祖国は危機にあり(La patrie en danger) 関連blog
フス戦争漫画 ネタばれ
2013
/
12
/
30
ナポレオニック
例のフス戦争漫画"
http://seiga.nicovideo.jp/comic/6131
"についてネタばれを。現在はヴィトコフの戦い"
http://cs.wikipedia.org/wiki/Bitva_na_V%C3%ADtkov%C4%9B
"の真っ最中なのだが、車砦の1つが炎上し防衛側が全滅するなど、相変わらずシビアな話が続いている。その元ネタではないかと思われる逸話を紹介する。
元ネタの書き手はいつものようにブレゾヴァのヴァヴリネツ。LützowのThe Hussite Wars"
https://archive.org/details/hussitewars00ltgoog
"によると、「たった26人の男、2人の女と1人の少女のみに守られていた小要塞の1つは、絶望的な抵抗の後にのみ落ちた。女の1人は、武装していなかったものの、勇気では男に勝り、持ち場を見捨てることを拒否し、『本当のキリスト教徒は反キリストの前から決して退くことはないと言い、そして勇敢に戦って殺され魂を失った』」(p53)とある。この文の脚注には「ブレゾヴァのロレンス」とある。
実際にヴァヴリネツはどう書いているのだろうか。いつものようにチェコwikipediaを見ると、マイセンからの軍7000人から8000人がヴィトコフの丘へ進み、そこから(プラハの?)城壁に登ろうとしたところ、おそらく敵に囲まれていた木造の小屋(srubu"
http://en.wiktionary.org/wiki/srub
")に残っていた「女2人と少女1人、及び26人の男」が、矢(šípy"
http://en.wiktionary.org/wiki/%C5%A1%C3%ADp
")も榴弾砲(houfnic"
http://cs.wikipedia.org/wiki/Houfnice
")に使う弾もないため、石(kamením"
http://en.wiktionary.org/wiki/kamenn%C3%BD
")と槍(sudlicemi"
http://cs.wikipedia.org/wiki/Sudlice
")で果敢に抵抗したとある。vozyという言葉はないので、車営戦術を使ったのではないことも分かる。
wikipediaにはLützowが引用した部分は記されていないが、ネットで探せばそこについて記したものもいくつか見つかる。一例がこちら"
http://husitstvi.cz/clanky/vitkov/
"。曰く「そしてこの女たちは、おそらく武装もしていなかったが、男たちよりも勇気で勝り、その地を離れようとせず、『正しき忠実なキリスト教徒は反キリストから逃げない!』と叫んだ。そして勇敢に戦い殺されて魂を吐き出した」とある。この一文が紹介された部分の小見出しはDívčí válka(ディーヴチー・ヴァールカ)だ。
つまり女たちが戦ったことも、彼女らが戦死したことも、一応史料に書かれているのである。漫画に描かれたような自爆であったかどうかは不明だが、少なくとも狂信的な態度についてはどうやら漫画に描かれていた通りだったと思われる。そしてこの戦いぶりを示すことで、その前の号に載っていたジシュカの「神の戦士」という言葉と平仄を合わせているあたりは、漫画としてうまい構成になっている。確かに現代においても「神の戦士」による自爆テロはなお続いているわけだし。
ちなみに前にも紹介した"
http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/47314912.html
"が、ヴィトコフのような要塞を巡る防衛戦に女性が参加するのは、いつの時代もさほど珍しくない。ナポレオン戦争を含む近代以降の戦争でも同じように女性が守備隊の一員となった例は既に紹介しているし、中世についてもジャンヌ・ダルクのデビュー戦はオルレアン防衛戦だ。もっとも彼女はその後で野戦部隊に所属し、そこでは男性の姿をして行動している。フス派の防衛戦ではなく外征にも女性や少女が参加していたのかどうかは気になるところだ。
あともう一つ、ヴィトコフの丘はこちらの写真"
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Praha_Vitkov.jpg
"を見ても分かるように、漫画に比べるとかなり急峻かつ山頂部が狭い丘である。
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