だが、脇役であっても焦点が当たる場面はある。パスよりもランが主役を張る局面、それは後半にリードしている時だ。2012年のデータ(含むプレイオフ)を前後半それぞれについてリードしている時、同点の時、リードされている時と分けて、ランとパスがプレイされた回数を調べると「後半」に「リードしている時」だけ、ラン回数(4168回)がパス回数(3061)上回ったのだ。 さらに得点との相関も高い。試合全体を通じて見ると2012年におけるラン回数と得点との相関は0.463にとどまるが、後半リードしている局面のラン回数と総得点との相関であれば、この数字は0.766と強い相関にまで高まる。もちろんこれは「後半にランを確立すれば勝てる」という意味ではなく「後半リードしているチームはランが増えるし勝つ確率も高い」という意味だが、いずれにせよ後半リードの局面でランにスポットライトが当たるのは間違いない。 なぜ後半リードするとランが増えるのか。当たり前の話だが、時間を潰すためである。そして実際にその効果はある程度出ているようだ。試合全体を通じた場合、time of possessionとラン回数との相関係数は0.380と弱い相関にとどまっているのに対し、支配後半のtime of possessionと後半リードしている場合のラン回数の相関は0.486とそこそこの水準まで上昇する。2011年のデータになるとさらに凄く、後半リード局面のラン回数と、後半time of possessionの相関係数は0.706に達するのだ。最近10年間の平均も0.6を超えている。 ただしそこで重要なのはランの回数のみである。2012年のランの平均獲得ヤードとtime of possessionとの相関係数は0.135、あるいはランのファーストダウン率とtime of possessionの相関係数は0.178となっており、どちらもほぼ無関係である。2011年に至ってはラン平均獲得ヤードとtime of possessionの相関係数がマイナス0.386と逆相関になってしまう。時間潰しのうえではランの内容は問わない、回数こそが重要なのだ。 内容を問わないのは、別の視点からも裏付けられる。2012年のランの平均獲得ヤードを局面ごとに分類すると、試合前半はリードされている時(4.41ヤード)、同点時(4.47)、リードしている時(4.25)となり、試合後半はリードされている時(4.67ヤード)、同点時(4.27)、リードしている時(3.84)となる。見ての通り後半にリードしている時の数値が極端に低い。効率のいいランができなくても、回数さえ重ねれば時間を潰すことが可能なのである。
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