Heisman QBのプロ実績

 ドラフトでManzielがfree fallするのではないかとの話が話題になっているようだ。1年生でHeismanを取るなど話題になった選手ではあるが、でもそもそもHeismanを取ったQBはプロでは使い物にならないというのが昔の定説だったと思う。果たしてこの説は正しいのか、そして定説が変化したとしたらいつからなのか。
 1970年代あたりまではHeimanにはRBが選ばれるのが当たり前だった。NFLにおいて78年のパスルール変更以降にプロに入る機会があったQBたちのうち、Heismanを持って最初にプロ入りのチャンスを得たのは84年に受賞したDoug Flutieだ。しかし彼は1度はNFL失格とされ、90年代のほとんどをCFLで過ごしている。それでも彼のNFLでのキャリアは14715yds、86TD、68int、ANY/A+は104となっており、全体で見れば実はかなりいい成績を収めているHeisman QBである。
 彼の次は86年受賞のVinny Testaverde。これまたNFLに入った当初は酷い成績続きだったが、それでも彼はNFLでのキャリアを続け、最終的には46233yds、275TD、267intのANY/A+99を記録した。44歳まで現役を続けた息の長い選手であるが、内容的に見れば平均レベルのQBだったことになる。ただしプレイしない一流選手よりプレイする二流選手の方が偉いという考え方もある。
 彼ら2人はキャリア初期はともかく、トータルで見れば悪いQBではない。Heismanは使えないという範疇には入らない選手だろう。だがこの後、80年代末期からは本当の意味で使えないQBがHeismanから輩出されることになる。
 まず89年受賞のAndre Ware。プロのキャリアはたった4年でトータル1112yds、5TD、8intのANY/A+が82だ。次に90年受賞のTy DetmerはWareよりは使われたもののトータル6351yds、34TD、35intでANY/A+は97にとどまる。92年受賞のGeno Torrettaはもっと酷く、2年で16試投5成功の41ydsしか記録していない。そして93年受賞のCharlie WardはドラフトにすらかからずNBAに行くことになった。
 その後も厳しい状況は続く。96年受賞のDanny Wuerffelは2123yds、12TDの22intでANY/A+は67と無残極まりない成績。2000年受賞のChris Weinkeはプロのルーキー年で既に29歳のおっさんだったが、結局NFLでは3904yds、15TD、26intのANY/A+77だ。01年受賞のEric CrouchはQBとしては指名されず、WRとしてNFL入りしたが今度は怪我のためプレイできず、CFLや対抗リーグで細々とプレイすることになった。
 Testaverde以来のHeisman成功選手となったのは02年受賞のCarson Palmerだろう。13年までのキャリアで33739yds、213TD、152intでANY/A+は104だ。いくつかのチームを渡り歩いているが、30代半ばまででこの数字なら立派なもんだろう。でもその後はまたハズれが続く。03年受賞のJason Whiteはプロでプレイする機会のないままアメフトをやめた。04年受賞のMatt Leinartは現時点で4065yds、15TD、21intのANY/A+90。06年受賞のTroy SmithはANY/A+こそ102に達しているが、そもそもプレイ回数が少なすぎるために当てにならない。彼のキャリアは1734yds、8TD、5intである。
 07年受賞のTim Tebowは2422yds、17TD、9intでANY/A+92となる。彼がNFLで仕事を失った経緯については言わずもがなだろう。08年受賞のSam Bradfordはまだドラフトされたチームで先発の座を保持しているが、数値は11065yds、59TD、38intのANY/A+92。彼はキャリアで1度もCmp%+が100以上になったことのない選手であり、最も将来予測に使えるこの数字を見る限りリーグでは中の下レベルの選手となる。
 Heismanを受賞したQBがまともに活躍するようになったのは彼より後、本当にごく最近の話だ。というかはっきり言うならたまたま2人連続でまともな活躍をしたことが理由と言える。10年受賞のCam Newtonが11299yds、64TD、42intのANY/A+104を、11年受賞のRobert Griffinが6403yds、36TD、17intのANY/A+107を記録したため、なにやらHeismanが使えるように思われているのかもしれない。だが彼ら2人はまだキャリアが短すぎるし、安易に判断を下せる状況ではない。
 要するにHeismanの受賞を将来の活躍予想につなげるのは無理があるってことだ。キャリアの短い2人を除けば、HeismanでかつNFLでも活躍したと言えるのはFlutie、Testaverde、Palmerの3人しかいないのが現状である。成功率は2割ちょっとといったレベルでしかなく、とても当てにできたものではない。Manzielや、さらに13年に受賞したWinstonがNFLで成功するかどうかは全く保証されていないと見るべきだろう。
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