多メディア

 最近、Vocaloidを使った楽曲の小説化やら漫画化が相次いでいる。いちいち挙げるのが面倒なほどたくさんあるのだが、それを見て私が思い出したのは「ケータイ小説」"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%82%A4%E5%B0%8F%E8%AA%AC"だ。アレは携帯で無料で読めるものをわざわざ書物の形に装丁し、それがなぜか売れていたという現象だった。最近はそのブームも終わったようで、上記wikipediaによれば「読者対象であった女子中高生に飽きられた」のが理由だそうだ。
 ブームが終わったのが2008年頃。初音ミクが発売されたのはその前年8月末だ。そして最近になって有名な曲を使った「ボカロ小説」なるものが増えてきた。こちら"http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n77569"のまとめによれば古いのは2010年頃から出ていたようだが、2012年になってからは急速に冊数が増えている。小説だけでなく漫画になったものもあるし、さらには舞台化したものもある("http://matome.naver.jp/odai/2133368977324364601"参照)。最近では電子出版としての漫画"http://comicaloid.jp/"も宣伝されていた。
 ケータイ小説とは違って無料で読めるものをそのまま装丁するという形ではない。歌詞だけ並べて終わりって訳にはいかないだろうし、かならず小説にしかないコンテンツは含まれているはず。だから「携帯で読めるのになぜわざわざ本を買う」という疑問はボカロ小説については当たらない。ただ、Vocaloidの曲が10代女子(つまり女子中高生)に人気があることを踏まえるなら、ケータイ小説読者と似たような世代・性別の人がボカロ小説の読者になっている可能性は高い。ある意味、ボカロ小説はケータイ小説の後継者になるんではなかろうか。
 
 そもそも、こういった「多メディア展開」で売る手法ってのは全然目新しいものではない。昔に遡れば「角川商法」と呼ばれたものがあった。こちらは元作品が小説で、それを映画やら何やらに展開させるのが得意技だったが、別に元ネタが小説でなければいけない理由はないってことだろう。そして、当時10代だった自分自身を振り返っても、その主要ターゲットに若者が含まれていたのは間違いないと思う。
 違いがあるとしたら、ケータイ小説も同じだが、元ネタが素人作品である点。素人の下手な作品でも妙に売れることはあるし、プロの質の高い作品でも売れないことはあるという、それ自体は当たり前の現象も、こうした多メディア展開で増幅されると色々と目立ってしまうことは確かだ。そこに違和感を感じる人もいるかもしれない。いずれはボカロ小説も飽きられる時が来る可能性はあるし、評価はそれからでも遅くはないだろう。
 ただ、音楽を元ネタにしたのはうまい手だと思う。10代の頃に聞いた音楽は、一生自分につきまとう。それだけ音楽というメディアは若者に訴求しやすいんだろう。音楽をベースにした多メディア展開という事例は今まであまり見たことはないし、これがどこまで定着するのか、それともやはり一時的ブームで終わるのか、そのあたりには関心がある。
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