用事が終了したのでblogもぼちぼち復活。といってもナポレオンもNFL関連もろくにチェックできていないので、その手の話はいずれそのうち。今回はまたもやただの妄想話で埋めておく。
二足歩行ロボットは地上での戦闘においては役に立たない、という話が時にミリオタの間で語られているようだ。こちら"
http://mltr.ganriki.net/faq09t.html#walking-weapon"に簡単なまとめがある。ま、当然だろう。robustであることが求められる兵器に、脆弱な「脚」をわざわざ使うメリットなどない。それでも二足歩行ロボットに戦争をさせたいのなら、いっそ物理法則の方を捻じ曲げることを検討すべきかもしれない。
といってもどんな物理法則をどう捻じ曲げれば、脚の方が車輪や無限軌道より「使える」ようになるのかは正直想像がつかない。脚の方が開発・生産・運用・保守コストが低く、燃費もよく、速度も速く、頑丈で使い勝手に優れている存在にするために、求められる物理法則の変更はおそらくとんでもなく多岐に渡ってしまうんじゃなかろうか。その結果、下手したら人間の格好をした生物には、いやそもそも生物にとっては生存自体が困難な世界になっているかもしれない。
どうも物理法則を捻じ曲げるやり方は難しそうだ。私自身の知識不足まで踏まえるならこの方面の追求は時間の無駄だろう。という訳で別の選択肢を検討しよう。それは、上のまとめにもある通り脚が車輪より有利になる「ごく限られた状況」を可能な限り拡大するという方法だ。具体的には全地表がこの「ごく限られた状況」になっている地球以外の惑星(重力の問題などで話をややこしくしないため地球程度のサイズの方が望ましい)を想定し、そこを戦場にすればいいのだ。なに、SFでは変な星が舞台になるのはよくあること。
さて、脚の方が無限軌道より有利な状況とはどんなものか。上のまとめでは現代のMBTの走破性について「超壕能力は2~3m,超提能力は約1m,渡渉能力で2~3m,登坂角約30度といったところ」とまとめている。これより厳しい条件が全地表に広がっている惑星を考えれば、そこは現代MBTにとって対応の困難な地域となり、そして超壕能力云々でMBTより少しでも優れた数字を出せる脚を持った兵器が存在すればそちらの方が使える戦場になる、かもしれない。
どんな星が考えられるだろうか。たとえば惑星上の全地表に幅4メートルの水路が網の目のように張り巡らされている一方で、道路や橋などは存在しない星はどうか。水路の幅がMBTの超壕能力や渡渉能力を超えているため、MBTは水路で囲まれた狭いエリア内でしか活動できない。一方、ガンダムクラスの大きさ(頭高長18メートル)を誇る二足歩行兵器なら、この幅の水路は簡単にまたぐことができるだろう。やったね、これで二足歩行兵器が全面的に活躍する舞台が整ったよ。
んなわけない。橋がないなら予め橋を架けまくればいいだけだ。機甲部隊と一緒に架橋部隊を行動させる手もある。既存のMBTをもう少し能力アップさせ、超壕能力・渡渉能力が4メートル強のMBTを開発・生産・配備する方法だってある。逆にここまで水路が充実しているのなら、MBTではなく火力を搭載した砲船を使って自在に行動させるという発想もありかもしれない。つまりこの星には、確かに事前の準備は面倒だが、既存の兵器体系を大幅に変えるべき必要性までは感じられない。
では超提能力と登坂角の方で縛りをかけてみたらどうだろう。星全体に高さ2メートル、登坂角45度の堤防が網の目のように以下略。もちろん、実際にはこちらも対応は簡単。予め堤防の一部を破壊するか、一部に登坂角を緩やかにするよう土を盛るなどの方法で融通は利くはずだ。事前の準備なしでいきなりこの星に軍隊が投入された場合であっても、土木機械を持ち込んだ工兵に作業させれば短時間で堤防の一部を突破することは可能。また、真っ直ぐ上った場合の登坂角が45度であっても、斜めに登るようにすればもっと緩い角度になる。要するに工夫次第でどうにでもなる。
もし本気でMBTを使えないようにしたいのなら、張り巡らされた堤防の角度は軒並み90度、つまり垂直になっているくらいの前提にしないと難しいだろう。高さも当然2メートル以上は欲しい。できれば5メートルくらいあると「ガンダムなら簡単にまたげるがMBTで超えようとすると時間がかかる」という状況が達成できる、かもしれない。
私が考えた極端な地形の事例として、柱状節理で見られるような六角柱の柱が地表全体を覆うように林立している、という星がある。正六角形をしている1つの柱の上部は水平で、柱の側面は全て鉛直(垂直)だ。柱の高さは様々であり、隣の柱との間には大半のケースにおいて軽く2メートル以上の高低差が存在する。一つ一つの柱の上部面積が狭い場合、例えばMBT1台が置かれるとそれだけで大半が埋まってしまうくらいの面積しかないとすれば、この地形はMBTにとって結構厳しい。さて、この星なら二足歩行兵器が活躍できるだろうか。
実際には難しいだろう。現実に観測される現象を踏まえるなら、こんな地形はすぐに風化と侵食を受けてしまうからだ。星のサイズが地球並みってことは、間違いなく大気はある。だから六角柱は必ず風化する。水など液体が存在すれば侵食の影響も受けるだろう。垂直の柱が林立しているような地形は、風化と侵食によって(星の歴史という観点からは)あっという間に崩壊してしまう。もっと緩やかな角度の地形に覆われた土地に変わり、そこではMBTの方が活躍できる。
風化と侵食を受ける前に戦争が行われればいい、という指摘はあるだろう。だが惑星の全地表でこの地形を成立させるためには、この地形が出来上がる事象が惑星全表面で一斉に生じ、その直後に戦争が始まるというかなり特殊な条件を達成する必要がある。一般的な柱状節理は溶岩が急速に冷えることで出来上がるが、柱状節理の場合には出来た時点で一つ一つの柱に高低差はない。
それに、そもそも風化や浸食の影響を受ける時点でこの地形はMBTの行動を止められない。何らかの偶然でこの地形が残ったまま戦争が始まったとする。その場合は大気や液体の代わりに、工兵部隊が風化・浸食作業を急ピッチで進めてくれるだろう。要するに人間の手で破壊できる程度の強度しか持たない地形に、MBTの行動を防いで二足歩行兵器に活躍の場を与えることなど期待するのが間違っているのだ。
どうしても二足歩行兵器の方が有利な地形にしたいのなら、ちょっとした風化や浸食など平気で跳ね返し、人間による破壊活動にも耐えるほど頑強な六角柱が立ち並ぶ地形にしなければならない。そんな頑丈すぎる物質が存在するのか、そんな物質が六角柱の形状で地表に聳え立つことは可能なのか、いやそもそもどんな原理でこんな素っ頓狂な地形が成立したのか、そのあたりの理屈を考えておく必要があるんだろう。
一つのアイデアとして、既に滅亡した古代文明の遺産という方法がある。六角柱で地表を覆ったのも、その柱を簡単には破壊できない強固な物質組成にしたのも、要するに古代の優れた文明のロスト・テクノロジーなのである。さらに恐ろしいことに彼らは、風化や浸食を短期間で修復する能力を持っているナノマシーンまで生み出しており、このナノマシーンは未だに活動を継続していた。何で古代文明がこんな奇妙な星を作ったのか、その理由は不明だが、結果としてこの星はMBTや無限軌道にとって極めて相性の悪い星になったのだ。ちゃんちゃん。
人跡未踏の惑星に残された古代文明の遺産なんて、要するにトンデモ系と同じオカルトじゃないかと言われればそれまで。つまりそのくらい怪しい前提条件まで投入しないと、脚を持つ兵器が無限軌道を持つ兵器に取って代わるための地形的条件を整えることは難しいのだ。それに、たとえ地形的条件が整ったとしても、それがそのまま脚を持つ兵器の活躍につながる保証はどこにもない。そのあたりの妄想話は次回に回す。
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