馬車馬RBの歴史についてもう少し。馬車馬度合いを調べるもう1つの方法として、1試合平均のキャリー数が20以上になっているRBを数える方法を採用してみよう。するとNFLがスタッツを採り始めた1932年から1971年までは、たった1年の例外を除いて20キャリー以上の選手は1年に最大1人しかいなかった。というかJim Brownの登場以前には複数回そうした記録を残したRB自体が不在だったわけで、ごく稀にしか起こらなかった事態であることが分かる。
ちなみに「たった1年」の例外は1937年。この年はCliff Battlesが10試合で216キャリーを、Bull Karcisが6試合で127キャリーを記録している。ただ彼らもこの年以外に20キャリー以上という記録は残しておらず、「ごく稀」な現象がたまたま重なっただけだと思われる。ちなみにこの年はチーム平均で1試合38.7キャリーを記録しているため、BattlesやKarcisのチーム内での貢献度も実はそれほど高くはない。
複数のRBが記録するのが珍しくなくなってきたのは1972年以降。それでも74年、90年など、たまに20キャリー以上がゼロになる年がある。90年代半ばまでは多くて6人、通常は5人以下という時期が続いており、馬車馬的なRBはまだリーグのごく一部にとどまっていたと見るべきだろう。
この指標で見た場合、馬車馬RBの全盛期は96年から2006年までだ。この期間は少ない年でも7人、多い年は実に12人(03年と04年)のRBが20キャリー以上を記録している。07年以降に1度も7人以上の年がないのを見ても、この期間がNFLの歴史において突出している様子が分かる。特に03年から05年(11人)の3年間は、馬車馬RBの絶頂期と呼ぶべきだろう。
中でもこの3年間に連続して20キャリー以上を記録したEdgerrin James、Shaun Alexander、Clinton Portisは馬車馬RB全盛期を象徴するRBと言えるかもしれない。特にJamesは前に紹介したFootball Perspectiveでもトップの馬車馬とされていたし、11年のキャリアで8回も平均20キャリー以上を記録したという馬車馬中の馬車馬だ。途中大きな怪我をしながらここまで活躍したのは凄い。
しかし最近は急速に馬車馬が減っている。07年以降は最も多かった10年にやっと6人。そして13年にはついに23年ぶりとなる「20キャリー以上のRB」ゼロ人が実現してしまった。この年、最も多かったのはAdrian Petersonの14試合279キャリー。あと1つキャリーしていれば平均20キャリーに乗せていた。
ちなみにPetersonは現役RBの中ではおそらく最もこき使われている選手だと思うが、それでもデビューから7年間のキャリー数2033は歴代12位にとどまる。Eric Dickerson、Walter Payton、Barry Sandersといった殿堂入り選手たちはもとより、JamesやEddie George、Curtis Martin、Jamal Lewisといった馬車馬全盛期のRBたちよりも少ない。一方YPCは4.98と、7年目までの記録で見ればSandersの4.90を上回る素晴らしい記録を残している。もし彼が一昔前にNFLデビューしていれば、これだけの成績が残せるのだからもっとこき使われていたのではなかろうか。
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