AndrewとPeyton

 2012年ドラフトの全体1位指名だったAndrew Luckに関して、こういう記事"http://www.knowitallfootball.com/2013/06/27/colts-quarterback-andrew-luck-nfls-overrated-player/"がある。似たような主張はいくつも見かけるし、私も以前こちら"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/53850596.html"で彼をMirerやBradfordと比べたことがある。
 彼が実力以上に過大評価されているのではないかとの指摘の背景には、彼の成績がある。確かに新人として過去最多の獲得ヤードを記録し、昨年どん底にあったチームをプレイオフまで導いたことは確かだし、Luckを評価する人々はこうした点をよく取り上げる。一方で批判派は彼がもたらしたターンオーバーの多さやパス成功率の低さを問題にする。
 しばしばLuck擁護に使われるのが「1年目の成績はPeyton Manningだって酷かった」というものだ。批判派はこれに対し「Peyton以外に数多のダメルーキーがいたことを忘れるな」と切り返す。確かに1年目の成績だけで判断するのは難しいが、一方で1年目にダメだったQBが全員2年目以降に覚醒して殿堂入りクラスの成績を残したわけでもない。要は程度とか確率の問題である。
 
 そこで今回はMirerやBradfordではなく、Peyton ManningとLuckを比べてみよう。まず、1年目のPeytonの成績はそんなに酷かったのだろうか。Football Outsidersのデータ"http://www.footballoutsiders.com/stats/qb1998"によれば1年目のPaytonのDYARは+696(100試投以上を記録した49人中12位)、DVOAが+7.7%(18位)だ。言うほど「酷い」成績ではない。ちなみにLuckの1年目はDYARが+255、DVOAが-5.2%でどちらも39人中19位だった。つまりLuckの1年目はPeytonより明らかに悪かったのである。
 Pro-Football-ReferenceのAdvanced Passing tableを見るとPeytonの新人年はANY/A+で96、より予想に役立つNY/A+では105だった。LuckはANY/A+が97でNY/A+が98。ANY/A+ではPeytonに勝っているがNY/A+では負けている。これに関しては同じくらい「酷い」と言っても問題なさそうである。
 ただし両者の「酷さ」の中身は同じではない。新人Peytonを見ると何より低い数字を記録しているのがInt%+の77であるのに対し、新人LuckはComp%+の78が目立って低いのだ。似たようなANY/A+を記録したと言っても内実は異なっていると見るべきだろう。問題はこの内実の違いが将来にどのような影響を及ぼし得るのかである。
 1978年以降、新人年に224試投以上を記録したQBのうちLuckと同様にComp%+で80以下を記録した選手は27人いる。Luckを除く26人のうち、キャリアトータルのANY/A+が100以上になった選手は5人。うちElwayとKosarは一流のQBと言えるだけの成績を残しており、DeBerg、Beuerlein、Staffordは(現時点では)並みのQBに留まる。成功率は26分の5、つまり5分の1弱だ。
 一方、Int%+が80以下になったのは12人。うちPeytonとAikmanは殿堂入りクラスになり、他にもDeBergとStaffordが並みの成績を残している。3分の1は成功し、残りが失敗という格好である。つまり低すぎるパス成功率よりもインターセプトの多い選手の方が将来盛り返す可能性が高い、という結論だ。なぜそうなるのか。
 以前こちら"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/52770973.html"でも分析した通り、Int%+はそもそも年ごとにブレが大きい指標である。いいQBでもたまたま1年目に悪い目が出る可能性はあるし、そうなっても翌年以降に盛り返せる。一方、Comp%+はSack%+に次いで安定性が高い指標。つまりパス成功率の低いQBはその後も低いパス成功率にとどまる可能性が高いのだ(参照:Sanchez)。パス成功率を高め、いいQBとして成長できる人材は限られている。
 LuckとPeytonとの比較に問題があるとしたらこの辺りだろう。偶然の要素が強い部分で酷い成績だった新人Peytonに対し、むしろ必然的な部分でリーグ平均を大きく下回ったLuckの方が、2年目以降の回復確率は低いと考えられる。Peytonになるより、MirerやBradfordに近い選手になってしまうリスクがそれだけ存在する。
 対戦相手による修正を加えるとLuckの数字はさらに悪くなる、との見方もある。こちら"http://www.footballperspective.com/2012-rearview-adjusted-net-yards-per-attempt/"ではスケジュールの厳しさを反映した修正ANY/Aなどを計算している。修正前のLuckはANY/Aが5.66となっているが、対戦相手の修正を加えると5.49に低下。Fitzpatrickより下の成績になる。新人ではLindley(2.63)、Weeden(4.69)、Foles(4.82)、Tannehill(5.24)よりマシだが、Wilson(7.45)、Griffin(7.33)に比べればずっと下。少なくとも現時点でLuckが「過大評価」なのは確かだ。

 Luckにとって救いなのは、彼が実質2年連続1位指名に相当する評価を受けていたことだろう。Peytonもそうだった。NFLスカウトやドラフトのプロたちがそれだけの評価をしていた選手が失敗に終わる可能性はかなり低い、と普通なら考えられる。過去のスタッツが正しいのか、それとも目利きたちの判断の方が実態を捉えているのか。今年のLuckのプレイは、その意味でも注目に値するだろう。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック