参謀―18世紀以前―

 ちょっと気になること。参謀の歴史とかそういった話になると、大体日本ではシャルンホルストとグナイゼナウあたりから話が始まるのが通例だ。日本語wikipedia"http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%82%E8%AC%80"などの記述がその典型。ちなみにこれが英語になるとベルティエあたりに起源を求めている"http://en.wikipedia.org/wiki/Staff_(military)"。いずれにせよ19世紀以降が中心との分析だ。
 だが、歴史的に見れば18世紀以前に参謀的機能を果たしていた人間がいなかったわけではない。というか常備軍が存在するようになって以降、参謀という機能なしに軍隊は動かなかったようだ。プロイセン軍自体、17世紀半ばの時点で既に参謀的な存在はいたという("http://www.grosser-generalstab.de/regiment/bredow/bw007.html"参照)。
 旧ソヴィエトでまとめられた百科事典によれば、16世紀から17世紀にかけて参謀本部という組織が形作られていったそうだ"http://encyclopedia2.thefreedictionary.com/General+Staff"。実際、ティエボーのまとめた参謀のためのマニュアル本に乗っているフランスの参謀システムの歴史は、16世紀初頭のフランソワ1世"http://en.wikipedia.org/wiki/Francis_I_of_France"の時代から語り起こされているという"http://www.napoleon-series.org/military/organization/France/Miscellaneous/c_Staff.html"。
 いわゆる旧体制(アンシャン・レジーム)の頃から参謀が存在していたことは間違いないし、彼らがかなり重要な役目を果たしていたことも事実のようだ。ルイ14世麾下のフランス軍で参謀長を務めたカティナは、参謀長の役割について以下のように述べている。
 
「参謀長は命令の分配者であり、司令官の敬意あるいは友情を借りているだけでどのような権威も持たない彼の伝声管役である。そして参謀長はしばしば自ら適切だと判断した命令を下し、兵たちも彼から命令を受けたと思っている。もし参謀長が自らの役目の範囲に引きこもり、敬意も、友情も、祖国や栄光への愛情でも司令官とつながっていなかったなら、組織は重苦しい動きしかせず、そして1人の人間が同時にあらゆる場所にいることは不可能であるため、司令官の意図を知らない故にアクシデントを解決できなくなる」
Les transformations de l'armée française, Tome Premier"http://books.google.co.jp/books?id=0VwaAAAAYAAJ" p189
 
 上記の本をまとめたトゥーマは、テュレンヌの下で参謀長として活躍したシャムレーに関する逸話を紹介したうえで「彼の果たした役割は、今日陸軍省の参謀総長に与えられたものではないか?」(p187-188)と指摘している。19世紀後半、既にベルティエやシャルンホルストどころか大モルトケより後の時代の人間が、そのように書いているのは重要だ。
 いずれにせよ18世紀以前の歴史における参謀については紹介されている割合があまりに少ない気がする。私自身も詳しいわけではないのだが、もっと18世紀以前の彼らの役割をきちんと知る必要があるやに思える。
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