ゲームが廃れる時

 前回、Royal Game of Urの話をしたが、あそこで紹介したサイト"http://www.yourturnmyturn.com/java/ur/index.php"が採用しているルールは、大英博物館ルールの中でも基本ルールに基づいてプレイできるようだ。一方、大英博物館の上級ルールはよりややこしいものになっている。こちら"http://boardgamegeek.com/thread/206885/review-of-british-museum-version-of-ur"の説明によれば、各プレイヤーが持つコマはそれぞれ別の種類のものとなり、なおかつ5つあるコマのうち4つまで盤に登場させた後でなければコマを進めることができない。おまけに途中で止まらなければならないマスがあり、そこに止まれば点数が入るが通り過ぎてしまうと逆に点数を失うといったややこしいルールがある。最終的に勝敗を決めるのはこの点数だ。
 コマを盤に載せる段階でツキに結果が大きく左右されるうえ、途中の点数計算も面倒な割に面白いのかどうかは微妙。でも、こちらの上級ルールの方が楔形文字に残された記録との整合性は実は取れている。こちら"http://www.gamecabinet.com/history/Ur.html"にはその楔形文字の内容が記されているんだが、「コマを盤に載せるのに特別なサイの目を出す必要がある」とか「もしコマが特別のマスに止まらなければペナルティが与えられる」といった文章があるのだ。
 もちろん大英博物館のルールだけが全てではない。こちら"http://www.luckydog.pwp.blueyonder.co.uk/games/ur/"には特定のサイの目を出せば1マス目にコマを置ける、というルールも紹介されている。要するに細部は不明なんだが、そういうツキに任せたルールが使われていた可能性が、楔形文字を見る限り高いってことなんだろう。
 ちなみにエジプトのSenetという古いゲームの方は楔形文字のような記録すらないが、それでも複数の研究者が様々な考察に基づくルールを提示している"http://www.luckydog.pwp.blueyonder.co.uk/games/ur/senet.htm"。で、ある日本人はこのルールについて「どちらの博士のルールにしても(中略)退屈なゲームです」"http://www.logygames.com/logy/senet.html"とバッサリ。こちらにもSenetの復元ルールについて「面白いとは思えなかった」"http://analoggamestudies.seesaa.net/article/173691672.html"との感想がある。
 つまらなかったからこそゲームとして廃れていった、という点では復元ルールが退屈なのは理屈に合っている。でもそれだけだと廃れていくまでに1000年単位の時間を要した理由が分からない。例えばこちら"http://www.gamesmuseum.uwaterloo.ca/Archives/Piccione/index.html"では、元は普通のゲームだったSenetが次第に宗教的な意味を持つようになっていったとの考えを示しており、もしかしたらそれがゲームとしての寿命が途絶えた理由と関連しているのかもしれない。あるいは「もっと面白い盤上ゲームがまだなかった」のが、比較的長く生き延びた理由かもしれない。
 比較的マシだったルールが拙い方に変化してつまらなくなり、結果として廃れていった例としては盤双六があるそうだ。少なくともこちらのblog"http://analoggamestudies.seesaa.net/article/182789413.html"はそのような変化があったのではないかと想像している。Royal Game of Urにしても、楔形文字に残されているのは最初にゲームが出土した紀元前2500年頃ではなく、ずっと後の紀元前177年あたり。つまり楔形文字に残されていたのは盤双六と同じような経緯を辿ってつまらなくなってしまった段階の遊び方だったのかもしれない。
 いずれにせよ、現代の我々があえて退屈なルールに従って昔のゲームをプレイする必要は全くない。SenetにせよRoyal Game of Urにせよ、復元ルールより面白いルールがあるのなら、それに従うのが妥当だろう。こちら"http://boardgamegeek.com/thread/461310/review-of-one-particular-version-of-senet"のように、いくつかあるSenetのルールのうち「学術的観点からはより疑わしい」ルールが最良だと指摘している例もある。同じ暇つぶしをするのなら、楽しい暇つぶしをしようじゃないか、ってことだろう。
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