ロボット兵士の戦争"
http://www.amazon.co.jp/dp/4140814284"読了。少し古い本だがなかなか興味深い。主に米軍における無人兵器の利用が増えている点に焦点を当てたものだが、解説でも指摘されているようにロボットのスペックなどよりも無人兵器が増えることに伴う影響についての分析が中心だ。戦場ではどのような変化が生じるのか、軍隊内部には、国民はどう思うのか。考えられることについてかなり網羅的に取り上げている。
中にはかなりサイバーパンクな話もある。ロボットだけでなく人間自体が機械を組み込んでサイボーグ化していくことについての言及もあるし、また「強いAI」が近いうちに登場し(特異点という)人間に取って代わると主張する人間も紹介されている。この本だけ読んでいるとサーバーパンクな未来はもう目の前といった感じがしてくるくらいだが、このあたりは慎重に読んだほうがいいのかもしれない。
むしろ興味深いのは部隊の団結、連帯感に関する部分だろう。シェークスピアがヘンリー5世にしゃべらせた「We few, we happy few, we band of brothers」という、兵士が戦う大きな理由の1つがあやふやになってしまうらしい。
無人兵器を操る兵士の一部は戦場にいない。単にドンパチやっている場所から離れているという意味にとどまらず、イラクやアフガンの戦闘にアメリカから参加する、という意味で彼らは戦場にいない。プレデターなどの無人機パイロットたちは米国内の基地から機体を操縦し、偵察や場合によっては攻撃を行い、仕事が終われば家に戻る。きょうはアフガン、あすはイラクといった勤務形態も珍しくない。彼らと一緒に戦う兵士たちは、果たして彼らと「兄弟の絆」を感じられるだろうか。
逆に戦場で兵士たちと一緒に活動するロボットに対し、兵士たちが愛着を感じるという話も紹介されている。人間の犠牲を減らすために投入される無人兵器だが、兵士たちはやがてその兵器に名前をつけ、時には階級を与え、処理した爆弾の数をマークし、故障したら何とか修理を試み、極端な場合には窮地に陥ったロボットを命懸けで回収しようとする。まさに「兄弟の絆」だ。
兵士が戦う大きな要因はこの部隊の団結、esprit de corpsにあると言われる。無人兵器の登場でそれが変化していると、もしかしたら戦い方にも変化が出てくるのかもしれない。場合によっては従来より組織としての機能が落ちる可能性もある(特に現場から遠く離れて戦っている兵士がいる場合)。それならいっそ全部無人化してしまった方がいいとの考えも出てくるかもしれないし、そうなったときの戦場はさらに今とは違いが大きくなっているだろう。
ただ、イラク戦争の時にラムズフェルドらが目指した「戦場の霧」がない戦争は夢物語に終わったようだし、無人兵器の比率が増えても変わらない部分はあるのだろう。そもそも全ての戦争行為を無人兵器で代替できる保証もない。まだ模索は続くと見られる。
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