ヴァンデの共和国軍人 番外編

番外)エティエンヌ=ジャック=ジョゼフ=アレクサンドル・マクドナルド、タラント公
 Deniauの"Histoire de la Vendee"(参照"http://lesacristain.ifrance.com/")を読むと、奇妙な話が載っている。後に帝国で元帥となるマクドナルドが、ヴァンデで戦っていたというのだ。1793年4月30日より少し前、サント=パザンヌ付近で、彼の率いる第60戦列歩兵連隊の大隊がシャレットと交戦。シャレットは2回攻撃を仕掛けたが、最後は退却を強いられたという。
 だが、他の研究者はこの指摘を認めていない。Sixの本によると、マクドナルドが4月4日にリールにいたことと、8月に北方軍で准将に昇進したことが記されているが、その間にヴァンデに転属になったとの記録は全くない。Phippsによれば彼は4-5月にかけ、リール近くのマドレーヌ幕営地でラ=マルリエール将軍麾下の常備軍連隊を率いていたことになっている。私の調べた範囲で、マクドナルドがヴァンデにいたと記しているのはDeniauだけである。
 Deniauが根拠としてあげているのは、Jacques Cretineau-Joly"http://www.newadvent.org/cathen/04488a.htm"の著作だ。Cretineau-Jolyはヴァンデのフォントネ=ル=コントの生まれで、1830年代から40年代にかけてヴァンデ関連の著作を幾つか記したという。彼がどのような手法で調べ、どうした史料に基づいてこうした結論に至ったのか、そのあたりは不明だ。
 普通に考えても、マクドナルドが短期間だけヴァンデに行ってまた北方軍へ戻る理由はない。どこからこんな話が出て来たのかは不明だが、現時点ではマクドナルドは1793年時点でヴァンデにはいなかったと私は考えている。もちろん、具体的な証拠(一次史料)があれば話は別なのだが。

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