最近サボり気味なんだが、一応ナポレオン漫画についていくつか。
まずはスタール夫人。彼女についてナポレオンが「フランスにおいてよりもその放浪中により多くの余の敵を作ってしまった」と発言したって話だが、そのものずばりの文章は見つけられなかった。最も近いと思われるのは以下の文言。
そしてルクレール。トゥーロンやイタリアで頑張っていたが、最近はすっかり影が薄くなっていた。最後に一応見せ場は用意してもらったものの、サン=ジュストのように史実を無視して生き延びられるほど強運ではなかったようで。というかこの漫画はどちらかというと史実より前に死ぬことの方が多いので、きちんと史実の時期まで生き延びただけでも立派なものか。セント=ヘレナのナポレオンはこの義弟について以下のように述べている。
「ルクレールは第一級の功績がある士官で、事務仕事でも戦場での機動においても同様に有能だった。彼は1796年及び1797年戦役にナポレオンの参謀副官として、1799年戦役ではモロー麾下の師団長として仕えた。彼はフライシンゲンの戦いを指揮し、フェルディナント大公を破った。ポルトガルに対抗して活動する意図で2万人の監視軍をスペインへと率いた。最後にサン=ドマングへの遠征において、彼は偉大な才能と活動力を示した。3ヶ月もしないうちに彼は、英国部隊への勝利によって名を挙げた黒人軍を打ち負かし服従させた」
Mémoires pour servir à l'histoire de France sous Napoléon, Tome Premier"
http://books.google.co.jp/books?id=lMBVuQqFAyoC" p202
ランヌやドゼーの評価がそうであるように、相変わらず早く死んだ部下に対する彼の評価は優しい。おまけに身内でもあったのだから、このくらいの発言は当然とも言えるかもしれない。しかし手放しで評価しているわけでもなく、この後にはルクレールに対する苦言が続く。
「ルクレールが彼[ナポレオン]の秘密命令の精神をきちんと実行していれば、多くの災厄を防ぎ多くの悩みと無縁でいられただろう。この命令で彼は有色人種に多大な信頼を置き、彼らを白人と等しい存在として扱い、有色人種の男性と白人女性の、及び有色人種の女性と白人男性の結婚を推進する一方で、黒人のリーダーたちに対しては全く逆の政策を追求するよう命じられていた。(中略)だがルクレールはムラート[白人と黒人の混血]に対する偏見を持たされ、彼らを黒人よりもさらに憎んでいたクレオール[植民地生まれの白人]たちの嫌悪感を共有した」
p203-204
遠隔地にいる部下の政治的対応を批判するのは、東方軍を率いたクレベールのムスリム対策について言及した時と同じである。軍人としての評価が高くても政治的な能力までは評価できないと思われていた点では、クレベールとルクレールは似ていたのかもしれない。
コメント