都市圏と強さ

 プロスポーツにおいては人口の多い、経済力のある地域に拠点があるチームほど強い。この傾向はどの程度窺えるだろうか。世界各地のスポーツを参照しながら調べてみる。
 まずは米国。年間動員数が最も多いMLBではワールドシリーズ優勝最多を誇るYankees(27回)はもちろん米国で最多人口を誇るニューヨーク都市圏(こちら"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_United_States_metropolitan_areas"のデータでは1900万人弱)のチームだ。一方、2番目に優勝回数が多いCardinals(10回)は全米18位の280万人とそれほど多くないが、3位のAthletics(9回)と4位のRed Sox(7回)はそれぞれ11位と10位(400万人台)を抱えており、日本でいえば北九州・福岡大都市圏に次ぐくらいの規模はある。ある程度の人口がないと強豪でいられない可能性は高いと見ていいだろう。
 サラリーキャップを敷いているNFLは後回しにして、NBA"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_NBA_champions"を見れば最も多いのがCelticsの17回で、Lakersの16回がそれに次ぐ。Celticsのいるボストンは都市圏リストでは10位、Lakersのロサンゼルスは2位とこれまた人口の多いところが主役だ。NBAはNFLに比べれば緩いサラリーキャップ制度を敷いていると言われるが、やはり人口の多いチームが全体には強さを見せている。
 NFLはプロリーグの中で最も早くドラフト制度を取り入れ、さらに厳密なサラリーキャップも採用するなど、戦力均衡化に異常なまでに力を入れているかなり特殊なプロスポーツだ。そのせいか、Superbowl"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Super_Bowl_champions"の優勝回数最多を誇るSteelersは都市圏人口235万人、全米22位というそれほど規模の大きくない都市だ。ただしここでも2番手にはCowboys(都市圏人口4位のダラス)と49ers(同11位のサンフランシスコ)が入っており、人口の多い地域で上位に顔を出すところもある。それでも他のスポーツよりは圧倒的に小規模都市が強いリーグだろう。Superbowl以前のNFL Championまで含めればトップにGreen Bayが躍り出るくらいだから、かなり特殊なリーグである。
 
 次に欧州のサッカーリーグを見てみよう。特に観客動員力のある4カ国、イングランド、スペイン、イタリア、ドイツについて調べる。サッカーの世界にはドラフトやらサラリーキャップやらといった仕組みがないため、地域の経済力がより明確に現れる可能性がある。
 まずイングランド。プレミアリーグ設立後はマンチェスターユナイテッドが12回、アーセナルとチェルシーが3回ずつ優勝している。マンチェスターは都市圏人口"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_metropolitan_areas_in_the_United_Kingdom"では英国3位、アーセナルとチェルシーはいずれもロンドン(人口1位)のチームであり、明確に人口=経済力=戦力の傾向が見て取れる。ちなみにビッグ4のもう一つリヴァプールは、プレミアリーグ設立以降1度も優勝していない。リヴァプールの都市圏人口は全体5位の224万人。プレミアリーグ以前の優勝回数まで含めれば"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_English_football_champions"マンチェスターに次ぐ18回を記録しているのだが、経済力がものを言う最近の情勢下では厳しいのかもしれない。
 次にスペイン"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Spanish_football_champions"。こちらはレアル・マドリードが31回でトップ、次がFCバルセロナの20回で、3位にも首都のチーム、アトレティコ・マドリード(9回)が入っている。そして都市圏人口"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_metropolitan_areas_in_Spain_by_population"ではマドリードが526万人でトップ、次がバルセロナ(425万人)で3位以下はこの2大都市圏から大きく離されている。イングランドよりもさらに徹底した大都市優位なリーグだ。
 イタリア"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Italian_football_champions"ではトリノに拠点を置くユベントスが27回で最も多く、次はACミランとインテルナツィオナーレ・ミラノがそれぞれ18回で並んでいる。トリノは人口でイタリア4位、ミラノは2位だ"http://en.wikipedia.org/wiki/Metropolitan_areas_in_Italy"。こちらも比較的上位には人口の多い都市が顔を出している。ただローマやナポリのチームは弱く、スペインやイングランドに比べればまだ相対的にマシな感じもある。
 人口最多の首都があまり勝てないのは、イタリアが19世紀まで事実上分裂していたことが影響しているのかもしれない。それだけ地方の勢力が強い可能性がある。同じ傾向が見えるのはドイツ"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_German_football_champions"。ここではバイエルン・ミュンヘンが22回の最多で、次はニュルンベルク(9回、ただし最近は低迷)で以下シャルケとボルシア・ドルトムント(7回)が続く。人口で見ると"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_metropolitan_areas_in_Germany"ミュンヘンは国内5位、ニュルンベルクは9位で、シャルケとドルトムントのいるルール地方は1位だ。
 なお上の4カ国に比べるとフランスのプロリーグは動員力が低い"http://european-football-statistics.co.uk/attn.htm"。一応優勝回数を調べてみる"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_French_football_champions"と、サン=テティエンヌとマルセイユが各10回、ナントが8回、モナコとリヨンが7回など、かなりバラけている。フランスは極端な一極集中国"http://en.wikipedia.org/wiki/Metropolitan_Area_(France)"で、トップのパリが1000万人を超えている一方、2番手のリヨンはたった175万人しかいない(日本で言えば岡山より少し大きい程度)し、100万人超の都市圏はたった5つ。普通ならパリのチームに優勝が集中してもおかしくないんだが、他の4カ国ほどサッカー人気がないため経済力=戦力になっていないのだろう。Jリーグと似ているとも言える。
 
 その日本で経済力=戦力となっている分かり易い例はもちろんプロ野球。優勝回数"http://en.wikipedia.org/wiki/Nippon_Series"を見ればジャイアンツが21回でトップ、ライオンズが13回優勝(うち10回は埼玉が拠点)、そしてヤクルトが5回だ。都市圏人口"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_metropolitan_areas_in_Japan_by_population"トップの首都圏に優勝が集中しているのが一目瞭然。首都圏以外での優勝は京阪神が7回(ブレーブス=ブルーウェーブ4回、ホークス2回、タイガース1回)、福岡が5回(ライオンズ3回、ホークス2回)、広島3回、札幌と中京が各2回だけだ。
 Jリーグでは"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Japanese_football_champions"プロ化以降で都市圏"http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_metropolitan_areas_in_Japan_by_population"に入っていない鹿島が7回と最多優勝を果たしている。また2番手にはマリノスと並んで浜松都市圏の磐田(3回)が入っており、必ずしも都市圏人口通りに優勝している訳ではない。Jリーグではまだ経済力=戦力ではないと言えるだろう。
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