Football Outsiders"
http://www.footballoutsiders.com/"のFootball Outsiders Almanac 2011が出版された。PDF版を購入して読んでみたが、今年最大の「驚き」はIndianapolisの予想だろう。同書では各チームの予想勝利数について平均と分布とを示しているのだが、今年のIndyの予想勝利数は平均たった7.8勝、つまり勝率5割を切っているのだ。分布を見ても8勝以下の可能性が約6割。過去12年間に11回勝ち越し、直近9年間はずっと10勝以上を記録しているチームに対する、実に大胆な予想だ。
理由はドラフトにある。Indyがドラフト中心に作られたチームであるのは有名。そしてそのドラフトは、20世紀末から21世紀初頭にかけては大成功だった。1996年から2002年まで、1巡指名した8人の選手のうち7人は複数回プロボウルに選出されたという。2003年に指名されたDallas Clarkもプロボウルに1回選ばれている。これだけドラフトが成功すればFAでベテランと契約する必要はほとんどない。実際、2003年以降の大きなFA契約はCorey SimonとAdam Vinatieriくらいしかない。
だが、その後が続かなかった。2004年以降に1巡で選ばれた5人のうちプロボウルに出たのはAddaiが1回だけ。そのAddaiにしてもプロボウルに出た年以降は一度もシーズン1000ヤードを超えていない。また1巡指名のない年も多く、かつてドラフトした有能な選手たちが高齢化に伴って能力が衰え、さらには引退するようになってその穴が埋まらなくなっているという。今やIndyは"merely an average team"でしかない、というのがFOA2011の指摘だ。
チーム力がaverageなら、スケジュール次第で大体の成績は決まる。今年のIndyの対戦スケジュールはリーグで10番目に厳しいというのがFOA2011の指摘であり、であれば勝ち星が5割を切る可能性が高いのも仕方ないだろう。もちろんPeyton Manningというリーグ史上最優秀なQBがいるのは強みだが、その彼でさえもう35歳。周りで支えるプレイヤーが減り続ける一方では、できることにも限界があるだろう。
以前、IndyのドラフトはNew Englandよりずっと上手く行っていると指摘したことがある。それだけに安定した成績を残せた面もあるわけだが、でもPolianですらUgohのようにドラフトで失敗することはある。となるとドラフトだけに頼ったチーム作りは、結構ハイリスクハイリターンなんだろう。New Englandはドラフトが冴えない時期にやたらとFAでベテランを取りまくっていたが、そうしたアプローチの方が全体としてリスクを抑えるのには向いているのかもしれん。FOA2011はIndyに対し、従来までのアプローチを変えるよう提言している。
Indyが負け越す結果、AFC南の覇者になると予想されるのがHoustonである。もしかしたら苦節10年、初のプレイオフが見えてくるかもしれない。例年酷い有様だったディフェンスに今年は上向きの兆しが見えているのが理由だとか。特にDCとなるWade Phillipsには期待できると見ているようだ。他にAFCで地区優勝が入れ替わるのは西だが、Kansas Cityが連覇できると思っていた人はほとんどいないだろうからここは別に驚きではない。それも含めAFCのプレイオフ予想は以下の通り。
Pittsburgh 13.0
New England 11.5
San Diego 10.6
Houston 9.0
Baltimore 9.4
New York Jets 9.3
Houstonを除けば代わり映えのしない面々だ。4チームが昨シーズンと同じであり、AFCのパワーバランスに変化がない様子を窺わせる。ちなみにPittsburghの勝ち星がやたらと多いのは単にNFC西とのスケジュールが組まれているためだろう(スケジュールは楽な方から3番目)。4番目に厳しいスケジュールで11.5勝を予想されているNew Englandとの実力差はあまりなさそうである。
NFCで地区優勝が入れ替わるのは北(Green Bay)と西(San Francisco)。とはいえ北は元々Green Bayの方が強いと見られていたからそれほど違和感はない。San Franciscoの予想勝数は7.5となっており、San Franciscoが強いわけではなく同地区のレベルが低すぎるだけであることが分かる。というか下手すると2年連続で勝率5割未満チームがプレイオフに出てくる事態になる可能性がある。そうなったら流石に制度を見直せって声が強まるだろうな。プレイオフ予想は以下の通り。
Philadelphia 11.7
Atlanta 9.7
Green Bay 9.4
San Francisco 7.5
New Orleans 9.5
Chicago 8.9
呆れたことにNFCはAFCよりさらに入れ替わりが少ない(SeattleがSan Franciscoに変わるだけ)。Football Outsidersの予想といえばプレイオフチームが半分くらい変わると言明することが多かったように思うんだが、これはどうしたことだろう。AFC同様にパワーバランスの固定化が進んでいるのか、それともFootball Outsidersの予想が上手く働いていないのか。いずれにせよ、本当にこの予想通りになったら流石につまらんと思う。
FOA2011ではルーキーのうちQB、RB、WR、パスラッシャーについてプロでの活躍期待度を示している。うちQBについては3巡以上で指名された7選手が対象だが、最も期待されているのがAndy Dalton、次がColin Kaepernickで、それ以降は正直さえない数字が並んでいる。つまり1巡指名(及び3巡のMallett)はダメってこと。中でも最悪予想なのはもちろんNewtonだ。
こちらのサイト"
http://subscribers.footballguys.com/apps/depthchart.php"などで紹介されているdepth chartsを見る限り、ルーキーQBですぐにでも先発が予想されているのはDaltonとNewtonくらい。最良と最悪がのっけから出てくるってのも面白そうだ。他の面々のうちKaepernickあたりはすぐに出番が来そうだし、GabbertやPonder、Lockerは先発が不調なら機会があるかもしれない。Mallettはよほどのことがない限りサイドラインだろう。
FOA2011には厳しい評価がされているNewtonだが、それでもCarolinaが彼に期待をかける気持ちは分かるしそれを否定する気はない。ルーキーは化ける可能性がまだ残されているからだ。それに対し、Tarvaris Jacksonを先発にしたSeattle、BeckとGrossmanなど有象無象が先発を争っているWashingtonなどは本当に大変そう。Fitzpatrickに引き続き任せるBuffalo、CampbellのバックアップにBollerやEdwardsを置いているOaklandあたりも見通しはよろしくない。完成度の高いチームを引き継いでも大したことができなかったPete Carrollが、再建モードに入っているチームをきちんと導けるかどうか、まあ生暖かく見守るとしよう。
コメント
No title
ちなみに、2010年版が日本のアマゾンで在庫処分セール中です。
2011/09/02 URL 編集
No title
お読みになったのならご存知でしょうが、今年もPhiladelphiaは高評価です。本当にFootball Outsidersのスタッツ分析手法はPhladelphiaが好きなようですね。
2011/09/11 URL 編集
No title
日本でも人気が出てコンスタントに買える様になると良いのですけれど、一体何人が読んでるのやら・・・
2011/09/21 URL 編集
No title
この手の本が日本で人気が出るようになるには、まずNFLが今よりメジャーになる必要があるんでしょうね。その次にFantasy Footballがずっと広くプレイされるようになれば、こういう数字分析に頼る人も増えてくるように思います。随分と道は遠い気がしますが。
2011/09/21 URL 編集