横の比較が終わったところで、次は時系列で見てみよう。Jリーグは発足当初がバブルで、その後にバブル崩壊に見舞われたことは前回も記した。観客動員はまさにバブル&崩壊を示すわかりやすい指標であり、その推移を見るだけで当時の状況が良く分かる。
発足の1993年にいきなり平均1万8000人弱、延べ323万人を動員したJリーグのピークは翌94年の平均1万9598人である。延べ動員は95年も増加が続いたが、これは試合数が100試合も増えたせいであり、平均では既に下落が始まっていた。バブル崩壊はかなり急激で、97年には平均1万131人とピークからほぼ半減し、延べにいたっては275万人とピーク(95年の615万人)の半分以下まで落ち込んでいる。97年は山一證券破綻など日本経済自体がどん底の時であり、リーグも相当経営が苦しかっただろう。
持ちこたえられなくなったフリューゲルスがマリノスに救済合併されたのは1998年だったが、この年の動員は前年から少し上向いている。フランスW杯出場などが一定のカンフル剤効果をもたらしたのかもしれない。だがその後もしばらくは平均1万1000人台で横ばいと厳しい状況は続いた。ただJ2も含めたチーム数拡大政策により、延べ観客数は明確に増加傾向を示した。もちろんJ2の平均動員はJよりずっと少ないのだが、チームを増やすことで需要を掘り起こす効果があったのは確かだろう。
底ばいだったJ1の平均動員が明確に上向いたのはW杯が近づいた2001年。久しぶりに1万6000人台まで回復した。その後もじわじわと上昇し、最近は1万9000人前後で推移している。平均動員ではバブルピークの94年をまだ超えてはいないものの、チーム数が大幅に増えているためその裾野はむしろ当時よりも拡大したと見ていいだろう。
チーム別に見ると圧倒的な動員力を持つのはやはり浦和。最近はピークより落ちてはいるものの、それでも平均4万人弱と凄まじい数だ。上に紹介したプロ野球の公式ではない実際の入場者数をチームごとに見た数字"
http://ameblo.jp/maruko1192/entry-10121425125.html"と比較してみれば分かるのだが、この4万人という数字はプロ野球最多動員を誇る阪神(3万3000人)よりも多い。もちろん阪神は試合数が圧倒的に多いので延べ動員では阪神の方が凄い数字になる。
浦和以外では、最近はピークより随分と減ったもののそれでも3万人の新潟、コンスタントに2万5000人台を記録するFC東京、バブル崩壊時のどん底1万人割れから持ち直して2万人台前半を維持している横浜Fマリノスあたりが動員力の「強豪」だろう。新潟以外でも仙台や鹿島、清水、大分(経営悪化で流石に最近は減っているが)など地方都市で頑張っている事例が多いのも特徴。逆に首都圏や関西圏などの大都市部でも、千葉の2チームや大阪の2チームのように動員力が今一つのところもある。
バブル経験チームの中には、明確にバブルを越えられたチームと、逆にバブル以降低迷が続くチームがある。当初Jリーグを代表するチームになると期待された日産&読売クラブはまさに両方の典型例。日産を母体とする横浜Fマリノスは94年に1万9801人を記録した後に一度落ち込み、97年には9211人まで動員を減らしたものの、すぐに持ち直して99年には早くもバブルピークを超える2万人を記録。一方のヴェルディ(元読売クラブ)は93年の2万5235人がピークで後は基本右肩下がり。2001年に2万人近くまで持ち直したものの、その後はJ2落ちもあって4ケタが当たり前のチームとなっている。
他に今なおバブルピーク超えを成し遂げていないのは千葉(いい時でピークの3分の2)、柏(同4分の3)、湘南(同6割強)、ガンバ大阪(同4分の3)など。清水、名古屋、広島あたりもあと少しまで迫ったことはあるが超えてはいない。このへんがピーク超えを成し遂げれば、Jリーグバブルとその崩壊も完全に「歴史」となるのだろう。
なお、上に紹介したプロ野球の実質入場者数と、Jリーグで同じ地域にあるチームの動員数を比較して見るのも面白い。阪神や読売といった大都市部の野球チームは同じエリアのサッカーチームよりやはり動員力があるし、ソフトバンクと日本ハムという地方都市の中でも巨大なマーケットにいるチームはやはりサッカーより客が多い。一方、仙台や広島といった少し規模の小さな都市になるとサッカーチームの方が上だ。イメージ的には関西は野球寄り、関東はサッカー寄りで、地方は規模の小さな都市ほどサッカー寄りって感じか。
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