NFL Divisional

 Philadelphiaファンが先週、試合開始前「いよいよPhiladelphiaの出番だぜ」→試合終了後「そして出番終了だぜ」とネット上で嘆いていたんだが、まさか同じ思いを味わうことになるとは。シーズン途中から結構期待感を抱かせてきた2010シーズンもあっさりと終わってしまった。とほほ。

 まあせっかくなので負けた理由について考えてみよう。もっとも簡単な説明は「運が悪かった」。以前にも紹介したがこちら"http://www.advancednflstats.com/2007/08/luck-and-nfl-outcomes-3.html"の記事によればNFLの試合のうち52.5%は偶然によって試合が決まり、残りは実力通りの結果になる。偶然の場合も半分の確率で強い方が勝つことになるので、アップセットの確率は大体4分の1だ。そして今週4試合のうち残る3試合は強い方が勝った(ホームのPittsburgh、Chicagoはもとより、Green BayはDVOAでもSRSでもGWPでもAtlantaより強いと評価されている)。つまり確率通り。ついでに先週の試合でもSeattle以外はDVOAでもSRSでもGWPでも強いと言われていた方が勝っている。
 とはいえ「たまたま4分の1の確率に当りました」だけでは面白くないのでもう少し中身も見てみよう。後知恵で敗因を分析すると、純粋にBradyのパス効率が悪すぎたのが要因と言える。NY/Aで見るとBradyは5.18、Sanchezは7.76だ。Sanchezの出来も良かったがBradyがひどかったのが分かる。特に5サック40ヤードのロスはレギュラーシーズンを含めて最悪の成績。逆にいえばJetsのDLが勝因だとも考えられる。一方、ランはJetsが29回120ヤードに対しNew Englandが28回113ヤード。あまり違いはない。
 全然進まないオフェンスはフィールドポジションにも悪影響を与えており、ドライブ開始地点はNew Englandが平均自陣28ヤードだったのに対しJetsは自陣45ヤード。Jets全12ドライブのうち敵陣からオフェンスを始めたのが5回もあり、オンサイド失敗を除いた4回中3回でTDを取っている。bend but not breakなNew Englandディフェンスだが、少し曲がれば失点してしまう局面ばかりではその長所を発揮できなかった。フィールドポジションについてSTに責任がないことは、パントやリターンの成績を見ればわかる。こうした特徴も含め、全体としてSuperbowlでGiantsに負けたときとよく似ている。
 つまりこの日はたまたまBradyが絶不調であり、彼がコケたらみなコケた、という結論になりそうだが、果たしてそうなのか。まずBradyのこの試合のQBレーティングは89.0。一方、レギュラーシーズンの全チームQBレーティングは84.0だ。悪いといってもリーグ平均よりいい成績である。ANY/Aではリーグ平均5.73に対してこの日のBradyが5.08とかなり下回っているが、シーズン通じてこの日のBradyよりひどかったチームも9つばかりある。リーグ全体で見ればこの日のBradyはそんなに酷くはない。
 また、シーズン16試合プラスプレイオフを含めた17試合のBradyの成績について平均値と標準偏差を出し、この日の試合がどの範囲に入るかを調べてみると、レーティングは平均値±標準偏差(111.7±25.7)の範囲に収まってしまうし、ANY/A(8.43±3.25)でもその範囲からほんの少し下にはみ出している程度。平均値±標準偏差には全体の68.27%("http://www.cap.or.jp/~toukei/kandokoro/html/14/14_2migi.htm"参照)が含まれる。つまりこの程度の成績ならランダムネスの範囲内と見ることだってできるのだ。
 実際にはレギュラーシーズンでBradyのANY/Aが平均値-標準偏差を下回った試合は3試合あった。しかしそのうち2回(Baltimore、@ San Diego)は結果的に勝っており、負けたのは第2週のJets戦のみ。この日の試合を含めても勝率は5割に達する計算だ。Bradyの「不調」はランダムに発生しうる範囲の出来事であった可能性があり、なおかつその程度の「不運」に見舞われても試合に勝つことは可能だった、という結論になる。もしかしたらゲーム中の判断が違っていれば、結果は逆に転がっていたかもしれない。

 そう思わされたのが前半最後のパントフェイク失敗だ。footballcommentaryのGo For It Tabels"http://www.footballcommentary.com/tables/goforit1st40theykick.txt"によれば、前半終了間際、4点のビハインドでGo for itするには成功確率が51%なければいけない計算。だが、あの局面ではFDまで残り4ヤードあった。確かに単純なGo for itではなくフェイクパントを狙っていたのだからそれだけ高い成功確率は期待できたかもしれないものの、それでも半分以上の確率で4ヤードを取れるかどうかとなると微妙だ。
 一方、WPを使って計算"http://wp.advancednflstats.com/winprobcalc1.php"すると、パントフェイクして5割の確率で4ヤードゲインできるとした場合にWPは0.32から0.34まで上昇するのに対し、普通にパントを蹴ると(この試合のMeskoの成績である平均ネットパント41ヤードになった場合)0.32から0.33になる。43%以上の成功確率ならパントフェイクの方がいい計算だ。もっとも4ヤードという距離を考えるとやはり微妙なのは確かだし、何よりパントに比べて失敗した時のリスクが大きいのは間違いない。
 もしBelichickが、Bradyの調子が本気でおかしく実質的に自分たちがunderdogになっていると判断し、そのうえでこのギャンブルに踏み切ったのなら、素直に凄いと思う。underdogが勝つためにはリスキーなゲームプランを採用して確率の紛れを増やすべきだとこちら"http://www.advancednflstats.com/2009/05/are-nfl-coaches-too-timid.html"も指摘している。フェイクパントでも何でもやって紛れを増やすことでアップセットを狙うのが、勝つ確率を高める作戦として適当だろう。でも、おそらくBelichickはそう判断していなかった。
 それを裏づけるのがBradyのパスの内容。Play-by-playでBradyのパスをshortとdeepに分けると、前半はshort14に対しdeepが2。いつものようにショートパス中心のオフェンスだ。もしこれではダメだとBelichickが考えていたなら、後半はもっとリスキーな作戦に切り替えていたはず。つまりディープパスがもっと増えていておかしくない。だが実際の後半のパスはshort25に対しdeepはたったの3。むしろshortの比率の方が高まっている。これはunderdogの戦い方ではない。実力で勝っているfavoriteが採用するようなやり方だ。でも、そうだとしたら前半終了間際のパントフェイクがいよいよ意味不明になる。
 パントフェイク1つのみが敗因だとは言わないが、あそこでもっと保守的な作戦を採用していれば7点を失わずに済み、ゲームの展開が大きく変わっていた可能性がある。逆に11点差がついた後半にもっとリスキーな作戦を採用していれば、何か紛れが起こって状況が変化したかもしれない。スタッツやPlay-by-playを見る限り、Belichickは慎重になるべき時にリスクを取りに行き、アグレッシブになるべき時に保守的になったように思えてならない。私はBelichickのドラフト戦略について文句をつけたことはあったが試合中の判断に異論を呈したことはほとんどなかった。でも今回はどうだろう。あのパントフェイクは、さすがに擁護できない判断ミスだったのではなかろうか。

 というわけで今シーズンもPro Bowlを除いて残り3試合になった。最初に書いた確率からすれば、今後アップセットが起こる期待値は0.75試合しかない。残り3試合がすべて実力通りに決まる可能性も結構ある。その場合、DVOAとGWPによればPittsburghが、SRSによればGreen Bayが優勝することになるが、実力的には両チームともかなり接近しているので面白いSuper Bowlになるだろう。もし1試合ほどアップセットがあるのなら、個人的にはJetsとGreen Bayというシード6位同士のSuper BowlになってGreen BayがJetsをぼこぼこにする展開を希望。
 にしてもこの時点でSuper Bowl経験QBがRoethlisbergerしか残っていないとは。BradyのみならずPeyton、Brees、Hasselbeckといった連中はConference Championship前に軒並み消えていった。改めて00年代も終わったんだなと思わされるプレイオフだ。
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コメント

No title

SLEEP
背後からのサックでファンブルするシーンで解説者が「いつものBradyらしくないですね」というのを聞いて、いつものBradyの凄さ、怪物ぶりを今更ながら再認識しました。反対にSanchezのできは普段より良かったですね。

スーパーの組み合わせはPITとCHIですかねえ。CHIの元HC三人衆が若さと勢いのGBをどう対処するか注目してます。MartzがあそこまでOLを再構築できるとは思ってもいませんでしたねえ。

No title

desaixjp
Sanchezは今のところ自身の成績に比べて幸運に恵まれている(もしくはチームメイトに恵まれている)ように思います。ただ、次は強力ディフェンスのPittsが相手。オフェンスさえ抑えればどうにかなるIndyやNEとは違い、Sanchez自身の力が問われます。シーズン中勝っているとはいえ、過去2試合のようにはいかないかもしれません。
NFCについては正直Green Bayの方が強いと思っています。ドラフトでの指名順位急落、長い下積みと苦労を重ねてきたRodgersにそろそろ光の当たるときが来たのではないかと。もちろんChicagoも油断のできる相手ではありませんし、HCとしてはともかくOCとしては有能なMartzが久しぶりにその実力を発揮する可能性もあると思いますが。
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