「ダーウィンの種の起源によると、最も賢い種が生き残るのではなく、最も強い種が生き残るのでもなく、自らがいる環境の変化に最もよく適応し順応する種が生き残るという」 Leon C. Megginson "Lessons from Europe for American Business"
この本を書いたメギンソンはルイジアナ州立大の経営学教授だった人物"http://publications.aomonline.org/newsletter/index.php?option=com_content&task=view&id=539"である。だからビジネス関連のサイトでよく使われるフレーズになったのだろう。もっともメギンソンは引用符を使っていないし、従ってメギンソンの本をもってこれがダーウィン自身の言葉だと解釈するのは無理がある。 それにメギンソンのダーウィン解釈も決して正確とはいえない。そもそも種は進化の主体ではないし、また種は環境に能動的に適応するのではなく、まずは繁殖過程で突然変異を通じた多様化が生じ、その後に環境の変化が生じてその環境にあった子孫が生き延びて進化する。進化をもたらす力は種の適応力ではなく、あくまで自然による選択だ。 とはいえメギンソンは「環境の変化に最もよく適応し順応」すると述べ、変化するのが環境であることを指摘しているので、まだ良心的と言えなくもない。しかしメギンソンの言葉は伝言ゲームで伝えられるうちに簡略化され、今では"most adaptable to change"や"most responsive to change"という表現になってしまっている("http://en.wikiquote.org/wiki/Charles_Darwin"参照)。何が変化するのかか曖昧になっているのだ。 そして日本語では、さらに「変化に対応できる」が「変化できる」まで簡略化されてしまった。changeするのが種そのものであるかのように語られているのである。こうなるともはやダーウィン理解として完全に間違い。これを「ダーウィン曰く」として紹介するのは、嘘をついているのと同じである。
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