ウルの王室ゲーム

 コンピューターとプロ棋士との対戦"http://ex.nicovideo.jp/denousen2013/"が話題になっている。コンピューターの実力がついているということは以前から指摘されていたが、その前評判通り現在はコンピューターの2勝1敗1分で、人間側の勝ち越しはなくなった。プロ棋士でもトップクラスは1人しか入っていないという指摘もあるが、トップクラス(全体で10人しかいない)に迫る実力ってことは大半の人間はもうコンピューターには勝てないってことになるんだろう。科学技術の進歩は凄いもんだ。
 とはいえ将棋はまだ勝負になるからマシではある。チェスの世界では1997年にコンピューター"http://en.wikipedia.org/wiki/Deep_Blue_(chess_computer)"が世界チャンピオンに初勝利しており、2000年代半ば以降は人間側が勝つことが難しくなってきたそうだ。ハードの性能向上とソフトの改善が進めば、やがて将棋も同じ状態になっていくのかもしれない。

 同じようにコンピューターが強いと言われているゲームの中に、バックギャモン("http://loversleap.web.fc2.com/backgammon/"参照)があるようだ。バックギャモンはかつて日本で流行っていた雙六(盤双六)"http://www.asahi-net.or.jp/~rp9h-tkhs/dg_bansugo.htm"と基本的には同じものであり、盤双六は日本書紀には持統天皇の時代に(おそらくは賭博のため)禁止令が出されたと書かれている("http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/991746" 32/53)など昔から日本人に親しまれたゲームだったとか。江戸時代には囲碁将棋と並んでよく遊ばれていた"http://www.jti.co.jp/Culture/museum/collection/other/ukiyoe/u11/index.html"ようだ。
 だが盤双六はやがて衰退していった。理由はいろいろ言われている"http://www.h-eba.com/heba/BG/rule.html"うえに、廃れた時期も江戸時代だとか明治以降だとか色々と議論がなされているようだ("http://bansugoroku.seesaa.net/category/14747251-1.html"参照)。アジア歴史資料センターで調べると、明治17年に海軍省が定めた規定の中に「碁将棊雙六カルタ等ノ戯具ヲ構内ヘ持参スル者」への処罰が記されている("http://www.jacar.go.jp/DAS/meta/image_C11019116500" 2/35)ので、明治に入った後も完全に消えたわけではなさそう。
 話が飛んだが、バックギャモン自体も盤双六のように消えかけたとの話もある。20世紀に入って新しいルール(ダブリングキューブ)が入り、ゲーム展開がスピードアップされたおかげで生き延びたんだとか。もしルール変更がなかったらバックギャモンも盤双六と同じ運命を辿っていたかもしれない。そして、その場合はコンピューターによるゲーム解析などもなかっただろうし、盤双六同様にルールも含め次第に忘れ去られていった可能性はある。
 実際、バックギャモンや盤双六の祖先ともいうべきゲームの中には今ではほとんどプレイされないものも多い。こちら"http://seki.webmasters.gr.jp/gammon/history.html"にはバックギャモンに代表されるrace gameの古いものが色々と紹介されている。最も古いものになると古代エジプト時代にまで遡るようで、要するにバックギャモンタイプのゲームは(日本だけでなく)ずっと人間に好まれてきたゲームだったんだろう。

 面白いのは、ずっと昔に忘れ去られたゲームの中にルールの記録が残されていた例があることだ。それがRoyal Game of Ur"http://www.britishmuseum.org/explore/highlights/highlight_objects/me/t/the_royal_game_of_ur.aspx"。厳密には当時のルールを完全に再現したものではないようだが、信頼できるプレイの再現を記した楔形文字"http://en.wikipedia.org/wiki/File:Royal_Game_of_Ur_rules.jpg"が見つかったという。実際に大英博物館はこのゲームをルールと一緒に売り出しているそうだ。
 そのルールはこちら"http://boardgamegeek.com/thread/13718/two-different-set-of-rules"によれば基本ルールと上級ルールに分かれている模様。そしてこちら"http://www.yourturnmyturn.com/java/ur/index.php"ではネット上でそのゲームをプレイすることも可能だ。古代シュメール人がやった通りではないかもしれないが、それでも4500年も前のゲームが遊べるってんだからネットは広大だ。
 ちなみに同じゲームを大英博物館とは微妙に違うルールでプレイできるのがこちら"http://www.novelgames.com/multiplayerflashgames/game.php?id=17"。振るサイコロの形状と、自分のコマを複数重ねられる点が違うくらいだが、プレイしてみると全然違うゲームになっている。正直言って前者の方が競り合う展開が多く面白い。
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