もう少しまともな話として、彼の軍人としての活動も紹介しておこう。ジョミニのフランス革命戦争史の本にも、いくつかの場面で彼の名が出てくる。まずは第3巻"
http://books.google.co.jp/books?id=hFEUAAAAYAAJ"、1793年の連合軍によるマインツ攻囲。5月30日にフランス軍が行った出撃の目的地にルイ=フェルディナントの部隊もいたと書かれている(p221)が、ここでは単に名前が出てきただけにとどまっている。
次は7月16日に連合軍がフランス軍の砦にある堡塁を攻撃する話。ここではルイ=フェルディナント自身が3個大隊を率いて攻撃を先導し、砦の堡塁を奪って破壊するのに成功した。激しい戦闘によって負傷したものの、彼はこの際に「真に騎士的な真価を示した」という(p237-238)。
この時の話はドイツ語の逸話本にも書かれているようで、英語レビューにもその中身が詳しく紹介されている。ルイ=フェルディナントが攻撃の指揮を執ると申し出たことに対して国王は躊躇ったが、彼は攻撃を担当するマンシュタイン擲弾兵に向かって「私は決して諸君を見放さない。諸君も私をよく知っているだろう。私と同じ事をし、そして私を後方に残すな。自信を持って私について来い。私が先頭を進む」と演説をかましたそうだ。
かくして午後10時、雨雲のせいで真っ暗になった戦場を彼らは進み、夜闇にまぎれて堡塁に銃剣で襲い掛かり敵を撃退。反撃にでたフランス軍が「サ・イラ」を歌いながら接近してきたのに対し、ルイ=フェルディナントは兵士たちを集めて"Non, ça n'ira pas!"(いいや、お前らを進ませない!)と叫んで反撃に転じたという。いささか面白すぎるが、そういう話も伝えられているようだ(p521-522)。
他にもジョミニ本の第6巻"
http://books.google.com/books?id=rp8FAAAAQAAJ"にルイ=フェルディナントの名が出てくる。1794年9月に行われた戦闘で彼の率いる旅団が騎兵の協力を得てフランス軍の戦線を突破したという話だ。ただ彼自身の行動についてはほとんど言及はない。そしてこの翌年にプロイセンはフランスと講和を結んでしまうため、彼のフランス革命戦争での活躍もここで終わる。次に戦場に登場するのは彼が戦死するときだ。
革命に対して彼が反感を抱いていたのは事実のようだ。スタール夫人によれば、アンギャン公の処刑を彼女に知らせに来た時、ルイ=フェルディナントの顔色には「復讐かさもなくば死」の予兆が表れていたんだそうだ("
http://books.google.co.jp/books?id=DYkqAAAAYAAJ" p433)。それが「死」に傾いたのは、逸話本によるとザールフェルトの戦い(1806年10月10日)の少し前である10月7日のことだった。
この日、彼は上官であるホーエンローエ公と2時間にわたって会談した。彼の友人であり、音楽家であったドゥセックによると、会談後の彼は別人に見えたという。友人の問いかけに対し、ルイ=フェルディナントは「状況は悪い。プロイセン軍は絶望的な状況にある。負けたも同然だ」と答えた。そして「敗北を生き延びるつもりはない! 私は行動する!」と話し、その言葉通りに戦死した(p522)。
本当にそんなことを彼が言ったのかどうかは分からないが、ドイツでは彼の戦死を「英雄的な死」として扱おうとする動きがあったのは確かだろう。こちらの絵"
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Heldentod_der_Prinzen_Louis_Ferdinand_bei_Saalfeld.jpg"では文字通り"Heldentod"としている。
でも英語本のレビューアーは「愛国者も英雄も決して絶望してはならない」(p522)と述べ、ルイ=フェルディナントの無謀な死を批判している。「無謀さを英雄的行為として通用させてはならない」(p517)と、自分に酔っている人間に冷静なダメ出しをしているあたりは、いかにも英国人っぽい見解だ。
コメント
No title
最新の単行本7巻に出てましたが、「ルートヴィヒ親王」の描き方が実に微妙でしたね。
漫画ではルイーゼが「プロイセン最高の軍人」と呼んでいますが、この辺りはむしろ皮肉を感じるというか。
ウィキペディアでも「生きていれば」という批評がされているところもツッコミが入ってましたが。
2014/09/13 URL 編集
No title
2014/09/13 URL 編集
No title
ルイ=フェルディナントの指揮官としての能力については判断は難しいです。せいぜい前衛部隊の指揮官クラスしか経験していないのですから、どこまで実力があったのかは分かりません。
女性と音楽に関して有能だったのは事実でしょうけど。
2014/09/15 URL 編集