リーとマクレラン

 ネットの文言をそのまま信用してはいけない例は山ほどあるが、その一つとして南北戦争の話を。南軍司令官として活躍したリー将軍が、戦後になって「最も優秀な北軍の司令官は誰か」と聞かれたときにマクレランの名を挙げたという逸話関連だ。
 
 日本語のwikipedia"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%A9%E3%83%B3"によるとリーの返答は「マクレランだな、文句なしに」(McClellan. Without Question.)だったという。
 しかしこの文章で探してもそれらしいものは見つからない。それではと思って英語版wikipedia"http://en.wikipedia.org/wiki/George_B._McClellan"を読むと、そこには"McClellan, by all odds"という言葉が紹介されている。そしてソースもきちんと紹介されている。Recollections And Letters Of General Robert Lee"http://archive.org/details/recollectionsand010173mbp"のp416がそれだ。つまり、日本語wikipediaの英文は間違いってことになる。
 日本語サイトにはもう一つ、間違いが掲載されているものがある。こちら"http://members.jcom.home.ne.jp/diereichsflotte/History/CivilWar3.html"にはリーの発言として「マクレランだな、圧倒的に。あのような軍を組織しえたのは連邦では彼だけだと思う」(McClellan, by all odds. I think he is the only man on the Federal side who could have organized the army as it was.)というものがあるが、上に紹介した本にはそんな文章はなかった。これはどういうことか。
 探せばこの文章を語った人物は割と簡単に見つかる。元ネタはThe memoirs of Colonel John S. Mosby"http://archive.org/details/memoirsofcolonelmosb"という本であり、その序文の中(xv)に件の文章がある。もちろんリーの発言ではない。1867年か68年のフィラデルフィア・ポストに掲載されたモスビー大佐"http://en.wikipedia.org/wiki/John_S._Mosby"のインタビューが元ネタだ。
 
 とまあ日本語サイトの間違った例を紹介してきたが、ろくにソースを確認しようとしないのは別に日本語サイトだけの問題でもない。"McClellan. Without Question."という文章はこちら"http://www.civilwarinteractive.com/forums/view_topic.php?id=1676&forum_id=78"の英語掲示板にも出てくるのだが、議論している連中は誰一人としてリーが本当は何と言っていたか確認しようとしていない。リーの発言内容について事実かどうか疑うような書き込みもあるんだが、そのくせソースに当たろうとはしていないのだ。ネット住民の大半は、本当はソースなんかどうでもいいと思っているんじゃないだろうか。
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