前に2000年以降にドラフトされたTEについて分析したが、今回はQBを調べてみた。なぜQBなのかというと、チェックすべき人数が少ないから。RBやWRは指名数がやたらと多いので面倒だから調べない。
まず大雑把な傾向を見てみると、選手としての活躍度合いが必ずしもドラフト巡と比例していないのが特徴だ。TEの場合、DPARの分析をすると基本的にドラフト巡の高い選手ほど活躍する傾向が見られたのだが、QBは違う。より詳細に言うなら、ドラフト1巡と2巡の間にはほとんど差はないし、2000年以降に限ればドラフト6巡に当たり選手が多い。他のドラフト巡(3、4、5、7)で取った選手は基本的に控え以下の成績しか残せていないのである。
ドラフト巡ごとに見てみよう。まず7巡で指名されたQBは2000年以降で19人。このうちスタッツを残した選手は10人(ここで半分脱落している)であり、DPARが残るシーズン10回以上のプレイを行ったQBは8人だ。そのうちDPARがマイナス(控え選手以下の成績)の選手が5人を占めており、ドラフト7巡のQBはほとんどが良くても控えレベルに過ぎないことが分かる。
控え以上の成績を残せたのはたった3人。ただしうち2人はキャリアでパス試投が二十数回とほとんどプレイしていないに等しいので、真の意味で控えレベルを超えた選手は一人しかいない。2000年にSan Franciscoに指名されたRattayがその一人で、トータル39.1のDPARを記録している。一流QBに比べれば全然大した数値ではないが、7巡としては立派なものだ。
6巡は上にも述べたように大当たりのいる巡。2000年に指名されたBulgerとBradyがそうだ。BradyのDPARは394.6、Bulgerは273といずれも立派な成績。まさにstealと呼ぶべき指名なのだが、問題はBulgerを指名したのがNew Orleansであること。NOは結局彼を使いこなすことができず、BulgerはSt.Louisで才能を花開かせた。6巡全体では19人が指名され、うち8人がパス記録を残している。DPARを残したのは7人で、うち控え以上の結果を出したのはBulger、Bradyの他にはSorgi(13.7)のみ。大当たり2人を除けば妥当な結果だろう。
5巡は13人指名のうち8人がスタッツを、7人がDPARを残している。控え以上の成績は2人いるが、うち一人は33回のパス試投しかないので、実質控え以上のQBはFeeleyのみだ。もっとも彼のDPARは6.2と控えレベルをほんの少し上回っているだけ。今の彼のポジション(Philadelphiaの控えQB)は妥当な位置だろう。
4巡指名は9人と少ないが、うち8人がスタッツを残すなど5巡以下に比べてNFLでの試合経験はかなり豊富になってくる。ただ、実績はさえない。8人ともDPARを残しているが、うち5人は控え以下。残る3人のうちDaveyは18回しかパスを投げていないし、RosenfelsはDPAR0.7と控え並み。唯一頑張っているのがJacksonvilleの先発になるのではないかとも言われているGarrard(26.3)。しかしこれも一流の数値とはいえない。3巡は11人指名でスタッツを残したのが8人、DPARが7人。これまた控え以下の選手ばかりで、唯一まともな成績と言えるのがSimms(8.6)である。
2巡はたった5人しか指名されていない。先発候補のQBはドラフト1巡で取られることが多く、控え候補は3巡以降に回されるためだろう。その中でスタッツを残したのは4人、DPARは3人で、Brees(254)という当たりがある一方でCarter(-14)やTuiasosopo(-11.7)など外れも結構いる。
1巡を見るとQB指名の難しさがよく分かる。19人指名され、まだ試合出場機会が与えられていないCutlerを除く18人は全員スタッツとDPARを残しているので、試合で使われるところまでは誰もがたどり着いている。しかし、その実績はバラバラ。Pennington(232.8)、Palmer(217.7)、Roethlisberger(156.4)といったドラ1にふさわしい活躍を見せるQBがいる一方で、Losman(-27.3)、Carr(-19.8)、Harrington(-17.1)など控え以下の実績しか残していない選手もいる。まだ2年目だがSmith(-52.8)もヤバい。現時点では68.9のRiversは今後試合経験を積めばもっと上向いて一流QBに入る可能性があるし、ランで123.1のVickはパスだとたった33だったりするなど、全体としては玉石混交だ。
ドラフト以降のチーム試合数でDPAR(パスとランの合計)を割った数値で見ると、トップになるのはBrady(3.81)。他にも5番手にBulger(2.61)が入るなど、やはり6巡でのstealが目立つ。この二人に加え、Palmer(3.74)、Roethlisberger(3.72)、Brees(2.85)、Pennington(2.27)の計6人は十分にドラフトの期待にこたえているといえるだろう。
次に個々のプレイでリーグ平均をどのくらい上回ったかをDVOAで調べてみる。上位にはパス試投数の少ない選手(NallとかDaveyとか)も出てくるので単純には言えないのだが、この数値で優秀なQBとしてはRivers(30.1%)、Roethlisberger(24.5%)、Palmer(23.7%)、Pennington(21.1%)、Bulger(18.8%)、Brady(17.1%)、Brees(12.2%)あたり。DPARの数値で上位に出たQBたちとほとんど同じである。問題はこの数値がゼロ以上のQBが14人(パス試投の少ない選手も含めて)しかいない点だろう。44人はこの数値がマイナス、つまりリーグ平均以下の実績しか残していないことになる。少数のエリートと多数の脱落者というのが、NFLのQBたちの特徴だ。
さて、ついでにこのデータを見ながら、最近その去就が話題になっているQBたちについて見てみよう。まずVickだが、彼のDPARは上にも指摘した通り、パス33に対しラン123.1とかなりアンバランスだ。ランの成績はRBと比べてもまったく遜色はなく、それに対しパスのDPARはRattay並みとまさしく「投げるRB」。QBを雇用したつもりのチームにとっては悩ましい数値だろう。しかし、だからと言って控えのSchaubに交代しても事態は改善しない。SchaubのDPARは-5.8、DVOAは-22.6%。VickのパスDVOA(-8.3%)と比べても決していいとは言えないのだ。当面はVickで行くしかないだろう。
最近になって批判を浴びているEli Manningはどうか。確かに彼の数値は上に紹介したトップクラスQBたちよりは低い。パスDVOAも-3.3%と、ドラフト全体1位選手としては物足りないのは確か。だが、彼の成績はCarrやSmithといった同じドラフト全体1位選手よりはマシなのだ。ここでEliを諦めて他のQBを取りに行くというのも一つの手だが、それが成功するという保証はどこにもない。
少し落ち着いてきたがLosmanの周囲もかなり騒がしい。こちらは正直誰かとチェンジした方がいいだろう。パスDPAR-27.3というのはドラ1でもSmithに次いで酷い成績。そもそもドラフト時点でも「2巡が妥当」と言われていたような選手だし、将来性に期待するのも難しそうだ。CarrやHarringtonは今年はそこそこ評価されているようだが、5年もやってパスDPARがマイナスというのは正直厳しいと思う。
JacksonvilleではLeftwichをGarrardに代えろという意見が出ているようだ。これはどうだろうか。確かにGarrardの成績はそう悪くない。パスDPARは26.3、DVOAは0.1%とわずかながらプラスである。ランが得意というだけあってランDPARは18.7とLeftwich(3.4)を上回る。だが、LeftwichのパスDPARは96.1、DVOAは3.1%であり、この部分では彼の方が上だ。そして、ランの得意なQBがパスの得意なQBを上回れないことはVickを見ても明白。Garrardに代えればそれでOKという訳にはいかないのではないか。
最後にPlummerに代えてCutlerを出場させるというDenverの選択だが、今年の新人QBを見る限りパスDPARでPlummerを上回っているのはLeinartのみ。CutlerがLeinartを上回る成績を残すと断言できるのならQB交代もいいが、現実には難しいのでは。
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