コンピューターとサンクコスト

 電王戦"http://www.shogi.or.jp/kisen/denou/"の2局目が終わった。コンピューター側があっさり連勝したが、勝ち負けよりも連続して居飛車振り飛車の「対抗型」"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%86%E6%A3%8B%E3%81%AE%E6%88%A6%E6%B3%95%E4%B8%80%E8%A6%A7"になったことを面白がるべきなのかもしれない。前にも述べた通り私は将棋に詳しいわけでは全然ないのだが、昨年は5試合通じてどちらも居飛車を使っただけに、今回は目新しさがあると言える。
 第1局はプロの側が振り飛車党だったようで、「ゴキゲン中飛車」"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%82%AD%E3%82%B2%E3%83%B3%E4%B8%AD%E9%A3%9B%E8%BB%8A"なる手を採用。コンピューターは居飛車に構えた。逆に第2局はコンピューターが四間飛車"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E9%96%93%E9%A3%9B%E8%BB%8A"に振ったのに対しプロが居飛車穴熊"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%B4%E7%86%8A%E5%9B%B2%E3%81%84"となる展開。両局とも双方の王将が先手から見て右側に陣を敷く格好になっている。
 ネットの感想を見ると、第2局の組み合わせは定跡通りだが、この定跡は穴熊が圧倒的に有利とされているそうだ。第1局も実は序盤は人間側の作戦勝ちという指摘があるくらい。にもかかわらずどちらもコンピューターが勝利したのは、中盤以降はほとんど間違えないコンピューターに対し、人間側にどうしても間違いや最善と言えない手が出てきてしまうためのようだ。だから序盤に大差をつけ、なおかつ充分に時間を残していないと、プロ側が不利だと言われている。
 もう一つ、第2局ではコンピューター側の初手が話題を集めていた。こちら"http://shogikisho.blog54.fc2.com/blog-entry-3072.html"では「笑うしかない」という反応もあったくらいで、確かに阪田三吉とか月下の棋士を思い出すような手である。挙句に最終局面でその端歩が穴熊を崩して勝ったんだから、なおのこと笑うしかない状況。序盤の有利不利は、局面判断をほとんど間違えないコンピューターにしてみればさほど問題にならないのだろうか。中盤から終盤にかけて間違えず、たとえ間違えても挫けずに次から少しでもいい手を指していこうとするところは、人間にはあまりない強みかもしれない。
 というかこちら"http://blog.livedoor.jp/shogitygoo/archives/51935417.html"の記事の指摘が正しいのなら、人間は「一回ミスをするとそれを引きずって悪手を重ねてしまう」のに対し、コンピューターがミスをすると「角をきれると思っていたが、私は完全に間違っていました。ごめんなさい。仕方ないので角をただであげます」という対応を採ることになるわけで、この差は結構大きいんじゃなかろうか。なるほど、もうコンピューターの方が強いと思う人も出てくるわけだ。
 人間側がサンクコストのダメージを感じながらプレイしているのに対し、コンピューターはあっさりサンクコストを切り捨てている。コンピューターはまさに合理的。でもなかなか簡単に切り捨てられないのが人間である。人間らしいと言えばらしいんだが、勝負の世界ではそれがマイナスになるのかもしれない。
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