ドラフト2011

 サッカーで時間を稼いでいるうちにNFLドラフトが始まった。労使交渉のためにFAなどを含めた既存選手の動きが凍結されており、その意味でかなり特殊なドラフトになったと考えられる。通常なら必要な選手をFAやトレード、ドラフトそれぞれの手段を組み合わせて調達するのがこの時期に見られる現象なのだが、現時点ではドラフト以外に選択肢がない。となると、必要な選手はドラフトで確保しておいた方が安全、ということになる。
 この点は全体一意指名権を持っていたCarolinaにとっては不幸だったと言えるだろう。このチームが必要とするポジションの中にQBがあったのは間違いない。だが、正直言って今年のQBは前にも述べた"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/51556383.html"通り、レベルは高くない。私がこのチームのフロントだったら、ドラフトではなくFAなどでQBを探そうと考えただろう。残念ながら、例年なら使えるその手段は今年に限って使えなかった。
 結果、Carolinaはハイズマン賞受賞者のCam Newton"http://www.nfl.com/draft/2011/profiles/cam-newton?id=2495455"を全体1位指名した。実にハイリスクな選択をしたものだと思う。以前も述べた通り、彼はBCSでプレイした経験が実質1年しかない。プライベートでのトラブルも多発させており、ロッカールームで頭痛の種になる可能性も高い。フィールド上での動きについても、NFLへのアジャストが難しいのではと懸念する指摘がある"http://nbcsports.msnbc.com/id/42733891/ns/sports-nfl/"。
 時間をかければある程度のアジャストはできるだろうが、ドラフト全体1位にそんなことを期待しているチームやファンなどどこにもいない。全体1位のQBは即戦力か、さもなくばbustだ。NewtonについてはAlex SmithやVince Youngといった名前と比較される。彼らのパス成績は時間を追って上昇しており、その意味ではNFLへのアジャストはできていたんだが、彼らが期待通りの選手だったと思うファンはほとんどいないだろう。Newtonもよくて彼らと同じ道、最悪Russellになる可能性もある。
 とはいえ、それでもNewtonを選ばざるを得なかったCarolinaの気持ちも、実は分からないでもない。Newton以外のQBは正直全体1位で選ぶだけの根拠がない。他のポジションを選んで今年はClausenの成長に賭ける手もあるが、Clausenの将来性にはあまり期待できそうにない"http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/51495677.html"。FAが使えればベテランを採っておいてドラ1はトレードダウンする手もあったんだが、それも無理。リスクが高いのは覚悟の上で、成功する僅かな可能性に賭けてNewtonを選ぶしかなかったのかもしれない。
 こうなれば後はNewtonがきちんとしたwork ethicを持ち、なおかつプロに慣れる柔軟性を持ち合わせていることに期待するしかないだろう。さらにFAやトレードが使えるようになった段階で、何が何でも先発できるベテランを採ってくること。少しでもNewtonがNFLに慣れる時間的余裕を与えてあとは運を天に任せるしかない。もう一つの手としてJets方式でオフェンスに頼らなくても勝てるだけのディフェンスを構築する方法があるが、これはコーチと選手が揃わないと難しい。いずれにせよ茨の道だが。
 
 Newton含めドラフト1、2巡では6人のQBが指名された。早速彼ら及び3順指名のMalletについてカレッジでの試合数及びパス成功率を見てみよう。Newtonについては短大のBlinn Collegeでの成績も含めたもの。試合数は10試投以上を取り上げる。左から選手名、指名チーム、試合数、パス成功率だ。
 
Newton Car 26 62.9
Locker Ten 39 53.9
Gabbert Jax 26 60.9
Ponder Min 34 61.8
Dalton Cin 49 61.7
Kaepernick SF 49 58.2
Mallet NE 32 57.8
 
 前にもやったように、過去の2巡までの指名QBを使って試合数とパス成功率をそれぞれ偏差値化し、それの平均を算出してみる。すると上位3人はいずれも偏差値が50割れ(Newton48.6、Locker44.7、Gabbert46.1)となる。4番手のPonderは51.7と真ん中より上になるが、彼はそもそも1巡上位指名に値しないと言われていた選手であり、全体12番目の指名には疑問が残るところだ。合格点と言えるのは2巡のDalton(60.0)とKaepernick(55.7)くらい。Malletは3巡なので計算に入れなかったが、たとえ算出しても50未満にとどまる。
 昨年のドラフトはClausenですら52.7あったことを踏まえるなら、今年のQBたちのレベルの低さが分かるだろう。Clausenの実績があの程度だったとなれば、今年のドラフトで初年度からある程度やれそうなのはDaltonしかいないことになる。Malletは数年控えでやれそうなので他のQBたちよりは慣れる時間が与えられると思うが、それでもパス成功率で58%を下回っているのはいい数字とは言えない。
 ただ、最近の数年間だけに絞ると大学での先発試合数及びパス成功率でQBの将来性を計る手法は必ずしも上手くいっていないとの指摘はある。そこでFootball Outsidersが紹介していたのがLewin Career Forecast v2.0"http://www.footballoutsiders.com/stat-analysis/2011/introducing-lewin-career-forecast-v20"。相関性が下がっているのなら、もっと相関性の高いデータを作ればいいって訳だ。
 そこで使われているデータは実に7種類。先発試合数、修正パス成功率、BMI、ラン―パス比率、最終年のランヤード、4年目と3年目のパスレーティング差(アーリーエントリー選手除く)、そしてBCS以外のカンファレンス所属による修正だ。この7種類のデータを組み合わせて計算した場合のプロでの成績との相関性は、従来の指標よりも高まるという。
 もっともこれは正直あまり魅力的な計算方法には見えない。回帰分析を使えばこういった計算はいくらでもできそうだが、それにしても7種類のデータは多すぎるだろう。おそらくいくつかのデータは取り除いてもそれほど相関性に影響しないに違いない。相関性をほんの少し上げるためにデータ数をやたらと増やすより、1つか2つのデータを追加(もしくは入れ替え)てそれなりの相関性が確保できればそれで充分だと思う。
 実際、上のページで紹介されているQBたちの新たな指標を見ても、共通した「重要データ」として紹介されているのは結局のところ先発試合数とパス成功率。何人かのQBについては4年目と3年目のレーティング差も重要データとされているが、重要度としては最初の2つほどではないことが分かる。
 評価順位も、私が上で計算してみせた偏差値とあまり変わらない。最も高いのはDalton(1616DYAR)、次がKaepernick(1044DYAR)と並ぶのは同じ。Ponder(413DYAR)の評価がGabbert(656DYAR)、Locker(569DYAR)、Mallet(471DYAR)より下にくるのが目立つくらいか。Newtonはかなり低い(175DYAR)がこれは短大時代の成績を完全に除いているからで、私の計算方式でも短大時代を除けば今年の上位指名QBの中では下から2番目まで落ちる。何にせよ、Daltonを除けばトップクラスと言える数字ではない。
 もしAndrew Luckがエントリーしていれば。この方式だと1604DYARが期待できた計算になり。これは実質たった2年しか大学でプレイしていない選手としては破格の数値だろう。もう1年、これまで並みの成績を残したら、過去のQBの中でもRiversに次ぐ2番目に高い数値が出てくるのだそうだ。QBが欲しいチームは今年は敢えてどん底を狙い、来年Luckを取りに行く方が正しい選択なのかも。
 
 ちなみにNew Englandが指名したMalletは旧方式でも新方式でも冴えない数字だ。パス成功率に不満があるうえ、Football Outsidersの指摘によればサックがかなり多いらしい。そこには過去に大学最終年でサックが多かった選手たちの名前が8人挙がっているが、成功したと言えるのはPalmerくらい。魔術的なサック回避能力を持つBradyの後継者になるためには、よほど鍛えなおす必要がある。
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