真の新人豊作年

 スタッツ関連サイトのランキングはまだ出そろっていないが、13週が終わった時点で今シーズンの新人QBがどれだけすごいかについて数字で示しておこう。
 1978年以降のデータを見ると、これまで新人QBの出番が最も多かったのは1987年だった。ご存じの通り、選手組合のストライキにより3週目の試合が中止になり4~6週にリプレイスメント(代替)選手による試合が行われたシーズンだ。Pro-Football-Reference"http://www.pro-football-reference.com/"で調べると40人以上の新人がこの年にプレイしており、その大半は代替選手だったと思われる。中にはSean Payton"http://www.pro-football-reference.com/players/P/PaytSe20.htm"の名前もある。
 彼らの活動が多かったのを示すのがAdjusted Net Yards(ANY)だ。(パス獲得ヤード+TD*20-Int*45-サック喪失ヤード)で計算するANYは、得点との相関性で見るとパスの効率性を示すANY/Aより少し劣るものの、それでもたとえば2011年の相関係数は0.850とかなり高い数値を残している。全チーム合計のANYに占める新人QBのANYを見れば、新人がそのシーズンのパス攻撃にどれほどの貢献をしたのかが分かる訳だ。
 2年前までANYに占める新人の割合が最も高かったのは1987年だった。大量の新人が代替選手として出場し、パスを投げた結果の比率は9.65%。2番目以下を見ると1999年(7.43%)、2006年(6.52%)、1998年(6.45%)、1985年(6.02%)と続いており、1987年の突出ぶりがよく分かる。とはいえ全試合の2割分を新人で穴埋めしたくせにANYで1割弱しか占めていないことを考えれば大した数値でないとも言える。
 2番目の1999年は当時、「ドラフトQBでは1983年以来の豊作」といわれた年だ。その結果、新人のうちからプレイするQBたちが多くなった訳だが、彼らの大半は期待はずれに終わった。2006年はLeinartやYoungといった面々が数字を積み上げたが、彼らも今では控えに過ぎない。1998年のManning兄のように1年目から活躍しその後で一流QBになった選手もいることはいるが、どちらかと言えば例外だ。
 
 いずれにせよ新人QBの活躍度合いは通常ならリーグ全体の4~5%程度、代替選手を使った年を除いて高くても7%台というのが過去の常識だった。その常識が破られたのが2011年。この年、新人QBのANYはリーグ全体の9.99%とかつてない水準まで跳ね上がり、例外的な年だったはずの1987年すら抜き去ってしまったのだ。
 牽引したのはNewtonとDaltonという2人のQB。それまで新人QBのANY最高記録は2008年のRyan(3161)が保持していたが、Newtonは3446とRyanを抜き、Daltonも3053と歴代3位に顔を出した。他にもGabbertやPonderが1000超を記録している。リーグ全体のANYも過去最高の数字を出しているが、新人たちの活躍がリーグ全体より凄かった。
 その去年の結果をさらに大幅に上回っているのが今年の新人たち。13週終了時点で彼らのANYは計13013。リーグ全体が85960なので、その比率は実に15.1%と去年より5割も上回っている。個別の選手を見ると新人QBの獲得ヤード記録を上回る勢いで投げまくっているLuckが3047で早くも昨年のDaltonに迫っている。ANY/Aでは新人トップのGriffinが2653、さらにWeeden(2265)、Wilson(2219)がいずれも2000を超えており、Tannehillも1990といずれ2000は超えそうな勢いだ。
 要するにプロ1年目からベテラン並みの活躍をできるQBが増えてきたってこと。しかも彼らは遠慮なくパスを投げまくっている。かつては新人QBにはあまり投げさせず、ランプレイのフォローを多く入れるチームが多かったため、20世紀において新人で3000ヤード以上投げたのはManning兄くらいだった。それが直近5年間では既にNewton、Luck、Bradford、Ryan、Daltonが3000ヤード以上投げているうえ、今年のWeedenやGriffin、Tannehill、Wilsonなども3000ヤードを越えそうな勢いである。
 
 問題はこれが意味のあるトレンドなのか、それともたまたま2年間だけ優秀な新人が出てきたのか、という点だ。最近の新人QBの活躍は、大学でスプレッドオフェンスが広まりパスに長けたQBが大学でも増えてきたためだ、との説がある。それが事実かどうかの判断は現状では正直難しい。来年以降の新人の動向、さらに最近入った若手QBの成長度合いも見る必要があろう。それでも今年の新人が例年にない活躍ぶりである点は否定できない。
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