決勝トーナメント進出が決まっていきなり世間の話題の中心になったWBC。優勝できそうになるや否や急激に盛り上がったあたり、現金なヤツらが多いことを如実に示している。そもそも世界一と大騒ぎしている連中の中でWBCを最初からまじめに見ていたのがどのくらいいるのだろうか。早速調べてみた。
まず1st roundだが視聴率を見ると日中戦(金曜夜)が18.2%、日台戦(土曜夜)が20.3%、そして日韓戦(日曜夜)が18.5%だった。サッカーW杯の二次予選が23.8%から43.4%だったのに比べれば今一つだが、2005年の巨人戦平均視聴率(10.2%)よりははるかにマシ。この数字を見る限り、ナショナルチームだから試合を見たという者が一定比率でいたことが分かる。
それがより如実に現れるのは観客動員数だ。1st roundの日本戦3試合は少なくて1万5869人、多いと4万353人を動員した。一方、日本の絡まない3試合は1万人を大きく割り込む結果に。特に土曜昼の韓中戦はたった3925人と最も多かった日韓戦の10分の1以下。客が日本の出ない試合に全く関心を示さなかったことがよく分かる。
2nd roundはいずれも平日朝や昼の試合だったため、さすがに視聴率は低下。それでも日米戦が11.6%、日墨戦が10.8%、日韓戦が14.4%だから立派なものである。これまた2002W杯時に平日午後に行われた日本―チュニジア戦(45.5%)には負けるのだが。というかテレビを見ていた連中に仕事はどうしたと言いたい。
WBC準決勝の韓国戦は日曜昼で36.2%、決勝のキューバ戦は祝日昼で43.4%。野球の試合と考えれば化け物のような視聴率だ(昨年の日本シリーズで最も高かった視聴率は20.0%)。野球に興味があるのではなく、ナショナルチームだから視聴した連中が半分くらいはいたと考えてもいいだろう。ちなみに2002W杯で最も視聴率が高かったのは日露戦(日曜夜)の66.1%である。
次にWBCを主催したMLBにとってこのイベントが成功だったかどうかを見てみよう。1st roundから決勝トーナメントまで、観客動員数合計は73万7112人。一部には動員目標が80万人だったとの説もあるので、この部分では成功とはいえない。
日本で行われたアジアラウンドの問題点は、上にも書いた通り日本戦以外の動員がまったく駄目だったこと。それでもアジアラウンド6試合の動員総計は10万964人と、他の3ヶ所で行われていた試合よりも多かったのである。もっとも少なかったのは、南米などのチームがなぜか米国のオーランドで試合をしたもので、6試合で5万9988人しか動員できなかった。
米国などが参加したフェニックスの1st roundで問題なのは、米国対南アフリカ戦だろう。観客動員はたったの1万1975人。前日行われたメキシコ対カナダ戦(1万5744人)の方が多いのだ。ホームでこれしか動員できないのだから、アメリカ人の愛国心も大したことはない。この後もずっとホーム開催の米国チームが動員面では苦戦する動きが続く。
2nd roundに入っていきなり突出した動員を成し遂げるのが韓国。1st roundの3試合では4万9471人しか動員できなかったのに、アナハイムでは3試合で10万3946人もかき集めたのだ。日本でほとんど客がいなかったのになぜ米国で急増したのかは不明だが、こちらもおそらくナショナルチームだから(しかも勝ち続けて調子がいいから)というのが背景にあるのだろう。
対して米国は3試合で7万5472人しか動員できず。とてもホームゲームアドバンテージがあるとは思えないような動員実態だ。どう考えても米国の客はナショナルチームに対して冷淡である。アジア諸国の方がよほど愛国心に満ち溢れているということになるのだろう。逆に言えば、米国人は愛国心ではなくベースボールというスポーツが好きだから試合を見に来ているのかもしれない。
その裏づけとも言えるのが決勝トーナメントの3試合。サン=ディエゴでの3試合は全部4万人以上の観客を動員したのだ。地元米国も、サン=ディエゴに近いメキシコも出ていないトーナメントを見るために、それだけの客がやって来たのである。遠い極東の日韓戦が4万2639人、日本と経済制裁を受けているキューバの試合が4万2696人。WBCでこれより観客数が多い試合は2nd roundの韓国メキシコ戦(4万2979人)だけだ。
結局、MLBにとってこのイベントは成功だったのだろうか。本当は米国での視聴率も調べるべきだが、観客動員だけ見るとトータルの数字には不満があってもそれなりにいい結果だったのではなかろうか。アジアラウンドでは地元でやれば大量動員できることが判明した。次は日本だけでなく韓国でも開催すればもっと客も増えるだろう。そして、米国の客は国籍にこだわらず試合を見てくれた。米国が決勝に出なかった割にはいい結果である。
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