンクール、フォワ、ネイピア、レイニエ、マルモン、ラマルク、ベリューヌ、シャラ、ティエール、ベルマ、カウスラー、シャンブレー、サヴァリー、セギュール、フェイン、サイボーン、ジョーンズなどがあげられるだろう。
 最近の軍事著作者及び歴史家のほとんど全てはジョミニの著作で説明されている理論及び原則について議論または批判している。しかしながらこれらの著者全て、あるいは少なくともその多数は、彼らが議論している問題または彼らが批判している原則について明白に理解しているとは推測できない。
 またもジョミニはその政治的経歴において一般の意見及び判断の不安定さを味わった。その祖国で彼は時に法外な罵りの対象となり、別の時には限りない称賛を浴びた。フランスでは、彼がロシア軍に転じた後の数年間、彼の名は軽蔑と伴に言及されるのみだった。後に彼はフランス政府によって褒め称えられたのみならず、フランスの首都で文学及び軍事学者の間で歓迎された。そして彼の栄光ある功績の記録を自慢に思ったフランス軍は、彼が自分たちの仲間であると主張した。
 今世紀で彼より広く、または自力で勝ち取った評判を誇る者はほとんどいないだろう。彼の著作は欧州大陸の全ての国の兵士たちに読まれ尊敬されており、そしておそらく英国及び米国軍でこれほど読まれ研究されている著者は他にいないだろう。
 ジョミニ将軍は今や84歳だが、実際より若く見える。少なくとも2、3年前に翻訳者が彼をパリで見た時の様子はそうだった。
 このジョミニ将軍の生涯及び著作に関する簡単な伝記を終えるにあたり、フランス人が戦略的直感と呼ぶ軍事戦略についての彼の卓越した知識を示す特徴のある挿話を紹介しよう。イエナ戦役開始時に彼をマインツの帝国司令部に招集したナポレオンはこう言った。「戦争の真の原則を明示した最初の著作が私の統治下に現れたのは喜ばしい。我々の士官学校でそなたの著作ほどのものは他に教えられていない。我々はこれからプロイセンと戦う。そなたを呼んだのはそなたがフリードリヒ大王の戦役について書いているからであり、そなたが彼の軍を知っており、戦場について研究しているからだ」。ジョミニはネイ元帥の司令部から彼の馬匹と装備を持ってくるため4日間の猶予を求め、陛下とはバンベルクで合流するつもりだと付け加えた。「なぜバンベルクなのだ?」皇帝は言った。「私がバンベルクに行くと誰がそなたに言ったのか?」「ドイツの地図です、陛下」「地図には百もの道が描かれている」とナポレオンは言った。「さようです、陛下。しかし陛下がドナウヴェルトでマックの右翼に対して行ったこと、またサン=ベルナールでメラスの右翼に対して行ったことを、プロイセンの左翼に対して行う可能性は高いでしょう」「よろしい」とナポレオンは言った「バンベルクへ行け、ただしそのことについては何も言うな。私がバンベルクへ行くことは誰も知っていてはいけない」
 上述の伝記的及び書誌的な概要はLe Spectateur Militaire第126号、1861年12月15日掲載のルコント少佐のジョミニ将軍の生涯及び著作、また伝記辞書をまとめたものである。
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