NFL Probowl

 Probowlは予想通り酷い点の取り合いになった。両チームともパスの獲得ヤードは500ヤード近くに達し、好き放題に空中戦を繰り広げた模様。ある意味、今のNFLらしい試合になったと言える。
 今年は結果よりも選手選定の方が注目点だろう。特にCam Newtonの選出は特にDetroitファンやDallasファンの間で色々と論議を呼んでいた。Newtonが新人離れした成績を収めたことは事実。その実績はドラフト全体1位としても文句のないレベルに達していた(こちら"http://harvardsportsanalysis.wordpress.com/2011/11/30/how-to-value-nfl-draft-picks/"によればドラフト全体1位として期待されるのはBrad Johnson、Rodney Harrison、Corey Dillon並みの成績だそうだ)。だが、それだけでProbowlに選ばれるにふさわしいと言えるだろうか。
 異論が出るのは当然だ。何しろ今年のNFCはQBのレベルが高かった。ビッグ3の一角を占めるRodgers、Breesはもとより、本来のProbowlメンバーであるEli Manning、そしてRomoとStaffordの2人も明らかにNewtonを上回る成績を残している。Manningがいなくなった後の補欠としてふさわしいのは、普通に考えればRomoかStaffordのどちらか。よりパッサーとしての成績が上のRomoか、あるいはプレイオフに出たStaffordかといった差はあるとしても、2人のいずれかが選ばれたのならそれほど問題にはならなかっただろう。
 にもかかわらずNFLはNewtonを選んだ。なぜか。新人として歴史に残る記録を打ち立てたというのが理由の一つかもしれない。しかしそれでは納得のいかないファンも多いだろう。新人だろうがベテランだろうが同じプロ。プロならプロらしくその実績でProbowlに出る選手を選ぶべきだとの見方は当然ある。Newtonが出られたのは新人分のゲタを履かせてもらった結果だとしたら、それはむしろ彼にとって失礼な行為とも言える。
 別の視点もある。Newtonが残したラッシング記録だ。彼はQBでありながら706ヤード(126キャリー)を記録している。QBとしてはシーズン最長だ。ラッシングだけなら少ない試合数で660ヤードを記録したTebowの方が凄いともいえるが、Tebowはパスの方がダメダメ。一方、RomoやStaffordはパスでは勝っているがランについては前者が46ヤード、後者が78ヤードにとどまっており、Newtonの足元にも及ばない。ラン、パス双方を勘案すればNewtonは十分Probowlにふさわしい、という理屈もありうる。
 現代NFLにおいてQBの役割は明確にパスに絞られており、正直言ってランのメリットはほとんどない。だがProbowlのQBを選ぶ際に「パス以外は全面的に無視する」という基準があるわけでもないだろう。歴代QBのラン記録でシーズン700ヤードを超えたことがあるのはVickとCunninghamの2人しかいない(Vickは複数回記録している)ことを踏まえるなら、ランで彼らに匹敵しパスでは彼らを超える4000ヤード超を記録したNewtonはProbowlにふさわしい、と考えられたのかもしれない。
 
 もう一つ、ここから先はほとんどただの妄言だが、AFCの選手選定が影響した可能性がある。AFCではRiversとRoethlisbergerは確定だったが、BradyがSuper Bowlに出場し補欠の選定が必要となったことで厄介な問題が生じた。NFCに比べてQB不作だった今年のAFCでは、補欠として考えられる選手がNFCほど豊富に存在しなかったのだ。はっきり言うならFlaccoとDaltonしかいなかった。
 Schaubが怪我していなければ彼が問題なく選ばれていただろう。その場合、NFCでNewtonを出すのは難しかったかもしれない。AFCがいずれも実績重視の優れたパッサーを出すのに、NFCに1人だけ新人のモバイルQBが出てくるのは違和感がある。NFCに他に実績あるQBがいないのならともかく、RomoとStaffordという立派なパッサーがいるのだから、彼らのうちのどちらかを選んだ方がいい、という流れになっていたかもしれない。
 だがAFCにはFlaccoとDaltonしかいなかった。そしてこのうちDaltonを選ぶとするなら、新人として彼より明らかに成績が上のNewtonが出てこないのは却っておかしな話となる。パス成績でもラン成績でも明らかに劣る方がProbowlに選ばれ、より優れた方が出てこないのは変だとの指摘が当然あるだろう。Daltonが選ばれるのならNewtonも出てこないと釣り合いが取れない。
 ならDaltonではなくFlaccoを選べばどうなるか。QBレーティングやANY/AではFlaccoの方がDaltonより少し上だ。一方、DVOAで見ればDaltonの方がFlaccoより評価が高い。微妙なところではあるもののFlaccoが選ばれても別におかしくはなかっただろう。その場合、NFCではNewtonを選べなくなる。AFCの方で実力上位のQBを選んでいるのに、NFCはStaffordやRomoをすっ飛ばしてなぜNewtonを選ぶのかとの批判が今より強くなっただろうから。もしAFCでFlaccoが選ばれていれば、NFCは順当にRomoかStaffordが出ていたと思われる。
 でも「Flaccoでなければならない」と言うほどFlaccoの成績がDaltonを大きく上回っていたわけでもない。AFCだけ見るならDaltonが出ても不思議はなかった。だったらいっそDaltonを選び、同時にNewtonも投入することで話題と論争の種を提供する方が興行としては正しい、との考えがNFLになかったと言えるだろうか。ただでさえProbowlは緩いお祭りゲームである。しばしば怪我を理由に回避するスター選手もいるくらいだ。そんなProbowlの盛り上げ策として新人QB2人の投入は効果が期待できると、NFL首脳が考えた可能性はある。
 もしそうだとしたら、今年のProbowlのQB選出は多くの偶然が重なった結果となる。両ConferenceのQB成績がもう少し均衡していれば、あるいはSchaubが怪我していなければ、Daltonに出場のチャンスはなく、Newtonも出るのは難しかっただろう。ChampionshipでSan Franciscoが勝っていればそもそも補欠選出自体なかった。あるいはBaltimoreが勝っていた場合も同様。そうなればDaltonの出場はなくなり、Newtonを補欠に選ぶのも難しくなっていただろう。
 
 実際のProbowlでは、Daltonがレーティングで152.1、ANY/Aで15.4、3番手登場ながらゲームの行方を決定付ける後半のドライブを演出したのに対し、Newtonはレーティング43.7、ANY/A3.0、3つのインターセプトを喫し、パス成功率は3分の1にとどまるという散々な成績だった。シーズン実績とは逆に、この試合ではDaltonの方がProbowlerらしいプレイを見せたことになる。もしNFLがNewtonを出したいがためにDaltonを投入したのだとしたら、何とも皮肉な結果に終わったことになる。
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