リハビリ兼ねてナポレオン漫画の話を。しばらく書いていなかったので数話分ふっとばしているが、どうせ戦闘シーンのない場面ばかりだからいいと判断して適当に目に付いたものを。
まずは「休んでるヒマは無いぞ」。有名な例としては当時の政治家であったレーデラーの残した記録がある。彼によれば「ある日の午前2時、会議の席で陸軍大臣が居眠りをした。何人かのメンバーも疲労でぐったりしていたのを見て彼[ボナパルト]は言った。『さあ市民諸君、目を覚ましたまえ。まだ2時だ。フランス人民のために働こうではないか』」(Oeuvres du Comte P. L. Roederer, Tome Troisième."
http://books.google.co.jp/books?id=kUrluGZinUoC" p382)という場面があったそうだ。
続いてレジオン=ドヌール。1854年に出版されたLa Légion d'honneur"
http://books.google.com/books?id=QEas7aKMDaMC"では「1802年5月4日、第一執政の命により、レーデラーは彼が所属する国務院でレジオン=ドヌール制度の法案を読み上げた(p7)と記されている。多分これが史実なんだろうが、それを裏付けるものがなかなか見つからない。
たとえば1802年に発行された新聞だか雑誌だかをまとめたこちらの本"
http://books.google.co.jp/books?id=9JBHAAAAYAAJ"でレジオン=ドヌールへの言及が出てくるのは、1802年5月25日発行分がおそらく初めてだ。パリ発5月18日付として書かれている記事の中に「最後である4番目の法案はレジオン=ドヌールに関するもの」と書かれている。レジオン=ドヌールを授与する対象についての議論がなされているようなので、この時以前に制度自体は成立していたと思われるが、それがいつなのかは分からない。
ナポレオンの書簡集、第7巻"
http://books.google.com/books?id=EHAPAAAAQAAJ"にはレジオン=ドヌール制度の内容が記されているが、その日付は5月14日だ(p461)。もしかしたら4日に国務院に法案が提示され、この14日に正式に施行されたのかもしれない。もっと細かく調べれば成立過程も分かるかもしれないが、そこまでする気力は無いのでこのくらいにしよう。
「ランヌ将軍は完全に面目を失った。彼はポルトガル大使館へと流された。不幸なことに彼はリュシアンの後でそこに到着することになる。そこで一財産を作るにはもう遅すぎるだろう。ぶどうが摘まれてしまえば、籠とはおさらばだ」
p104
「ランヌ将軍に関しては、テュイルリー宮との関係回復を明確に成し遂げた(中略)。ランヌは既にリスボンへの途上についている。親衛隊の赤字を埋めるためにオージュローはかなりの額を提出しており、オージュローに対するランヌの支払いを容易にするため、彼があらゆる種類の商品を輸出入する際に大使としての職務を無制限に活用できるよう認可が与えられた」
p448-449
ランヌが「面目を失った」理由については書かれていないが、後で親衛隊の赤字が問題になっていることが分かるため、基本的にマルボの話と平仄は合っている。オージュローが赤字の穴埋めをしたことも指摘しており、これもマルボと同じだ。
漫画ではこのランヌの話に、タレイランが金儲けをたくらんだ「ベルギー国債」の話を絡めて「ノワール」っぽく仕上げている。で、このベルギー国債に関する話なんだが、こちらは少し長くなりそうなのでまた次回に。
コメント