金の無心と完成しないことについての言い訳。「似非機械技師」"quack mechanician"呼ばわりされるのもむべなるかなと思わせる内容の手紙だ。 だがロストプチンは最初のうちは彼を信じていたようだ。6月11日(6月23日)付で皇帝アレクサンドルに書いた手紙の中で、ロストプチンはレピッヒを「極めて有能な男であり卓越した機械技師」(Napoleon's campaign in Russia, anno 1812"http://archive.org/details/napoleonscampaig00roserich" p61)と褒め称えている。レピッヒは気球が完成すればヴィルナまで飛んでいくこともできると約束したそうであり、実際に大陸軍の侵攻に晒されている側にとっては藁をも掴みたいような気分だったのかもしれない。 もちろん、気球は完成しなかった。ナポレオンに対抗するため、ロストプチンは気球から「ギリシャの火」を浴びせかける代わりにモスクワに火をつけるという焦土戦術を強いられた。wikipediaによるとレピッヒはサンクト=ペテルブルクに拠点を移して開発を継続。その間にフランス軍はモスクワから敗走し戦場はロシア国外へと移っていった。結局、レピッヒの気球開発は無理だとロシアが判断したのは1813年暮れであり、1814年2月にレピッヒはロシアを去った。
コメント