FOA2013 その3

 今回のFootball Outsiders Almanac 2013に期待していたものの1つが、ディフェンス隊形に関する分析だ。FOA2012で行われていた分析については前にも紹介"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/54020517.html"したことがあるが、そこで指摘したように今や4-3や3-4といった伝統的隊形よりも5人以上のDBを置く隊形が増えつつある。この流れがどこまで進んでいるかを知りたかったのだ。
 FOA2012によればディフェンス隊形で使用頻度が高かったものは以下のようになる。左からDL、LB、DBの数と見てもらえばいい(Dime+はDB6人以上)。
 
4-3-4 30.5%
4-2-5 25.2%
3-4-4 17.0%
Dime+ 10.3%
3-3-5 8.1%
2-4-5 6.5%
 
 全体の5%以上とそれなりに高い比率で使われた隊形は以上6種類。うち4つは5DB以上である。この数字がFOA2013(つまり2012シーズン実績)でどうなっているかを調べたかったのだが、残念なことにそれができなくなった。
 FOA2013では4-2-5や3-3-5といった記述が消え、代わりにNickel EvenとNickel Oddといった表現が登場してきたためである。Nickel Evenは4-2-5と2-4-5をあわせたもの、Nickel Oddは1-5-5、3-3-5、そして稀に5-1-5の合計。なぜ足し合わせたのかというと「コーチングスタッフやフロントにいる何人かの友人の助言に従った」(XXIV)ため。特に4-2-5と2-4-5は本質的に同じディフェンスなんだそうだ。
 そしてその比率を見るとNickel Evenが36%、4-3-4が27%、3-4-4が17%、Dime+が8.9%、Nickel Oddが8.6%となった。3-4-4は2012年と変わらないが4-3-4の比率は低下。Dime+も下がり、代わりにNickel Even(4-2-5と2-4-5の合計)が大きく伸びた格好だ。だがNickel Evenが4-3-4より高かったのはFOA2012(つまり2011シーズン)の時点で既に生じていた出来事であり、2012年が画期となった訳ではない。2010シーズン以前の数字は存在しないので、現時点でいつ4-3-4よりNickel Evenの方が多くなったのかの判断はできない。
 とは言え2011年のNickel Evenは計31.7%と4-3-4(30.5%)をほんの少し上回っただけ。2012年にこの差が大きく拡大(9ポイント差)しているのを見る限り、2011年が初めて抜いた年だと考えてもそう大きな間違いではないだろう。加えてそう考えるなら、2011年からRBのラン成績が過去にないほど高まってきた事実とも平仄が合う。DBを増やした隊形がトップに躍り出るなどパス偏重のディフェンスが増えた結果、ランの成績が上がってきたと解釈できるからだ。
 ただしNickelが増えてきた最大の理由は、オフェンスが3人以上のWRを投入するケースが増加したことにあるのは間違いない。2011年に40.4%だった"11 personnel"は2012年には46%まで急増しており、伸び幅だけ見るならNickelの増加より多いくらい。逆に伝統的な"21 personnel"(2RB、1TE、2WR)は16.8%から15%まで減った。スプレッドオフェンスはパス成績だけでなくラン成績の向上にも効果がある、という言い方もできる訳だ。
 
 チーム別に見るとどうなるだろうか。採用したディフェンス隊形のうち最も比率が高いものに注目すると、全32チームのうち半分近くの15チームでNickel Evenがトップを占めている。AFCのCincinnati、Cleveland、New England、Oakland、Tennessee、NFCのAtlanta、Carolina、Chicago、Green Bay、Minnesota、Giants、Philadelphia、St. Louis、Tampa Bay、Washingtonがそうであり、NFCでは実に10チームでNickelがトップになっている。
 Nickel Evenがトップになったチームの多くは4-3を採用しているチームだったようで、その結果4-3-4が最も多かったチームはたった6チーム(Buffalo、Jacksonville、Miami、Detroit、New Orleans、Seattle)に減少している。一方3-4-4がメーンとなっているのはまだ10チーム(Baltimore、Houston、Indianapolis、Kansas City、Jets、Pittsburgh、San Diego、Arizona、Dallas、San Francisco)残っている。3-4隊形の方が基本的な隊形を維持する傾向が強いのかもしれない。残る1チーム(Denver)はNickel Oddがトップのチームだ。
 全体としてNFCの方にNickelトップのチームが多く、AFCに旧来型のディフェンス隊形が目立つ。ちなみに昨シーズン、プレイオフに出た12チームのうちNickelがトップだったのは7チーム。またNickelがトップだった16チームの平均ディフェンスDVOAが-1.41%だったのに対し、旧来型ディフェンス16チームは+1.15%となっていた。Nickel Backを中心としたディフェンスは採用が増えているだけでなく、実績も積みあがりつつあるのかもしれない。
 
 Football Outsidersのサイトでは"11 personnel"に続いて"12 personnel"に対するディフェンス隊形の分析も行われていた"http://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2013/matching-12"。11に対しては5DB以上で対処する傾向が強まっているのに対し、12に対しては4DBで対応する比率がまだまだ高いようだ。WRはDBでないと抑えられないが、TEならLBで対応可能ってことか。
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