従って科学とは何の関係もない「世間がSTAP細胞をどう見ているか」の話についてまとめてみよう。ネット上でぽつぽつとこの問題に関するアンケートのようなものが紹介されているので、それを集めてみた。自然科学的には無意味な話だが、社会学的な視点でみれば充分に意味のある話だと思う。きちんとサンプリングしてアンケートを行っていれば。
残念ながらそういうきちんとした調査はあまり行われていないようだ。以前紹介したこちらのネット調査"
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/11241/result"は、はっきり「統計に基づく世論調査ではありません」と書いているし、そもそも当初は45%を超えていた「納得した」が30%になり、30%弱だった「納得できなかった」が50%を超えるなど、変動が激しすぎて参考にならない。
それでも、科学的な議論が中心だった副センター長会見のアンケート"
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/11301/result"と比較すると、科学的な内容は充実していたはずなのに「納得した」が少なく「納得できなかった」が多いという面白い結果が判明する。ネット読者の中には、会見の内容より非言語的な情報(仕草や表情、というか要するに泣いてみせた点など)に基づいて判断している人の割合が多いのではと想像できる結果だ。
性別の違いも傾向として現れている。例えば主婦を対象にしたアンケート"
http://jisin.jp/news/2630/7066/"になると、100人中「支持する」との回答は半分以下の44人にとどまった。それでも会見前に比べれば支持は高まったそうだから、あの会見そのものは男女ともに一定の効果を持っていたのは事実なんだろう。でも男性の方がより「若い女性の涙」に弱いことは否定できない。
こちらのネット調査"
http://news.nicovideo.jp/watch/nw1034549"も同じ。ここでは「どちらともいえない」という回答を認めたためそれが過半数を超えているが、STAP細胞の存在については「はい」の方が「いいえ」より多いし、また男性の方が「はい」の比率は女性より高い。もっとも女性はそもそもSTAP細胞に関心がない人の割合も多いようで、「若い女性による科学に関する会見」というテーマの時点で興味を失っていたのかもしれない。
面白いのは「STAP細胞は世の中に必要か」との質問に60.3%が「必要」と答えているところ。実際にはたとえSTAP細胞が実在して多能性を獲得していたとしても、医療現場への応用にはかなりの時間がかかるだろうし、どれほどの効果が期待できるかもまだ分からない。夢の技術的な売り文句を額面通りに受け取っている人が多いことを示しているんだろう。高度に発達した科学技術と魔法は見分けられないという某SF作家の指摘そのままだ。
最後に文系大学1年生を対象に行ったというアンケート"
https://twitter.com/SfumatoAMR/status/456061295624589313"。「あると思う」5割、「ないと思う」3割、「どうでもいい」2割がその結果だった。文系だし1年生でまだ学問的な基礎訓練を受けていない人々の反応だと考えれば、世間一般は「どちらともいえない」の比率が高いだけ若者よりは賢いのかもしれない。「分からないことには態度保留しておく方が安全」という経験に基づく知恵が身についた分、素直すぎる若者より慎重な態度になっているのかもしれない。
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