ドラフトが終わったところで、改めて各チームのQB状況を見てみよう。何度も言っているようにNFLはパスハッピーリーグであり、パスオフェンスに最も大きな影響を及ぼすポジションはQBだ。周りの選手を強化し、コーチがうまくプレイコールをすることでQBの数字が良くなるケースもあるが、それでもAlex SmithがManning兄並みの成績になるのを期待するのは無理。だからQBをどうするかはチームの成績にも大きな影響を及ぼす。
昨シーズンのチームパス成績をANY/Aで並べると1位から10位までDenver(Manning兄)、Washington(Griffin)、New England(Brady)、Green Bay(Rodgers)、New Orleans(Brees)、San Francisco(Kaepernick)、Seattle(Wilson)、Atlanta(Ryan)、Carolina(Newton)、Giants(Manning弟)と並ぶ。このあたりまではQBを代える必要はないだろう。Griffinの回復が遅れた場合など怪我がらみを除けば、QBで悩まなくて済むチームである。
11位以下を見ると少し悩ましい選手も出てくる。Dallas(11位)のRomoは間違いなくいいQBだし、キャリアの中でも悪い成績だった去年の数字でなおリーグ平均より上だから、今はまだ問題視する必要はないだろう。Houston(13位)のSchaubも同様。しかしTampa Bay(12位)のFreemanはキャリアトータルで見てブレが大きすぎ、安定性に欠けるQBだ。成績が悪すぎれば、今年のドラフト3巡で取ったGlennonを引っ張り出す羽目になるかもしれない。
Baltimore(14位)のFlacco、Pittsburgh(15位)のRoethlisbergerは過去の実績から見てもクビになることは考えられない。ただRoethlisbergerについては毎年の怪我がパフォーマンスにどう影響するかがそろそろ気になるところ。彼を見ていると、シーズン終盤になると毎年のように足を引きずっていたMcNairを思い出すのだが、そのMcNairの成績が大きく落ちたのは31歳になってから。Roethlisbergerは今年31歳だ。
Detroit(16位)のStafford、Cincinnati(18位)のDalton、St. Louis(19位)のBradford、Indianapolis(20位)のLuck、Miami(23位)のTannehillあたりはまだ若いので引き続き使われるだろう。ただ彼らの成績も微妙な点はある。Staffordは年ごとのブレが大きいし、Daltonは2年目になっても成長の様子は見られなかった。Bradfordは3年目にようやく成績が上向いたものの、いかんせん水準が低い。Luckについては前にも指摘した"
http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/53850596.html"が、敵がインターセプトをこぼしてくれたおかげの成績であり実際はもう少し悪い(1年目のDaltonより下)可能性がある。Tannehillは2年目以降を見ないとまだ何ともいえない。
Oakland(17位)はPalmerを切ってFlynnに賭けた。正直これがいい選択かどうかは不明、というかはっきり言ってリスキーな決断だと思う。もちろんPalmerにこれ以上の上乗せは期待できないだろうが、かといってFlynnを使えば成績が上向くかというとその保証はない。1978年以降でキャリア最初の5年に100~200試投しかしていない選手を並べてみると、ANY/A+ではFrank ReichやRob JohnsonがFlynnよりいい成績であり、Sage RosenfelsやJim Sorgiが彼より少し悪い。だが、先発として長く活躍できた選手を探すとせいぜいJeff Hostetlerくらいしか見つからないのだ。何より新人との先発争いで負けたという事実は問題だろう。
Indyより下には、すぐ交代とはならなかったものの先行きの心配なベテランが目立つ。San Diego(22位)のRivers(まさか彼の名がこの位置に来るとは)、Philadelphia(24位)のVick、Chicago(26位)のCutlerが代表例だ。2010年にはリーグのエリートだったRiversは昨年はリーグ平均を下回った数字を出しており、30代になってから成績が下がる一方。もちろん平均以下となったのはまだ1年こっきりなので回復の可能性はあるが、今年も平均以下になったりすると先行きの不安が増す。
Vickの成績はAtlanta時代に戻っただけとも言えるので、正直あまり違和感はない。Philadelphiaが4巡と低い位置で手に入れたMatt Barkley(LCFでは評価がかなり高い)に交代させられても不思議ではないだろう。Cutlerの成績も、特にシカゴ時代を見ると酷い状態(ANY/A+が95)なので、これまたいつクビになってもおかしくないんだが、現在のロースターを見る限り来年もCutlerで行くつもりのようだ。
既に交代に踏み切ったのがBuffalo(21位)、Kansas City(31位)、Arizona(32位)の3チームだ。Fitzpatrickの昨年のANY/Aは実はRivers、Cutler、Vickより上であり、彼らが生き残っているのにFitzpatrickが早々に切られたのはある意味奇妙な話。ただそれ以前の実績を見ればFitzpatrickが最も劣っているのは一目瞭然ではある。Kansas City(Cassel)とArizona(Kolb)はパス成績どん底の2チームなので交代はむしろ当然であった。
残るのはTennessee(25位)、Minnesota(27位)、Cleveland(28位)、Jacksonville(29位)、Jets(30位)の5チーム。いずれも昨年のパス成績は惨憺たるものだったが、にもかかわらず先発QBが残っているチームだ。ただしJaxを除く4チームは現先発を脅かす可能性がある選手(TennesseeはFitzpatrick、MinnesotaはCassel、ClevelandはCampbell、そしてJetsはGarrardとGeno Smith)を取っており、おそらくは先発争いをさせるのだろう。
Jaxだけは昨年の先発のみを残した。しかし昨年の先発と言っても、ANY/A+が87だったHenneに84だったGabbertというダメQBコンビ。新しいHCであるBradleyはGabbertの成長という分の悪い賭けに踏み切ったのか、あるいは今年のドラフトはダメと割り切って来年以降のために他のポジション強化を優先したのかもしれない。まだ1年目のBradleyであれば、今年の成績がどれほど悪くても見逃してもらえる可能性がある。それを踏まえたうえでの決断だとしたら、なかなかしたたかと言えるかもしれない。
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