ふと気づいたらダルビッシュの成績がえらいことになっている。WHIPは1.51で、アメリカン・リーグのピッチャー52人中45位。日本にいた時のWHIPが0.98だった選手の成績とはとても思えないレベルの数字になっている。最大の問題は与四球のようで、9イニングあたりの与四球数は5.45とこちらは52人中50人。うん、こりゃ酷い。日本時代の成績からは想像もつかない状況である。
NPBで圧倒的だったエースもMLBでは普通の、指標によってはむしろダメな部類の投手にすぎない、そこまでNPBとMLBには大きな差がある、と考えるべきなんだろうか。それともこれはダルビッシュ固有の特殊な問題に過ぎないのか。それを調べるため、wikipediaに載っているMLBの日本人選手を対象に、NPB時代とMLB時代のWHIPを比較してみた。WHIPにしたのはwikipediaに数字が載っているから。NPBでのWHIPからMLBのWHIPを差し引いた数字の大きい順に並べると、以下のようになる。数字は左からNPBのWHIP、MLBのWHIP、両者の差だ。
村上雅則 1.24 0.99 +0.25
斎藤隆 1.24 1.03 +0.21
大家友和 1.54 1.39 +0.15
黒田博樹 1.27 1.19 +0.08
建山義紀 1.16 1.09 +0.07
岡島秀樹 1.31 1.25 +0.06
高橋建 1.40 1.35 +0.05
高津臣吾 1.27 1.23 +0.04
上原浩治 1.01 0.98 +0.03
長谷川滋利 1.33 1.33 0.00
高橋尚成 1.26 1.27 -0.01
吉井理人 1.34 1.36 -0.02
野茂英雄 1.32 1.35 -0.03
佐々木主浩 1.01 1.08 -0.07
伊良部秀輝 1.32 1.40 -0.08
多田野数人 1.29 1.42 -0.13
大塚晶則 1.01 1.16 -0.15
小宮山悟 1.30 1.50 -0.20
藪恵壹 1.26 1.47 -0.21
石井一久 1.31 1.53 -0.22
川上憲伸 1.15 1.40 -0.25
小林雅英 1.20 1.45 -0.25
松坂大輔 1.14 1.40 -0.26
木田優夫 1.33 1.60 -0.27
マック鈴木 1.64 1.91 -0.27
マイケル中村 1.06 1.46 -0.40
柏田貴史 1.26 1.69 -0.43
薮田安彦 1.32 1.82 -0.50
井川慶 1.24 1.76 -0.52
五十嵐亮太 1.18 1.71 -0.53
桑田真澄 1.23 1.90 -0.67
野村貴仁 1.28 2.12 -0.84
福盛和男 1.38 3.75 -2.37
同じWHIPといっても先発、中継ぎ、抑えのどれをやっているかで数字は変わる可能性があるし、DHのあるア・リーグかDHのないナ・リーグかでも違いは生じるだろう。だから単純にこの表だけで個別選手の成績について色々と決め付けるのは難しい。それでも言えることはある。何よりNPB時代より成績が落ちる投手が多いことは明白だ。MLBで100イニング未満の投手を除けば少しはよくなるが、それでも成績の上がった選手5人に対して下がった選手は11人に達する。
MLBでのイニング100以上の選手で、NPB時代に比べ最もWHIPが悪化したのは松坂。逆に最も良くなったのは斎藤隆だ。斎藤の他に黒田や岡島、上原らの存在から、日本人投手の中にMLBに適応できる能力の持ち主がいることは間違いない。一方、松坂や川上、あるいは極端な例では井川など、どうしてもうまく適応できない投手がいることもまた事実だ。問題はどちらに転ぶのか。それを見分けるコツがあるのかどうかは分からないが、今のままだとダルビッシュは後者になりかねない。
かように投手は(MLBへの適応という点で)水物なんだが、打者についてはもう少しはっきりとした傾向が窺える。同じくwikipediaを使い、OPSを調べてみると以下のようになる。数字は左からNPB時代のOPS、MLBでのOPS、増減率(パーセント)だ。
田口壮 0.716 0.717 +0.1
新庄剛志 0.736 0.668 -9.2
井口資仁 0.824 0.739 -10.3
松井稼頭央 0.830 0.701 -15.5
イチロー 0.943 0.791 -16.1
松井秀喜 0.996 0.830 -16.7
城島健司 0.867 0.721 -16.8
岩村明憲 0.866 0.720 -16.9
福留孝介 0.940 0.760 -19.1
西岡剛 0.790 0.527 -33.3
中村紀洋 0.831 0.350 -57.9
田口という例外を除けば軒並みNPB時代より成績が下落している。西岡や中村はMLBでの打席数が極端に少ないのでそれを外せば、落ち込み率自体もほぼ10~20%の幅に収まっており、中でも松井稼から岩村までの選手たちはさらに極端に似通った下落率を示している。つまり打者の成績はかなり似たような成績範囲に収まってしまうのだ。NPB時代の成績を見れば、大体MLBでの活躍度合いも想像できるってことになる。
こちら"
http://en.wikipedia.org/wiki/On-base_plus_slugging"によれば、平均以上の評価が欲しければOPSは0.7667は必要ってことになる。日本人選手の場合、NPB時代より余裕をもって2割の成績低下があると考えるなら、NPBでのOPSは0.958くらいはないとMLBでは平均以上の評価を得られない計算だ。
2011年からNPBは飛ばない統一球を使っているので単純な比較は難しいんだが、今年の成績だとセ・リーグのバレンティンくらいしか条件を満たしている選手はいない。レベルを0.9まで下げてもブランコ、阿部、稲葉の3人が加わるくらいだ。NPBの投手の中にはMLBで通じる選手もいるかもしれないが、打者に関してはレベルが違うといわれても仕方ないように見える。
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