毎年恒例行事となっているBradyの逆噴射だが、今年はこの試合で出たか。まあIndyはいくらレギュラーシーズンで勝ってもプレイオフに入ると勝手に負けてくれるイメージがあるので別に心配はしていないのだが、この敗戦でDenverと勝ち星が並んでしまったのが痛い。プレイオフでマイルハイとかいうと全然勝てるイメージが湧いてこないし。
といった印象論で話をつなげていってもいいのだが、このblogはNFLに関してはあくまで数字にこだわる方針を貫く、つもり。で、今週の試合についても早速調べてみた。
前半のBradyのパスはショートが10/13で70ヤード、ディープが2/4で60ヤードだがインターセプト2回。後半はショートが7/16で46ヤード(2インターセプト)、ディープが1/2で25ヤード。前半のディープパスがうまく決まらなかった要因は不明だが、後半になって敗北を決定付けたのがショートパスの成績急低下であることはうかがえる。後半のレシーバー別のショート成績を見るとWatson2/3の14、Faulk1/3の3、Brown2/2の18、Dillon1/2の5、Caldwell0/2、Thomas0/2、Gabriel1/1の6、Maroney0/1と、満遍なく投げわけ、満遍なく冴えなかった。従って後半のショートパス成績悪化はレシーバーの問題というよりはBradyの問題と考えた方がいいだろう。やはりこの試合はBradyの逆噴射試合だったようだ。
ただ、試合トータルでレシーバーの成績を見るとそうとも言えない。この試合、Watsonはトータル4/8の54ヤードとまたもやレシーブ率が5割台に終わった。Faulkが5/7、Brownに至っては5/5だったのに比べると明らかに悪い。ディープパスの比率が高かったGabrielでも2/4。Watsonより悪いのは1/4に終わったCaldwellくらいである。何度も指摘していることだが、WatsonとBradyの組み合わせはとても一流コンビとは言えない。うまくレシーブすれば距離は稼げるものの、安定性はかなり低い「一か八かコンビ」と言った方がいいだろう。そういうレシーバーが(失敗も含めて)パス回数チームトップにいる状態では、逆噴射試合をひっくり返すことはできない。
ランについて見ると33キャリーで148ヤード、平均4.5ヤードだから悪くはないがよくもない。Indy相手と考えるといささか不満足な数値ではあるが、もともとこのチームのランオフェンスは「張子の虎」なので、こんなもんだろう。前後半通じて10ヤード超のロングゲインが2回しかなかったのを見ると、Indyが結構ランディフェンスで頑張ったことがうかがえる。一方でランによるFD数が11とパス(9回)を上回ったのを見る限り、NEのランオフェンスも決してダメダメではなかった。
となるといよいよ敗因はBradyの逆噴射で決定、といいたいところだがそれだけでは説明として不十分。Brady以外にも戦犯はいる。もちろん、NEの真のアキレス腱であるパスディフェンスがそれだ。
Manningの成績を見ると前半はショートが6/9で54ヤード、ディープが3/4で93ヤード、後半はショートが8/18で102ヤード、ディープが3/5で81ヤード(1インターセプト)となっている。Brady同様にショートパスの成績は後半になって悪化しているが、問題はディープの成績とトータルの獲得ヤードだ。要するに、相も変わらず「一発でかいの」をやられているのである。前半はHarrisonが44ヤード、Wayneが33ヤードのディープパスをレシーブ、後半はHarrisonが36ヤードと29ヤードのディープパスを取り、Clarkがショートパスを35ヤードのロングゲインにつなげている。インターセプト一つを取ったとはいえ、基本的にはIndyのレシーバーに好き放題にやられていたことが分かる。
レシーバー別の成績を見ると、NEが最も苦手としていた第2WRのWayneについてはショートで4/12の45ヤードと頑張って抑えていたことが分かるが、肝心のディープは2/3の49ヤードと止めきれず。おまけにWayne対策に集中しすぎたせいか、Harrisonに対してはショートで5/7の36ヤード、ディープで3/4の109ヤードと完璧にやられている。同じく苦手なTEのClarkはトータル2/5の42ヤードとそれなりに対処できたが、H-BackのUtechtには4/4の49ヤード。もう一つNEが苦手とするRBへのパスをほとんど使うことすらなく、IndyはNEのパスディフェンス攻略に成功したことになる。
IndyがNEのパスディフェンスに的を絞っていた様子は、プレイ選択からもうかがえる。この試合、前半のIndyオフェンスはパス13回、ラン9回(うち1回はニールダウン)。リードを奪って普通なら時間つぶしに出るべき後半にはパス23回に対しラン16回と、ランパス比率は前半とほとんど変わらなかった。後半のランのうち2回が最終ドライブでのニールダウン、5回が最後から一つ前のドライブで記録したことを考えれば、Indyがパス偏重オフェンスを後半になっても続けていたことは明らかである。実際、この試合ニールダウンを除いたIndyのランプレイ22回のうち、10ヤード超を記録したのはたったの一回。Indyは強力なNEのランディフェンスを避け、弱いNEのパスディフェンスを攻めたのである。先週のMNFにおけるBradyのように。
パスディフェンスの悪さは何が原因だろうか。少なくともこの試合に関してはフロントの責任ではない。過去7試合で7サックしか受けていないManningはこの試合3回のサックを食らっており、プレッシャーが不十分だったとは言えない。となると問題はDB陣。最初のドライブでRodney Harrisonが壊れたのもあるが、最大の理由はManningにダウンフィールドのカバーを読まれていたためと考える方がいいのではないだろうか。要するに結論としては「Crennel早く帰ってきてくれ」ということである。
終わってみると今までの成績は単に弱いチーム相手に稼いだものであることが如実になった試合であった。その典型がレッドゾーンディフェンスだ。第8週の時点でNEはレッドゾーンまで進まれた回数がリーグ最少(10回)であり、そこでの被TD率も30%とかなり優秀だった。だが、この試合、NEディフェンスは6回もレッドゾーンに進まれ、3回TDを取られて2回FGを決められた。昨年のNEはレッドゾーンに入ると止まらない「チキンレース中の珍走団のタコメーター」みたいなディフェンスが特徴だった。今年はこれまで「もしかしたら変わったのかもしれない」と思わせていたが、Indy相手に化けの皮がはがれた。何のことはない、今までレッドゾーンディフェンスがいいように見えたのは、ダメオフェンスチームばかりを相手にしてきたせいだったのだ。
では今後はどうなるのか。これまた何度も書いているように、今シーズンのNEのスケジュールはかなり楽である。今後8試合を見ても負け越しチームが5試合(Mia、Hou、Ten、GB、Det)、5割チーム1試合(NYJ)、勝ち越しチームとはたった2試合(Chi、Jax)しかしない。Bradyの逆噴射が例年通りシーズンに1回であれば、残り試合6勝から7勝は可能だろう。AFC内で同じ2敗のチームを見るとBaltimoreはNE同様に楽なスケジュールだが、DenverとSan Diegoは互いにこれからつぶしあいをやる予定。まだまだシード上位に入る可能性は十分にある。
だが、そこから先が見えない。今のパスディフェンスでは絶対にプレイオフのどこかで躓く。無駄に希望を抱かせて1月にシーズン終了。そんな、昨年と同じようなシナリオが目に浮かんでくる。
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