ラン成功率

 NFL関係の数字を見るとき、私は大体パス関連の指標を見る。パスと得点との相関性が高く、得点と勝敗との相関も高いから、というのが理由だ。しかしNFLのプレイはパスだけではない。ランもかなり高い比率で使われるプレイだ。にもかかわらずランをあまり取り上げないのはなぜか。
 まず、パス関連と違って「どの指標を取り上げればいいのか」が分かりにくい点がある。パス関係ならANY/Aという高い相関性を持つ指標がある。より一般的な指標でも、たとえばQBレーティングと得点の相関は結構高い。だがランになると、分かりやすい指標と得点との相関が低い。このあたりは前に取り上げた"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/51158955.html"ことがあるんだが、TD数という得点と直結している指標ですら、パス関係の相関性を下回っていた。
 そもそも、RBの能力としてよく示されるYPC(Yards per carry)ですら問題があることは、Advanced NFL Statsが指摘している"http://www.advancednflstats.com/2009/08/comparing-running-performance.html"。そこにあるグラフを見れば分かるが、大半のRBはリーグ平均とほぼ同じようなラン獲得ヤード分布を示している。YPCに違いを生じさせるのは、全プレイの1%程度(多くて2%強)しか占めていない「30ヤード以上のロングゲイン」なのだ。Tomlinsonはこの数字が1.5%、Bettisは0.46%であり、その差が両者のYPC(Tomlinsonは4.4、Bettisは3.9)につながっているという。
 以上のような理由でRBの指標はほとんど取り上げてこなかったのだが、一つだけRB関連の指標で調べていなかったものがある。それはSuccess Rateだ。Football Outsiders"http://www.footballoutsiders.com/info/glossary/"をはじめいくつかのサイトが独自のSuccess Rateを出しているが。要するにダウン数ごとにFDを取るために必要なヤードの何%を取れば成功とみなしたうえで、RBのプレイの何%が「成功」だったかを調べる方法だ。
 単純な獲得ヤードやYPCよりもRBの能力をよく表している、と指摘されることもあるこの方法。たとえば2011シーズン"http://www.footballoutsiders.com/stats/rb"を見ると1000ヤード超えを達成した選手でもMcCoyの51%からJacksonの39%まで結構幅があることが分かる。この指標が本当にRBの実力を示すなら、この指標と得点との相関も調べるべきかもしれない。
 と思っていたんだが、実は一足飛びにSuccess Rateと勝敗との関係を調べていた人がいた"http://www.stampedeblue.com/2009/3/23/807523/finding-the-winning-factor"。試合ごとのSuccess Rateについて8年分調べ上げた結果、平均は45.4%。その平均を上回ったオフェンスが勝利した割合は54.8%であり、一方平均よりよかったディフェンスの勝率も54.5%とほぼ同じだった。オフェンス、ディフェンス双方で平均超えのチーム勝率は59.0%。うむ、こりゃ冴えない。
 同じ人はパスのANY/Aについても似たような調査"http://www.stampedeblue.com/2009/2/18/762411/finding-the-winning-factor"を(こちらは13年分)しており、そこでは平均を上回ったオフェンスの勝率が70.3%、ディフェンスだと70.7%、そして両方平均を上回っていると実に89.1%の勝率が記録されたとしている。そう、Success Rateを使ってもやはり「ランの成績が勝敗に及ぼす影響はパスより低い」という結論になっているのだ。correlation coefficientを調べたものではないが、NFLではやはりランよりパスの方が圧倒的に重要なのは確かだろう(ちなみにプレイオフでも同じ傾向であることを、上記のblogでは指摘している"http://www.stampedeblue.com/2010/1/7/1237865/winning-stats-playoff-edition-what")。
 
 さて、そうなると気になるのは「ランプレイをすることに意味はあるのか」という点。言い換えるなら「なぜ全プレイでパスを投げないのか」という問題だ。
 単純に1プレイあたりのヤードを比較しても、ランが4.3ヤードなのに対しパスは6.3ヤードだ(2011シーズンの数字)。パスの方はインターセプトがあるからその分マイナスだとみなし、インターセプト1回をマイナス45ヤードとして再計算しても、その距離は5.4ヤード。やはりランより効率がいい。昨シーズンの1試合当たり平均獲得ヤードは346.8ヤードだが、ランプレイ(1試合27.3回)を全部パスにしたら1試合あたりの距離は約400ヤードに達する計算だ。
 だが、ランはなかなか減らない。2011シーズンはオフェンスプレイ全体のうち45%をランが占めていたが、この数字は10年前の46%に比べて1ポイントしか下がっていない。さらに20年前の1991シーズンまで遡っても47%。1981シーズンまで行くと51%になるので80年代(1978年のルール改正から間もない時期)には大きくランプレイが削減されたことが分かるが、その後の歩みは遅々としているのが実態だ。
 なぜランの比率が高いままなのか。Advanced NFL Statsではそれを説明する理由としてSuccess Rateの考えを導入している"http://www.advancednflstats.com/2010/10/how-coaches-think-run-success-rate.html"。コーチたちは成功の度合いまで見ていない。単に「成功したか失敗したか」までしか判断していない、だから「パスの結果生じる3種類の出来事のうち2つは悪い事態だ」という理屈が出てくるし、ランの生き残る余地もある。限られた時間で次のプレイコールをしなければならないコーチたちにとって、確かに「成功度合い」とか「期待値」まで計算するのは難しいだろう。
 ランプレイがパス確立のために役立っている、という理屈もあるだろう。たとえばプレイアクション。ランプレイを全くしないチームのプレイアクションにはあまり意味はあるまい。プレイアクションが普通のパスより効果的なら、ランプレイにもある程度の意味はあることになる。そして実際、Football Outsidersがまとめたデータ"http://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2012/2011-play-action-offense"によれば、プレイアクションは普通のパスよりも平均して1.3ヤード、DVOAで9.1%成績がいい。
 だが、パスプレイ全体の2割弱しか占めないプレイアクションで1.3ヤード稼ぐため、全体の45%をパスより2ヤードも短いランプレイに費やすのは、やはり損得で考えれば損に思える。Advanced NFL Statsも、Success Rateならコーチの動機は説明できるが、それでもパスをもっと増やした方が有利なのは間違いないという主張だ。パスプレイの比率が本来期待されるべき水準まで高まるのは、一体いつのことだろうか。
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コメント

No title

rot*on*li*ht
確かにランプレイは無駄が大きいプレイですよね。
個人的には後1ヤード以下でFDのときの押し込みプレイ以外は失敗前提でやっているとしか思えないのですが、ランでのビッグプレイに花があるのもまた事実・・・・
まあ効率的でないがゆえに花形なのかもしれませんが(汗

No title

desaixjp
数字的な理屈だけで言うのなら、パスとランそれぞれの期待値が同じレベルになるまでパスの比率が高まらないといけないんですが、なかなか人間のやることは理屈通りにはいきません。
それに個人的にもランプレイは嫌いではありません。プルアウトやトラップといった戦術も見ていて楽しいですし、ショートヤードの激突も見ごたえのあるものです。興業として考えるなら、ランプレイが多いのも筋は通っているのかもしれませんね。
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