1814年戦役

 dsssmさんのblogに、1814年戦役の概要を知るため1冊1万円する「ナポレオン戦争」の3~5巻を購入したという話が載っていた"http://dsssm.blog.fc2.com/blog-entry-270.html"。いやーよくあの高い本を買う気になったなと感心した後で、ではあれ以外に日本語で1814年戦役を説明している書物があるかと考えてみると、実はすぐに思いつかない。
 そもそも1814年戦役自体がマニアックだし、外国語ならともかく日本語の本でそれだけを取り上げてまとめたものはないと言っていいだろう。他の戦役もまとめて通史的に紹介している本の中で触れられているというのが精一杯ではないか。
 たとえば、戦後も復刻版が出版されたことがある伊藤政之助の本"http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1042762"では、フランス国内の戦役はp224-232と10ページにも満たない範囲で記述が終わっている。中身も茫漠かつ曖昧模糊とした記述に留まっており、ブリエンヌの戦いこそ載っているが、6日間の戦役も、クラオンヌやランスの戦いも、いずれもほとんど書かれていない。これでは参考にすらならないだろう。
 それでも役に立つ本は探せば見つかるものだ。1つは奈翁会のまとめた「奈翁全伝第3巻、帝王ナポレオン」"http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/946501"で、p392-443にかけてフランス戦役がそこそこの詳しさで取り上げられている。「ブリアンヌ」「ラ・ローチェー」「シャンポーベ」「モントミアイユ」などでの戦いや、クラオンヌとラオンも一応は載っている。まあよく読むと「ブリュッヘルの軍(ボエーメン軍)」(p410)などという意味不明の記述も出てきたりするが、それでも概要が書かれているだけマシではなかろうか。
 後は例の陸軍文庫所蔵、英人某著の「拿破崙第一世伝」"http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/782380"にも1814年戦役は書かれている(45-64/162)。連合軍側の指揮官名がブルーキルだったりシュワルチェンボルグだったりするうえ、旧漢字にカタカナだらけの文章で現代人の目から見ると相当読みにくそう。それでも日本語で読める数少ない1814年戦役記述の1つであることは確かだ。
 後は「ハプスブルク家かく戦えり」の目次"http://kinseisha.jp/book/0313-2/"に「フランス本土の戦い(一八一四年)」というのが載っている。ただ極めて長期間を対象にした通史本なので、あまり細かい記述が載っていることを期待するのは難しいだろう。
 
 ちなみに1814年戦役について調べているうちに、驚くべきページ"http://www.lesbatailles.com/page27/page27.html"を発見した。見た瞬間に「アイエエエエ! ニホンゴ!? ニホンゴナンデ!?」と叫んでしまったほど。フランス人(もしくはフランス語が母国語の人)が「素晴らしき6日間の戦役」("http://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k861110" p232)について記したサイトだが、なぜか紹介文の中に英語ページと日本語ページがあるのだ。英語はまだしも、なんで日本語? もしかして例のナポレオン漫画を読んで、日本にはナポレオニックマニアが多いと思ってしまった人なのではなかろうか。
 とはいえ日本語で書かれているのはこのページだけで、後はほぼ全て容赦なくフランス語だ。やはりナポレオン戦争を詳しく知りたければ、結局は欧州の言語に頼るしかないのが実情である。
 実際、英語文献に手を広げれば、1814年戦役だけで1冊の本になっているものが多数見つかる。有名なLoraine PetreのNapoleon at Bay"https://archive.org/details/napoleonatbay18100petr"、Henry HoussayeのNapoleon and the Canpaign of 1814"https://archive.org/details/napoleoncampaign00housuoft"などの他に、おそらくロシア語から翻訳されたMikhailovski-DanilevskiのHistory of the campaign in France"http://books.google.co.jp/books?id=DH4EAAAAQAAJ"も、ネットで無料で閲覧できる。他にもこういう本"http://books.google.co.jp/books?id=LA1XAAAAcAAJ"もある。
 フランス語やドイツ語文献まで手を広げればさらに数は増えるだろう。上に紹介したサイトのbibliographie"http://www.lesbatailles.com/page2/page2.html"を見ても、山ほどの文献が紹介されている。1814年戦役全体ではなく、6日間に焦点を当てただけでもこれだけ出てくるのだ。圧倒的に充実した史料群と情報量。やはり歴史は現地の言語で学ぶに限る、のだろう。
 あと最近の本で面白い記述があったのはこちら"http://www.pen-and-sword.co.uk/Napoleon-1814/p/1939/"。Uffindelはフランス軍の機動作戦が当時の気温に影響されていたことを、パリで記録されていた温度を元に推測している。こういう切り口はなかなか興味深い。
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