成績と観客・2

 今回はJリーグの成績と観客数に関して、チーム別に分析してみた結果を紹介しよう。前回の「年度別」は中程度の相関性にとどまったが、チーム別で見るともっと相関性が高くなるのではないかと思われる。普通に考えて同一チームの年度ごとの動員力の違いよりも、チーム間の動員力の方が大きいだろう。
 しかし、年度別の時に使った勝利数or勝ち点と1試合平均の観客動員数とを比較する手は効かない。なぜならJ2があるから。J1とJ2の勝ち点を一緒くたにしたのでは意味がない。では、順位を使ったらどうだろうか(J2はJ1の下と見なす)。勝ち点よりはマシだが、これも単純に使うわけにはいかない。例えば浦和レッズは1993年も2010年も10位になっているのだが、前者は10チーム中10位だったのに対し、後者ではチーム数は37になっている。
 そこで、比較するのは「順位/チーム数」と「1試合平均観客数」とする。これなら浦和は1993年が1、2010年が0.27となり、全体の中でどのくらいの成績を挙げていたかについて比較することが可能になる。なおこの指標を使った場合、成績が向上して観客数が増えるという関係が成り立つのは「負の相関性」になった場合。「正の相関」の場合は「成績が上がると観客が減る」関係になる。
 もう一つ、注意すべきなのは歴史の短すぎるチーム。母数が少なすぎると相関性を算出しても信頼には欠ける。ましてギラヴァンツ北九州のようにそもそも1シーズン分しか成績のないチームでは相関性など出しようもない。どこかで足切りが必要になる。そこで、6シーズンで存在を終えた横浜フリューゲルスを一つのメルクマールにする。6シーズンあればそこそこの母数になるうえ、何より6シーズン以上の経験があるチーム数が31と、前回調べた延べシーズン数(30)とほぼ同じなのが都合がいい。ちょうど比較し易い数字になるのだ。
 
 以上の前提に基づいて調べてみたところ、全体として「年度別よりチーム別の方が相関性が高い」という予想は正しかった。31チーム中、相関性が高いチーム(~-0.7)が14、中程度の相関性(-0.7~-0.4)は7チーム、弱い相関性(-0.4~-0.2)が2チームで、その他が8チームだ。年度別だと13シーズンが「中程度の相関性」だったのに比べ、チーム別では高い相関性が最多になる。
 ただ、個別のチームごとに見るとまた面白い風景が見えてくる。最大の特徴は、古いチームほど相関性が低いことだ。強い相関性がある14チームのうち、1999年のJ1、J2成立以降にJリーグに参加したチームは10チームに達する。一方、弱い相関性以下の10チームを見ると、1999年以降に参加したのはたった1チーム(水戸)しかない。そしてリーグ設立当初にいた「オリジナル10」のうち、実に7チームが「弱い相関性」以下に分類されているのだ。
 なぜ古いチームになるほど成績と観客数の相関性が弱まるのだろうか。一つ論拠として考えられるのが、Jリーグバブルとその崩壊だ。古いチームはバブルとバブル崩壊によって極端に観客数が増減した経験を持っている。その時期の観客数は、チームの成績とは無関係に決まっていた。そのため、相関性が低く出ている可能性がある。
 代表例がフリューゲルス。オリジナル10の1チームとしてバブルを経験し、バブル崩壊による観客急減も味わったこのチームの順位と観客数の相関性は0.439。マイナスではなくプラスである。つまり、「成績が下がるほど客が増える」傾向が窺われるのだ。なぜこうなったのかというと、バブル期の1993~95年に6、7、13位と冴えない成績に終わり、バブルが弾けた1996~97年に3、6位と比較的健闘していたためである。フリューゲルスの観客は成績とは無関係なところで増減したと見ていいだろう。
 実際、期間を1999年以降に絞って相関性を再計算すると、急激に相関性が高まるチームがいくつかある。例えば名古屋は1993~2010年の相関性が0.191なのに対し、1999年以降だと-0.778になる。ガンバ大阪も-0.047が-0.788に高まる。バブルとその崩壊期を除けば、成績と観客数の間に高い相関性が成立するチームは間違いなく存在するのだ。
 だが、それだけでは説明がつかない事例もある。例えば磐田は1994~2010年が0.084、1999年以降が-0.149と、どちらをとっても相関性がほとんどない。鹿島は-0.127が-0.343へと相関性が少し上がるだけだし、横浜Fマリノスは-0.214が-0.051となってむしろ下がってしまう。千葉に至っては0.218が0.247となり、バブル&崩壊を含めても含めなくても弱い逆相関が成立している。バブルの成立と崩壊だけで相関性の弱さを説明するのは無理なチームがいくつもある。
 そこでもう一つ、相関性を下げる要因として考えられるのが、前回も紹介したJ1の特性だ。J1はJ2に比べて成績と観客動員数の相関性が相対的に低い。そして上に紹介したチームの中には、ずっとJ1にとどまってJ2落ちを経験していない、あるいは最近になって初めて経験したチームが目立つ。成績と観客の相関性が低くなりがちなJ1を長く経験しているチームもまた、相関性が弱くなるのかもしれない。
 実際には上のどちらの条件にも当てはまらないのに相関性が低いチーム(例えば水戸の-0.223)もある。こういうチームになると、どうやって観客を増やせばいいのかフロントもさぞや悩んでいることだろう。だが、大半のチームにおいて成績が上がれば観客が増える傾向が見られるのは確か。当たり前のことだが、チームを強くすることがクラブ運営の王道であるのは間違いなさそうである。
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