バーチャルアイドル史

 初音ミク"http://www.crypton.co.jp/cv01"関連でふとバーチャルアイドルの歴史が気になった。バーチャルアイドルって言葉は割と無造作に使われているが、そもそもいつごろから存在し、どのように広まってきたんだろうか。
 wikipediaの項目"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AB"では、真っ先に名前が出てくるのがマクロスのリン・ミンメイである。ただし、その説明文には「要出典」が山のように付されており、正直書かれていることをそのまま鵜呑みにするのは拙そう。少なくとも作品内のミンメイはバーチャルな存在ではなく実在する人間(という設定)であった。これをバーチャルアイドルと呼ぶためには、「飯島真理」ではなく「リン・ミンメイ」が現実社会でアイドル活動をしていた証拠が必要になる。
 こちらのblog"http://naminomanima2.blog78.fc2.com/blog-entry-254.html"では「ミンメイがこれら作品中に登場する架空のアイドルと一線を画す理由は唯一つ、『ほんとにレコードを出しやがった』からに他なりません」と主張しているものの、実際に調べてみるとミンメイ名義のレコードは見つからない(こちら"http://oshiete.goo.ne.jp/qa/3199616.html"の回答No.14参照)。アーティスト名はあくまで飯島真理である。
 声優や歌手の名前ではなく、キャラクターの名前で発売されたものとしてはこちら"http://www.tsutaya.co.jp/works/20110968.html"などが古い事例になるようだ。でもめぞん一刻の音無響子をアイドルと呼んでしまっていいのだろうか。というかキャラクターソングをバーチャルアイドルと認めてしまえば、世の中はバーチャルアイドルだらけになってしまうんじゃないか。
 架空の存在が現実社会でアイドル活動をする(たとえばキャラ名義によるレコード発売)パターンではなく、実在しないアイドルという「設定」の方を重視するなら、思いつく最も古い事例はメガゾーン23の時祭イヴ"http://dic.nicovideo.jp/a/%E6%99%82%E7%A5%AD%E3%82%A4%E3%83%B4"になる。続編で実は人間のイヴがいたということが明かされているが、少なくとも最初のイヴは確かにバーチャルアイドルだ。ただしこちらも発売されたレコード"http://talkingscarlet45.blog.so-net.ne.jp/2012-06-10"はキャラクター名義にはなっておらず、現実社会で活動するバーチャルアイドルではなかった。
 現実社会でアイドル活動をしており、なおかつそれがバーチャルな存在だったという点で考えるなら、見つけられた最古の事例は芳賀ゆい"http://nrsaurus.web.fc2.com/hagayui.htm"だった。ラジオ番組とそのリスナーが作り上げた架空の存在で、現実にはそんな人間はいないのだから間違いなくバーチャルである。一方でCDやビデオ、写真集を出す"http://nrsaurus.web.fc2.com/yuidisco.htm"といったアイドル活動もしっかりしている。設定においても現実においてもバーチャルアイドルである存在が、最初はクラウドソーシング"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E3%82%BD%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0"から生まれてきたってのは実に興味深い。
 その後は有名な伊達杏子"http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%CB%C3%A3%B0%C9%BB%D2"が登場、と行きたいところだが、実は時期的には1994~95年に発売されたマクロスプラスのシャロン・アップルの方が古いとも言える。設定自体がもろにバーチャルアイドルであるうえ、シャロン・アップル名義のCD"http://www.amazon.co.jp/dp/B00005GX6U"も95年に発売しているため現実のアイドル活動をするとの要件も満たしている。伊達杏子は「3DCGを使った」初のバーチャルアイドルという位置付けだろう。
 3DCGのアイドルとしてはさらに1998年にテライユキ"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A6%E3%82%AD"も登場。翌年に歌手デビューもしている。また最初はバーチャルアイドルとしてスタートしたが途中で普通の声優になった事例"http://dic.nicovideo.jp/a/%E3%81%8A%E3%81%BF%E3%82%80%E3%82%89%E3%81%BE%E3%82%86%E3%81%93"もあるという。初音ミクは2007年発売。バーチャルアイドルが普通に見られるようになってから約10年が経過していた計算だ。
 ちなみに、海外勢の中ではアイドル活動をしているバーチャルアイドルってのはなかなか見あたらない。そもそもアイドルってのが極めて日本的な存在なので海外でそういう事例がないのは仕方ないのだろう。ギブスンのIdoruに出てくる投影麗はクラウドソーシング的なバーチャルアイドルって設定だったが、現実のアイドル活動はしていない。映画シモーヌ"http://www.imdb.com/title/tt0258153/"のCGセレブも、現実世界でシモーヌ名義で何かをやったという話は聞いていない。いやまあ、マックス・ヘッドルーム"http://en.wikipedia.org/wiki/Max_Headroom_(character)"を話に含めるなら海外でも80年代からバーチャルアイドルがいたという結論になりそうだけど。
 以上、全体としてまとめるなら、バーチャルアイドルっぽい存在はおそらく1980年代にはその萌芽が表れていた。ミンメイは厳密に考えるとバーチャルアイドルとは言いにくいが、(現実に存在しないという意味で)バーチャルであり、かつ(作品内で)アイドル活動をしていたため、非常にバーチャルアイドルに近かった。89年にアイデアが生まれ、90年に実際の活動を行った芳賀ゆいは、バーチャルアイドルと呼ばれてはいなかったものの、事実上のバーチャルアイドルである。90年代半ばからはバーチャルアイドルの数も増えていたが、芳賀ゆいのようなクラウドソーシングではなく「トップダウン」方式のものが中心になった。
 こうした歴史を踏まえてバーチャルアイドルとしての初音ミクを位置付けるなら、「初めて本格的に成功したバーチャルアイドル」であると同時に「珍しいクラウドソーシングタイプのバーチャルアイドル」という特徴も見逃せない。CGMでUGCなバーチャルアイドルってのは、実はかなり希少な存在のようだ。
 ちなみに「初音ミクがバーチャルシンガー初のブルーレイ総合首位を取った」"http://www.oricon.co.jp/news/rankmusic/2016494/full/"とのニュースが出た。うん、本格的に成功したバーチャルアイドルと言ってもいいだろう。
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コメント

No title

ポア警察24時
初音ミクなんて超キモイ
バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーカ

No title

愛知 晴嵐
こんちわ、魔法少女シリーズのアイドルを描いたアニメなんかもアイドルとして歌の販売とかしてたらバーチャルアイドルになってたのかもしれませんね。

かうんとだうんTVとかのきゃたくたーもある種の芸能活動としてバーチャルアイドルとも取れますしね。

ヴァーチャルアイドルとい一くくりにしないで、系統別にアイドルなのかお笑いなのか司会なのかとか系統をつけて最近は分類する必要があると思いますね。

こういうのまとめるのも面白いですね、これからもがんばってください

No title

desaixjp
架空の存在が人気を集めるという現象をバーチャルアイドルと名づけるなら、それこそ聖書に出てくる偶像崇拝あたりまでさかのぼることもできるかもしれません。まあ風呂敷を広げようと思えば広げる余地はたくさんある、ってことで。
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